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ラプラスの悪魔が囁く  作者: なつ
第四章 何がそこに隠されているのか?
34/43

  7


 結局香川定吉は、それから何も語らずまま警察に連れていかれた。篠塚桃花は自分の部屋に戻ると、そのまま眠ってしまい、甲斐雪人は一人やるせないきもちのまま宿舎へと戻った。

 授業こそまだ再開されていなかったものの、宿舎は落ち着いているように見えた。入ってすぐのスペースに、夢宮さやかと神田隆志が並んで座っている。

「おう、容疑者、戻ってきたな」

「誰が何だって?」

「警察に一日以上束縛されてたんだろ?」

「は? 自由にしてたつもりだけど」

「お前、だって昨日も宿舎に戻ってこなかったじゃないか」

「なんでお前そんなこと知ってるんだよ」

「そりゃ分かるよ」

「もしかして雪くん、知らないんじゃない?」

「何を?」

「管理人室で、各部屋がモニターされてるって」

 甲斐は首を捻る。

「この宿舎は男女が分かれてないからね。他の部屋で寝泊まりしないようにって。図書棟と同じシステムが入っている」

「おいおい、初耳だぞ」

「管理人いわく、部屋にはいないし、宿舎の中にもいなかった。よって、甲斐雪人、お前が第一容疑者なのだ!」

「僕が芹沢さんを殺したって言うのかよ」

「ちょっと!」

 夢宮が驚いて大きな声をだすと、甲斐の腕をぐいとひっぱる。

「雅さま、死んじゃったの?」

「え、だって、左胸を刺されて、病院に」

「運ばれて行く時、まだ意識があったって、わたしは聞いたわ」

「え、でも……」

 甲斐は思い出す。確かに、芹沢が刺された、という表現は何度も聞いたし、病院に運ばれて、兄弟が集まった、とも。誰か、死んでいたと表現しただろうか。そういえば、先ほど香川を連れていくとき、日比野は殺人未遂の容疑だと言っていた。

「それじゃあ、生きてる?」

「病院に連れていかれたんだって、治療中」

 甲斐は力なく笑った。すっと肩の荷が下りるように。二度と彼女と会話ができないと思っていただけに、むしろ踊るべきだったかもしれない。

「は、ははは、はは」

「雪くん、気持ち悪いよ」

「殺人未遂で、香川定吉が逮捕されたよ」

 不気味にひきつったままの笑顔で甲斐は続ける。

「今さっき。本人の自白はまだ得られていないみたいだったけど」

「香川って、先生の?」

 甲斐は頷く。

「そうなんだ。それは、すっきり、納得」

「すっきり?」

「だって、あの先生厳しいんだもん。変な課題いっぱい出すしさぁ。雪くん見たいに優秀だったらたいしたことないのかもしれないけどねぇ」

「まあ、夢宮の成績は褒められたものじゃないけど。確かに香川先生の課題はえこひいきが激しいからね。客観的に、甲斐には結構厳しい課題が出されていたようだけど」

「ああ、だから先生、雅さまを?」

 夢見が納得したように頷く。甲斐がどういうことか聞くと夢宮は続ける。

「噂だけどね。先生がいつものように課題を出すと、その授業の間に答えを雅さまが出してしまったそうなの。それが何度も。どんな課題をだしても課題にならなかったんだって。さすが雅さまだわ」

「屈辱だったんだろう。でも、どうやって先生が芹沢さまを脅してたんだ?」

 神田の疑問を、甲斐が説明した。自分自身で解いた答えではなかったが、誇らしく感じてしまう。


 こうして、事件は終わりを迎えた。


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