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夢の後には   作者: 詩歌いの羊
第2章 マニングハム家の力
10/21

第二章 11話 再び襲撃 (1/7/17 改)

再びマリー達が襲われます。今回は具体的な敵の名前も出て来ます。

第二章 11話 再び襲撃


 今日は計画したピクニックの日だった。窓の外はとても良い天気できれいな青空が見て取れ、今日も暑い一日が始まりそうな予感がした。


「良い天気に為ったねぇ、アルベルト。」

「おはようございます、マリー様。とてもいい天気でございますよ。ご朝食の用意が出来ております。」

「ありがとうアルベルト、直ぐに行くわ。」

 食堂に行くと皆がもう席に付いていた。


「おはよう皆」

「おはようございます。」

「わぁ、今日はパンケーキなのね、美味しそう。」

 ふっくらとキツネ色に焼けていて、とっても美味しそうだった。

メープルシロップで食べるか、砂糖とレモンを絞って食べるか迷っていた。


「フワフワで美味しいですよ、マリー。」

「ほんとだ フワフワだね。ところで川にはどうやって行くの?」

 結局砂糖とレモンでさぱっぱりと食べる事した。


「荷物は電気自動車で後から私とアルベルトで運びますよ。」

「ありがとう、アリエル。」

 取りあえず、昼ご飯などの重たい荷物は後からアリエルとアルベルトが運んでくれるので、

私達は必要最低限のタオルや道中に必要な水などだけを持って身軽に動く事になった。


「取りあえず、のんびり散歩しながら川へ行こうか。」

「うん、それが良いね。」

「川まで5km位だって言ってたよね。」

「そうですよ、だからちょうど良い運動に為ると思います。」

「じゃあ、この後30分後に玄関に集合だね。」

「了解」

 皆 楽しそうにうなずいた。


 私達が食事を終えた同じ頃、前回の襲撃で植えられた種が不気味に発芽していた。それは黒い邪悪な意思を持ち近ずく者全てを標的としているような、そんな邪悪な存在だった。

そしてそれを見ていた男はすうっと川べりの木の幹の中に溶け込み気配を殺した。


 私達は5キロの道のりをのんびりと楽しく散策しながら歩いていた為、結局思っていたより時間がかかったが、目的の川べりに到着した。

「着いた~。」

「思ってたより、時間がかかったかもねぇ。」

 私はふと、鋭い視線を感じたような気がして右手の森の中を探ってみたが、そこには何も見えなかった。


「どうしたの? マリー。」

「ううん、何でも無い。」

 マックスが私の動きを見て、ザックと斗真に森の安全確認をしてくるように指示を出しているのが目の端に見えた。アリエルも耳を澄ましているようで、静かに目を閉じて集中しているようだった。

私は気に掛かってはいたが、二人に任せる事にした。


「慎、ここは綺麗な所ね。」

「そうだな、ところでさっき何で森の方を気にしてたの?」

「何だか誰かの視線を感じてね、多分気のせいだと思うけど。」

 マリーは少し気になる様子で首をかしげていたが、慎もザックと斗真が動いたのには気が付いていたので、彼らが帰還するまでは用心をしておこうと思っていた。


「そうか。まあ、マックスがザックと斗真の二人を確認させに行ってるから大丈夫だよ。」

「うん。」

 そう、今はザックと斗真に任せるしか無いと思うので、気持ちを切り替える事とした。


「まずは、泳ぎましょうよ、マリー。」

「そうだねリン。皆も川に入って水遊びしましょう。」

 実の所リンも視線を感じていたので偵察に出ようかと思っていたのだが、マックスがザックと斗真を出したので、偵察は二人に任せて自分はマリーの護衛に専念しようと考えた。

 ユーリィは視線や気配こそ気が付かなかったが、周りの動きを見て考えて居るようだった。


 こうして、偵察に出た二人とバーベキューの準備をしてくれている、3人を残して私達は川に入って冷たい水を楽しんでいた。川の水はとてもきれいで、川魚が泳いでいるのが見られたし、流れも緩やかな所で泳ぐのには適していた。私はさっきの視線の事も気になってはいたが、警戒心を緩めて無邪気に川で皆と遊んでいた。

 そうして楽しく過ごしていると、アリエル達のバーベキューの支度も出来たようで、お昼にしましょうと呼ばれるままに私達は川から上がった。川で遊んでいた時から匂って来ていた美味しい匂いにすっかりつられて、パクパクと食事も進んで、美味しく楽しい食事をしていたが、ザックと斗真がまだ偵察から帰ってこないので、少し心配していた。


