調査記録1日目【8月15日】②
ずるずるずるずるずる…
あ、別に変な儀式をしてるわけじゃないんだ。ただラーメンを同居人(今日からめでたく)とすすってるだけなんだよ?
ずるずるずるずるずる…つるんっ
「熱ッ!?」
おお、思いっきりすすったせいで汁が顔面に飛んだみたいだ。ご愁傷様。
ずるずるずるずるずる…
それにしてもこの光景、悲しすぎるなぁ…。男二人で一つのラーメンをすするって傍からみればよくて仲良し兄弟、悪くてちょっとあれな関係にしか見えないんだよな。
しかも僕まだ半分も食べてないのに奪われたし。
「うまい、うますぎる!この世界には俺に合うような供物はないと思っていたが…これは…いける!」
なんか本人談によるとここしばらく何も食べてなかったんだと。だからただのカップラーメンすらうまそうに食えるのかねー。
「うまふもうもおふもふがふ」
あ、もう3時なのか。そろそろ寝るとしようかな…
明日は得に予定ないし、別に眠くもないからもう少し起きていてもいいんだけど。
これで生活リズムが崩れたらなんかいやだしなぁ。
「がごぼうぇばげぼぐりゃ」
うわぁさっき運んだときのかな、泥がついてる。もう一回お風呂入ってそれから寝よう、そうしよう。
「助けろよッ!?」
「ん?何がさ」
口の周りに麺やらメンマやらをいっぱいつけた男が急に怒鳴ってきた。
ちょ、汚いっこっちとばすな!
「なんで軽く無視すんだよ!俺今むせてただろ!?麺つっこみすぎてむせてただろ!?」
「あーうん。そだね。で?」
「で?じゃねーよ!助けてくれよ!」
「じゃあ100円ね」
「金とるのか!?」
色々文句つけてきてるみたいだけど、生憎と今日はかまってやれる気力がないんだ。主に君を運んだせいで。
…そういえば肝心なこときいてなかった。今きいておこう。
「それで質問なんだけど」
「スルーはお手の物だな、餓鬼」
なんて失礼な男だ。命の恩人にむかってなんて暴言を。
ま、冗談だけどさ。
「君、職業は?」
「闇の魔導士」
一瞬時間が止まったような気がした。もちろん本当に止まってなんかいないよ、比喩ってやつ。比喩比喩。男の方は平然とした顔で、たんたんと、述べる。
「この世界をあらゆる平行線の理から護る役目を負った、魔導士だ」
心なしか、少し声が低い。まてまてまてまて。これは…これは相当…
イタイ奴?「イタイ奴?」
「誰がイタイ奴だ、バカ野郎!」
「わ、聞こえてた?」
「思いっきりな!!」
思ったことを口にだす癖が仇にでたか。小学生のころは素直でいいねって言われてたのに。
でも同級生には怖がられてたなぁ…一時期あだ名が「毒舌少年」だったから。
それもいつの間にか言われなくなってたけど、あれって何でなんだろう?
「俺はこうみえて本物の魔導士なんだぜ?怒らすととんでもないことになるぞ」
「はっはっは、お戯れを」
「………なんかむかつく」
「んーで、結局君はニートなわけか」
「俺の話を全否定するなよ、おい」
「じゃあニート君、さっさと片付けて」
「んな!?」
うすうすわかってはいたけどニートかぁ…。ということは掃除とか洗濯とか死んでもやらねーぜみたいな性格してるのかな…。やっぱあの時冷静に考えとくんだった。後の祭り。
「今俺にとって重大なひとことが聞こえた!」
「バカなこと言ってないで動きなさい、きびきび」
っていってる間にもう3時半だ。いい加減寝ないと…、風呂はもう明日でいいよね。
じゃ、おやすみってことで。
「ニート君って何!?俺のこと!?だよな、俺ひとりしかいないもんな!?」
眠い眠い。今ならすぐ寝れそうだ。
「なんでそんな間抜けなあだ名なん」ガチャ
それでは、しばしの休眠を。