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夢の後には   作者: 詩歌いの羊
第2章 マニングハム家の力
12/21

第二章 13話 フェンデル大佐 (2/4 改)

又登場人物が増えます。

第二章 13話 フェンデル大佐 


 翌朝も嫌になるほどきれいな青空が広がっていた。昨日の襲撃の時に有った厚い雲の痕跡などどこにも無く、その青空を見て私は気持ちを切り替えないといけないと思った。

 そんな事を思いながら部屋で着替えをしていると、ノックの音と共にいつも通りアルベルトが来て、何時もと変わらぬ笑顔を浮かべて部屋に入ってきた。


「マリー様、お食事の用意が出来ました。」

「ありがとう、アルベルト。直ぐに行くわ。」

 アルベルトは少し心配そうな顔をして私を見ていたが、私は心配いらないとアルベルトに笑って見せた。


 アルベルトに付いて食堂に着くといつものメンバーが既に席に付いて食事を始めていた。

「おはよう皆」

「おはようマリー」

 皆の顔を見回すと、少し疲れた顔は見えるが以外に皆元気そうだった。食卓の上には色鮮やかな果物とフレンチトーストが目に入った。少し甘い物が食べたかったので、嬉しいメニューだった。


「今日はフレンチトーストなのね。嬉しいわ。」

「美味しいよ。」

「ところで、フェンデル大佐は何時頃こっちに着くの?」

「11時頃にはこちらに着くと連絡が入っております。」

 と、私にフレンチトーストを用意してくれて入るアルベルトが教えてくれた。


「じゃあ、11時前になったら外交室で待ってればいいのね。」

「はい」

 私達はいつもより口数少なく朝食を終え、11時に外交室の方に集まるまでの時間を思い思いに過ごし、ゆっくりする事にした。


 そうして11時前になって外交室に行き、ちょっと豪華な椅子に座ってフェンデル大佐の到着を待ちながら他の皆とくつろいでいると、背の高い細身でシャープな体つきなんだが、他を圧倒するような存在感の有る人物が5名のきびきびとした人達を連れて外交室に入ってきた。

「今、先頭で入ってきたのがフェンデル大佐です。」


 そうアリエルが小声で教えてくれた。 とてもシャープな印象で浅黒い肌を持った人だった。

なんて、きれいな緑の目なんだろう。それが私の第一印象だ。

「マリー様、始めまして。この度オーディン様よりこちらの学園とマリー様の警護の一端を請け負う事に為りました、ロドリゲス・フェンデルと申します。」


 そう言って優雅なしぐさで膝を付き最大の礼を私に示した。他の5人も同じ様に膝まづいていた。

「始めまして。私がマリーよ。この学園の護衛をお願いします。そちらの5人は?」

「こちらに控えております5人は私の隊で中隊長を務めている者達です。右からバート中佐、コンラート中佐、ヴァルカン中佐、ゲート中佐、エドワード中佐、こう中佐です。 明日にはもう二人の中隊長が部隊を率いてこちらにやってきますので、その者達は明日にご紹介させて頂きます。」

「そう、突然の事で大変だと思うけど、学園の警備をよろしくね皆。」

 6人はもう一度深く頭を下げた。私はフェンデル大佐と後ろの5人に立ちあがってくれるよう促して、こちら側の人達を紹介して行った。


「紹介が必要ね、まず私の左手に居るのが近衛の隊長をしてくれて居るマックス少佐、私のブレインで友人のリン、ユーリィ、慎よ。そして右手に居るのが秘書のシモン、アリエル、執事のアルベルトです。」

 私の紹介にお互いに目を合わせうなずきながら確認をし合った。


「シモン様、お久しぶりでございます。」

「やあ、フェンデル大佐、あなたが来てくださってとても心強いですよ。」

 シモンとフェンデル大佐はお互いにうなずき合って何かを確認して入る様な雰囲気だった。


「あら、知り合いだったのシモン?」

「ええ、私がまだダグラス様の秘書をしていた時に一緒にお仕事をさせて頂きました。」

「そうだったの。」

 私は興味深くフェンデル大佐を見た。


「こちらにおられるアルベルト様とも何度かお仕事をさせて頂きました、マリー様。」

「面白いわねぇ、その辺のお話はゆっくりと伺いたいけど、昨日の続きの話もしなくちゃいけないでしょう。皆で上の会議室に行きましょう。」

 私はシモンとアルベルトと一緒にした仕事について大変な興味を持ったけど、それは後で聞く事で有って、今は昨日の説明と今後の事を話さなくては行け無い事を思い出し、頭の中から興味本位の話は後だと一旦追いだした。