「このソースすっごく美味しい、アルベルト。これ貴方が作ったの?」

「いえ、このソースはアリエルが作ったんですよ。」

「へぇ、すごいねぇアリエル。これすっごく美味しい。」

「ありがとうございます。このソースは私の母の味なんです。」

「へぇ、そうなんだ。アリエルのお母さまの味か、美味しいねぇ。」

 こうして、団欒の内に食事が進んでいたが、その時着々と魔の手の計画が進んでいて、私達の食事後の気が緩むのを見逃さなかったように、川が轟音を立ててその牙を向けて来た。

 突然増えた川の水嵩が、白い波頭をたてて、まるで津波の様にこちらに押し寄せてきたのが視界に入った。


「こちらの高台の方へマリー様。」

 そう言って、緊迫した声でアルベルトが私を抱き上げて高台の方へジャンプした。バーベキューの機械などが水に飲みこまれ流されて行ったが、幸いにして水暈はまだこの高台には到達していなかった。マックスは私の正面にリンと共に立ち、他3人の近衛が周囲と背後に展開して。様子を探っていた。


「なんて水の量なの。。。。。。。」

「大丈夫です、マリー様。水自体が操られてる訳では有りません。まだ、私の制御が効きます。」

 そう言って アリエルは厳しい目つきで川を見つめていた。


「ほぅ、さすがアリエルの名前は伊達では無いって事か。」

「誰です!」

 そう言って、牽制した声を上げたアリエル。その声に応じて出てきたのは銀髪のほほのこけた、だけど目の輝きだけが異様に光っている、なんとも言えない不思議なそして少し恐ろし気な容貌をした中年の男だった。


「ハイエルン博士、なぜ貴方が。」

 アリエルはとても驚いていた。私は周りを見回すと全員が緊張した面持ちと驚きとで彩られた顔をしていた。

 私は後にハイエルン博士は大学でマーラの事を長年専門に研究されていた方だと、教えられた。


「なぜだって? もちろん私は試したかったのだよ。私の研究の成果をね。」

 そう言ったハイエルン博士の顔は満足げだった。


「やはり、シモン様がおっしゃっていた事が当たったようだな。。。。。。。。」

「どういう事?アルベルト。」

「シモン様は前回の襲撃後、私とマックスにはそれと無くハイエルン博士を注意するように既に言われていたです、マリー様。」

 アルベルトは厳しい視線をハイエルン博士から反らすこと無く、苦々しい口調で語った。


「ほぅ、さすがシモン君。彼の魔道力は凄まじいものを感じてはいたが、まさか私に注視するとは思わなかったよ。私は静かにしていたんでね。」

「ええ、シモン様は言っておられました。ハイエルン博士、あなたは静かに何の動きも見せていないが、研究にかこつけて、マーラに近づきすぎていると。そして研究の進行が提出されるレポートよりも深いものだとシモン様は思っていらっしゃった。」

「ほう、私はほぼ完璧に隠していたと思っていたがねぇ。さすが、さすが、シモン君は侮れないねぇ。ところで、この増えて来て居る水を制御しようと、君たちはあがいているようだが、次に打つ手はないのかい? 近衛の諸君は。ハハハ」

 

 そうして、ハイエルン博士は侮蔑した視線をマックスに投げかけたその瞬間、ザックと斗真が背後からハイエルン博士に襲い掛かった。それは、まるで一瞬の出来事だった。背後から襲いかかった二人を何か太いしめ縄の様な物が二人を弾き飛ばし、濁流の川の中へと投げ込んだ。一瞬の動作でそれは信じられない程素早く、その背後から生えている不気味な物は良く見ると大蛇に見える生き物だった。一見蛇の様にも見える顔を持ってはいたが赤く光る不気味な目が有り、長く黒いその蛇の様な舌の先は不気味な動きを見せ、その太い胴体には黒い炎が巻き付いている不思議な生き物がハイエルン博士の背後から生えていた。


「ザック、斗真!」

「大丈夫です、マリー様。ほら、二人はあそこに居ますよ。」

 そう言ってマックスが指さした先に、二人は浮かんでいて私は少し安心した。


「背後をつくなんて、かわいく無い坊や達だねぇ。」

 その不気味な黒い大蛇な様な生き物が素早い動きでマックスを攻撃してきた。二匹の動きは目で追うのが不可能だと思われる程で、マックスは防御だけで手一杯の様な動作だった。左右上下から噛みつこうとする不気味な真っ赤な口が見え、私は恐怖におののいていた。


