六将軍の会合
「……それで、軍議を放棄しただけでなく、むざむざ地のエレメントの継承者まで覚醒させたというわけか……テオドア=ヴィンツェンツィオ少佐?」
とある城の一室。円状に配置された七脚の椅子。紫の椅子に腰かけた男……ハウトが、黄色の椅子に座るテオドアにそう問いかけた。
目元は相変わらず、仮面とフードの影ではっきりとは見えないが、もはや殺意に近しい怒りを孕んだ視線を放っており、さすがのテオドアも閉口した。
「ですが、これではっきりしましたわ。エレメントは所有者を求めている……さすがに、かの大精霊の目は欺けない、といったところでしょうか?」
「……エレメント……邪魔……」
桃色の椅子に座る黒髪の女性がそう言うと、緑色の椅子の上に蹲る青年が、その膝に収まった小さな獣をそっと撫で、ぼそぼそと呪詛のごとき呟きを繰り返した。
「まあ、最重要人物の詳しい情報を得られた。軍議を忘れていたのは感心できないが、そこまで重い罰を与える必要性も無いだろう」
「ジル教官! ……じゃなかった。ありがとうございます、リヨンバルド大将」
白い椅子に腰かける、鎧を纏った男性がそう弁護すると、テオドアは目を輝かせた。その様子に、青い椅子に座るセーブルが溜息を吐いた。
「こいつの処分はせいぜい書庫の掃除当番とかでいいだろ? さっさと会議を終わらせようぜ? オレ、残業はしねえ主義なんで」
「……随分な言い草ですわね? あなた、自分が本来罪人であることをお忘れになって?」
心底疲れたという表情を隠そうともしないセーブルの言葉に、女性がその細眉をひそめた。
「あなたは本来、盗賊として牢に入れられているはずですのよ? リヨンバルド大将の計らいでこうして軍にいられること、忘れたとは言わせませんわよ」
「へーへーわかってますよ、エクセ中将。だからちゃんと給料分の任務は果たしてるじゃねえか」
「よさないか、二人とも」
あわや口論に発展しかけていた二人を、鎧の男が制した。
「……三千年前のように、エレメントの継承者共に邪魔をされるわけにはいかない……七つのエレメントを揃えさせるわけには、いかない」
「全ては、我らがドゥルケンハイトのため。此度の戦だけは、絶対に負けるわけにはいかない。我ら七師長が中心となり、必ずや戦争を終わらせよう。この国を、世界を守る為に!」
ハウトの言葉に続け、鎧の男が立ち上がり、そう高らかに声を上げた。テオドアはやる気満々と言ったように両手の拳をぶつけ合い、残る者達も、微動だにしないハウト以外はその言葉に頷いた。
「……じゃあさ、今度は僕が言っていい?」
その時、今まで一切口を開かなかった、赤い椅子に座る少年が、そう問いかけた。
「あいつらの行く場所、大体予想つくからさ。僕なら、あいつらをまとめて倒せるよ?」
「エルド大尉……任せていいのか?」
鎧の男の問いかけに、少年はニヤリと口元を歪めた。
「あんまり僕を見くびらないでよ。……安心して。全部燃やしてあげるから」
そう告げる少年の額で、サークレットにはめ込まれた深紅の宝玉が煌めいた。




