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ラプラスの悪魔が囁く  作者: なつ
第五章 誰の手の平の上にあるのか
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 後日、日比野から甲斐雪人のもとに手紙が来た。いやはやで始まる、なんとも面白い文章であったが、要約するとこういうことだ。

 香川定吉は過去の事件と、脅迫の二点で罪に問われることになる。病院を退院した芹沢雅が、ナイフで刺されたのは狂言だったとわざわざ警察に言いに来たからだ。脅迫が怖くて、自分を安全な場所に置くための手段だと彼女は説明をした。

 いくつかそれでは分からないところがあるが、芹沢家を相手にしてまで調べるほどのことではない。

 芹沢雅と篠塚桃花は、腹違いの姉妹のようだ。雅が芹沢の姓を名乗っていることと、おそらく同じ意味があるのだろう。篠塚桃花の安全のためだ、という表現をすれば正しいのかもしれない。だが、正直はっきりとしない。どちらが大事にされているかを考えると、実は逆なのではないかとも疑いたくなる。

 ともかく、今回の事件では色々と世話になった。また何かの折には頼むかもしれない。篠塚桃花にもよろしくと伝えておいてくれ。


 甲斐は手紙をしまう。一応、これでこの事件に対するすべての決着がついたのだろう。けれど、甲斐は思う。結局自分が、誰の手の平の上で踊っていたのか。

 脅迫の犯人である、香川定吉の手の平か。

 自らをナイフで刺し、甲斐や警察の力を借りて図書棟の秘密を暴こうとした芹沢雅の手の平か。

 あるいは、それさえも可能性のうちに考え、甲斐を走らせた篠塚桃花の手の平の上だったのか。

 そして、そのすべてをも含む上からの存在、ラプラスの悪魔が作り上げた緻密なからくりの、その手の平の上にいたのか。

 甲斐には分からない。

 量子論的には、次の瞬間に何が起きるかなんて、確率でしか分からない。今考えると、誰かの意思の中にいたのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。今から先を考えた時には、さまざまな可能性の中にあればいい。

 あらためて、

 この学園に転校してきてよかったと言える。

 それに、

 ここで新しい友達もできた。

 それで満足だ。


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