「マリー、こっちへ。」

 とリンに腕を引っ張られて少し開けた大地に出た時、又この間の襲撃の時に現れたような不気味な黒マントに覆われていた人物がそこへ立っていた。そして、両手を広げて呪文を唱えると、そこかしらから不気味な化け物たちが地面から現れて来た。その数は何百に為るかと思うぐらい、沢山の数だった。化け物たちは、絵本で見るような不気味な物から、全く形を保てないスライム状の者までいて、古今東西、それこそありとあらゆる種類の化け物がそこに現れてきた。


「マックス」

 リンは警戒を促す為にマックスの注意を少しだけ引いた。


「お前はアルベルト様と共にマリー様の警護を、ザックと斗真は俺と共にハイエルン博士を、他の者はマリー様に付くんだ。」

「はい」

 マックスはそう指示を出すと、もう一度ハイエルン博士をにらみつけた。


「マリー、あなたは慎とユーリィ、アルベルトさんと一緒にいて。セイレーン、ヘルガ、フィンケの3人もマリーの護衛に付いて。」

「リン、危ない時は逃げてね。」

 リンは私に少し微笑んだ後、近衛の7人と共に敵に向かっていった。それはこの間の襲撃の時の様な不思議な光景だった。只、違うのは今は日中の事だった事、だけどいつの間にか空は分厚い雲に覆われて、暗くなっていた。まるで太陽が死んでいるような、そんな感じさえするほど暗く不気味で、夏だというのに気温さえも一気に下がった様だった。


 リンは、指揮を取りながら戦っているようで、深紅の不思議な光を纏って空に浮かんでいた。

他の7人もそれぞれが緑や黄色などの色を纏って不気味な化け物達と戦っていた。

それぞれが、銀色に輝く剣を持ちそれを振って敵を切り裂いて行った。

特に体が大きなヤーコブの大剣は切るというより、なぎ倒すと表現が当てはまるような、凄まじい力だった。だが、彼らの勇戦もむなしく敵の数が一向に減る気配は無かった。


 リンがこの化け物を呼び出した人物に近づこうと画策しても、次から次へと化け物達がリンの前に立ち塞がり、リンはいつまでも黒尽くめの男に近づけない有様だった。又、私達の周りにいてくれて居る六人にも苛立ちが見え始めた。こうも数が多いと不利なのは目に見えていた。