「そうですね。お茶の用意をして来ます。」

「ありがとう、アルベルト。」


 フェンデル大佐は振り返り5人に次の指示を出していた。


「では、お前たちは本隊が着く準備をしておいてくれ。」

 中隊長の5人は、礼をしてその場を静かに立ち去った。

そして私達も席を立ち、静かに大会議室の方に場所を移した。


「そうですね。まずは昨日の一件をフェンデル大佐に説明しなければなりませんね。これは現場にいたユーリィ君が適しているでしょう。」

「では、僭越ながら僕が昨日の経緯を簡単に説明します。」

 そう言ってユーリィは説明し始めた。まず、第一の襲撃の事、その時に仕掛けられたであろうカギの事、ハイエルン博士の裏切り、そしてカギによって明けられるマーラの世界を繋ぐ扉、

マーラの意図が明確に読めない現状、それらを淡々と説明した。


「今回の扉でどれ位の魔物がこちらの世界に来たんだ?」

「遺体を数えましたら全部で326体でした。全部では無いと思います、逃げた者もいるでしょうから。しかし全て下級もしくは中級クラスで今回は上級の魔物は出てこれなかったようです。但し、ハイエルン博士の言葉を借りると、それは術者の魔力次第の様ですので、今後、術者次第で上級クラスの魔物が出てくるのは間違い無いと思います。」

「良く、近衛の12人と君達だけでその数の魔物を退治出来た物だ。」

 ユーリィの説明を聞いたフェンデル大佐は少し感心したように私達を見回した。

私達は少し照れていたが、ユーリィが話を続けた。


「あ、僕たちは苦戦してましたよ、シモン様が後から駆けつけて来てくださったおかげです。」

 その言葉を受けてフェンデル大佐はシモンの方に目を向けて問いかけた。


「成る程、シモン様は制空の呪文を使われたのですか?」

「ええ、そうです。」

「やはり、そうですか。ではそのカギが残されていると思われる地点の予想は出来ているのかな?」

「はい、ですが思っていたより広範囲にわたっていて、まあ今の時点では、やみくもに警備するよりはマシといった程度です。」

 ユーリィはお手上げのよなしぐさをして小さな溜息をついた。


「わかりました。現状の警備はある程度の予想地点に絞って警備を固めて行きます。」

 ユーリィのしぐさに微笑みを少し浮かべながらフェンデル大佐は意見を続けた。


「作戦本部はこのサマーハウスに置かれるとの事ですが、現状はオータムハウスの作戦室に私の中隊長達を待機させ、見回りや護衛、調査等の任務に当たらせましょう。近衛の兵をこちらに詰める方が実践的でもありますしね。」

「了解いたしました。」

 マックスは安心した表情を浮かべながら、きびきびとフェンデル大佐に答えた。


「今後の守備の形態ですが、近衛はそのままの状態で結構です。こちらの警備は4交代制で進めます。正確な人員配置などの詳細な事は後で書面で報告致します。それで結構ですね、シモン様。」

 その問いかけにシモンはうなづいて答え、フェンデル大佐のやりやすいようにして下さいとのお願いをしながらフェンデル大佐を信頼の目で見つめているのが私にはとても印象的だった。


「正確にはどの程度の人員を予定しているのですかフェンデル大佐?」

 只私は現実的な数字が聞きたくて、大げさに為らなければ良いなぁとの希望を込めて聞いてみた。


「今回は急な事も有り 私が動かせる最大数だけですが。今の所7中隊、1400名が来ます。しばらくの間はこのままで運営して、足りないようでしたら増援も構わないとオーディン様より許可も頂いております。」

「なんて、大規模なの」

 私は その派遣の規模の大きさに驚きを隠せなかった。がそんな私の顔を見てマックスが説明してくれた。


「これでも少ない方だと思われますよ、マリー様。」

「そんな人員を収容するだけの建物が有るの?」

「大丈夫でございます。この学園には常に一個連隊程度が常駐できる設備が有りますので。」

「そうだったの、知らなかったわ。」

 この学園には大きな建物が無数にあるのは知っていたので、そのうちの一つなのだろうと納得した。


「それから、マリー様は9月から大学でしたね。」

「ええ、そうよフェンデル大佐。」

「そちらの警備の手配はどうなっておりますか?」

 フェンデル大佐はマックスに警備体制について詳しく説明を求めてマックスがそれに答えていた。


「実は大学は高校と違い倍以上の広さが有るので、警備に関しましてはフェンデル大佐のお力を貸しして頂かない事には成り立たないと思います。」

 マックスは説明の最後にフェンデル大佐に警備のお手伝いを頼まなくては行け無い事を少し苦々しくも思いながら、それでも人数が足り無い事実を認識し要請をだした。


「了解した。では、バートの隊にその警備の責任を任せましょう。マックス少佐、君はバート中佐と大学の警備とマリー様の護衛については詰めてくれ。」

「了解いたしました。」

 フェンデル大佐はテキパキと物事を決めて行き、シモンも全てを任せているので、物事がスムーズに決まって行った。


「シモン、今回の騒動の元と為っているマーラの世界とを繋ぐカギはこの学園だけに仕掛けられたものなの?他の普通の都市に仕掛けられてはいないの?」

「その点は、オーディン様とも協議致しましたが、ハイエルン博士が実験だと言っていたので、その危険性はまだ少ないと見積もっておりますが、各地にいる者達が警備を強化して対応できる状態に兵力を増強し配置を現在進めております。」