「くそ、数が多すぎるな。」

「ああ、ユーリィ。数が多すぎる。どこからこれほどの戦力を連れて来たんだ。」

「あの黒尽くめが媒介に為ってドアを開けているからな、後から後から沸いてくる。」

 ユーリィは忌々しそうに黒尽くめの男をにらみつけていたが、こればっかりは数の暴力なので根本をつぶさない限り、こちらはじり貧だった。


「だとしたら、そのドアを閉じないと行け無いって事か。」

「ああ、そうだ。だけどあいつの命も長くはないと思う。」

「どういうことだ、ユーリィ?」

「これだけの戦力を呼び込むドアを維持するのはそれこそ命がけって事だよ。」

 二人は周りにいる化け物達を倒したり、防御したりしながら、黒尽くめの男の方を伺った。

リンや近衛達が、黒ずくめの男に近づこうと悪戦苦闘しているのが見て取れたが、良く見ると確かに黒尽くめの男がやせ細っていっているし、顔色も段々と悪くなっている。


「だとしても、早めに元を絶たなきゃこっちが持たないぞ!」

「だよねぇ。リンにはあいつを倒せって言ってはいるけど、近づけない見たいだしな。」

「あっちは大丈夫かな?3人だけだけど。」

「マックスなら大丈夫だよ、僕的にはこっちの方がやばい気がするけどね。」

 そう言って。ユーリィはげんなりとして数の減らない周りを見ていた。


「君たち、もう少しこちらで固まって戦いなさい。」

「はい、アルベルトさん。」

 アルベルト、慎、ユーリィ達3人と近衛の3人は私を中心に戦っていた。

私も剣を持ち戦っていたが、ユーリィと私は防御で精一杯の状態だった。

そして、心の中でシモンがここにいたらと願っていた。


 その時、まばゆい光が天空に輝いたと思ったら、流星の様な光が雨あられと降り、あっという間に周りにいた化け物達が一掃された。

「大丈夫ですか?マリー様。」

「シモン」

「間に合ったようで良かったです。」

「どうして、解ったの私達が襲われている事。」

 私はシモンが来てくれた事で本当に安心した。


「アリエルが直ぐに連絡をくれました。ですが、準備に手間取ってしまい、少し遅くなったので心配していたのです。間に合って良かったです。

リン、ここの後の事は頼む。私はあちらに行ってくるよ。」

 そうリンに命令を出してこの場を立ち去ろうとするシモンを追いかけた。


「待って、シモン私も行く。」

 私はなぜ命を狙われるのか知りたかった。なぜ? その疑問が頭の中を巡っていた。


「マリー様、危険ですのでここでお待ちください。」

「僕たちも一緒に行くよ、マリー。」

 と言って、ユーリィと慎が私の傍に来た。


 シモンはどうやらあきらめたようだ。

「解りました。では、私の後ろに必ず居るように。」


 そう言って歩き出したシモンの後を私達はついて行った。


 その時リンはあの化け物達を召喚した者に対峙していた。近衛達は先ほどのシモンの攻撃を免れた者達の殲滅を行っていて、確実に数を減らしていた。そしてリンは鋭い一筋を召喚者の右肩から左の脇腹にかけて太刀を振り下ろして召喚者を切り倒した。生き残っていた者達も帰る術を無くして、やけくそで戦っていたが近衛の敵では無かった。それを確認した私はマックスとザック、斗真の3人が敵と対峙している川べりの方へ急いだ。


「やあ、ハイエルン博士。こんな所で奇遇ですね。」

 最初にシモンの方から声を掛けていた。


 ふてくされた様子のハイエルン博士は面白くも無さそうな雰囲気だった。

「フン、一発であいつらを一掃するとは、さすが当代一と呼ばれる魔導士だけあるな。」

「こんな所で何をなさっておられるのですか?ハイエルン博士。」

「実験だよ、実験。ハハハ」

「実験ですか、それはハイエルン博士らしいですが。ところで前回の襲撃もハイエルン博士が?」

「さあねぇ、そこまで親切に教える事も無いだろう、君には。シモン君。」

 二人はお互いに口元に微笑みを浮かべて腹の探り合いをしながら対峙していた。


「ハイエルン博士、あなたの実験は失敗に終わったようですが?」

「そうだねぇ、あいつの魔力が今一つ足り無かったようだねぇ。入口が小さすぎて大物を呼び込めなかったのは誤算だった。が、まあ、数は呼べることが判ったんで、次の時にはその辺の調整は出来そうだ。」

「あなたは、その成果を持ってどこに行かれると?」

「君が想像している所さ。」

 そう言ったハイエルン博士の直ぐ横から黒い煙が沸き出て足からその黒い煙は徐々にハイエルン博士を包み込み始めた。


「さてと、そろそろお迎えが来たようだ、私はこの辺で失礼するよシモン君。又君に会えるのを楽しみにしているよ。」

「待て!」

 マックスが叫んでハイエルン博士を捕まえようと動こうとしたが、シモンはマックスの動きを手で押さえた。


「ハイエルン博士、あなたは何を求めているのです?」

「さあねぇ、僕自身にもわからないよ、それはね。では、又どこかでお会いしよう、シモン君。」

 そう言って、ハイエルン博士は微笑みながら黒い煙みたいなものにかき消されていった。


「シモン様、逃がしても良かったのですか?」

「捕まえる事は不可能だっただろう。今回は仕方が無い。」

 シモンとマックスはハイエルン博士の消えた場所を注意深く見ていた。


 しかし、その時森の中にはもう一つの黒い影が私達の戦いを観察していた事を私達はこの時は知らなかった。そう、シモンさえも気が付かなかったのだ。この人物は完璧に気配を消していた。そして、不気味な笑みを口の端に残して、完全にその場所から消えた。


「さあ、帰りましょうマリー様。」

「シモン」

 シモンは一息をついた顔をして私達の方に歩み寄ってきて私達を安心させるように微笑んだ。

そして、その頃には他の学園の護衛の者達も集まって来て居た。

 その後、私達は様々な疑問を抱えながら迎えに来た警備の者と近衛に囲まれ車で岐路に付いた。


やっと、悪役の一人が出て来ました。。。。。。。これからもまだまだ続くこの世界を楽しんで頂けたらなぁ。と思います、よろしくお願いします。

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