 シモンは確認を取るようにフェンデル大佐を見た。


「そう、じゃあ今回のここへの派兵もその一環だと思えば良いのね。」

「その通りでございます。」

「今までは無理やり次元の壁の薄い所を狙って壁を破ってこちらの世界に来ていたマーラ達ですが、このドアとカギを持った、いいえ、多分作った事でこちらの防衛が今まで通りとは行かなく為りました。違う形を取らなくては行け無い事でしょう。」

 考え込むように言葉を紡いでいるようだった。


「それを作ったのがハイエルン博士だとシモンは思っているのね。」

「そう思うのが今は一番正しい予測だと思います。元々マーラとの次元が繋がりやすい場所は沢山有ったのです。それを私達は色々な方法で閉じては来ていたのですが。。。。。。」

 そう言ってシモンは厳しい顔をした。


「では、僕達が割り出した予測地点ですが。」

 ユーリィが気分を変えるように次の議題を持ち出した。

ユーリィが次々にカギが隠されていると予想される地点をスクリーンに写し、残る6部隊の警備の配置も次々と決まって行き、後は最終的な人数の確認と伝達経路の確保、指令系統の確立、まだまだ、決めない事が有るのだが、シモンとユーリィによって次々と立案されていった。


「と、決めなくては行け無い事は以上だと思いますが、皆さまはそれでよろしいでしょうか?」

 ユーリィは全員が納得したかを確認するように見回した。


「今の段階ではそれでよろしいと思います。」

「ありがとうございます、フェンデル大佐。」

 その言葉を聞いてユーリィはひと安心して小さく溜息をついた。


「一段落ついたようですし、お昼に致しませんか、皆様方」

 その様子を確認してアルベルトは皆に休憩を進めてきた。皆は会議に夢中で少し時間を忘れていたようで、その提案に乗っかった。


「ああ、もうこんな時間なのね。そうしましょう、皆。」

「そういたしましょう。」 と全員が賛成した。


 そうして私達はゆっくりと昼食を取った。昼食時は皆が聞きたかったフェンデル大佐の話をした。

「フェンデル大佐、失礼ですがお年を聞いてもよろしいですか?とても落ち着いていらっしゃいますし、数々の戦績を聞けばお年を召した方の様な気もしますが、そうは全く見えないので不思議に思っておりました。」

「30歳の若造ですよ、マリー様。」

「ええ~!!」

 私、慎、アリエルの三人は一斉に驚いた。


「あれ?ユーリィは驚いて無いのね。知っていたの?」

「ああ、知っていたよ。フェンデル大佐の最初の功績が10歳の時だってこともね。」

「そんな子供の時に。。。。。。」

「いや、あれは周りの先輩に助けられただけですよ。」

「何をおっしゃいます、あなたが起てた陣形が無ければ勝てなかったとあの戦闘時に居た全員が口を揃えていたのはあまりにも有名な話でしょうに。」

 シモンはその時の戦いの事を少し私達に話してくれた。


「お恥ずかしい限りです、シモン様。」

 フェンデル大佐はいかにも普通に対応してシモンに向かって少し頭を下げていた。


「そう言えば、シモンとフェンデル大佐は一緒にお仕事をしていたって言ってたわよね。」

「ええ、幾度かの大戦の折にシモン様には絶大なご支援をして頂き、被害を最小限にとどめる事が出来ました。」

「色々なエピソードが有りそうよねぇ。」

「シモン様は沢山の輝かしい戦歴の持ち主でいらっしゃるから。」

「フェンデル大佐には負けますよ。私は一介の秘書でしか有りませんしね。」

 そう言って、シモンとフェンデル大佐は微笑んでいた。


「そうそう、フェンデル大佐、大学の警備を手伝ってくれるバート中佐をご紹介してくださらない? 顔を合わしていた方が彼も仕事がしやすく為るだろうし。」

「もちろんでございます。明日に為れば隊の殆どの者がこちらに到着いたしますので、明日の夜に会える用に設定致しましょう。」

「ありがとう、フェンデル大佐。」

 こうして和やかな内に昼食も終わり、後は専門的な警備や戦術の話に為るので、私と慎は席を外して、二人で図書室で少し話をする事に為った。


すいません、無制限では無いですが登場人物がゴロゴロと増えて行きます。今後も増えます。もう、書いてる私も予想もしていなかった方向で登場人物が増えています。実際のプロットでは出てこなかったキャラが生まれています。私自信がその変化を楽しんでおりますので気長にお付き合いくださいませ。

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