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ミケは人間を保護している

掲載日:2026/09/12

猫の視点に立つと、日常はまったく別の形をして見える。


ミケは窓枠の上から、人間を観察していた。


名前はミケというが、自分ではそう思っていない。

ただ、あの二本足の生きものたちが喉の奥でそう鳴くので、

それが自分を呼ぶ合図なのだと学習しただけだ。


今日も大柄な個体――雄の成体で、顔の下に無駄な毛を生やしている――が、

ソファに寝転んで光る板を眺めている。


あれはいったい、何の狩りなのだろう。


獲物を追うわけでもなく、毎晩同じ姿勢で固まっている。実に効率が悪い。


ミケはひとつの結論を持っていた。


人間とは、発達が著しく遅れた同族である。


証拠はいくらでもある。


まず彼らは、挨拶のときに鼻と鼻を近づけない。これは深刻な社会的欠陥だ。

また、縄張りの匂いづけを一切しない。

どうやって自分の領域を主張しているのか謎である。


おまけに高いところへ登ろうともしない。これでは視野が確保できない。

危機管理能力の低さは明白だった。


それでも、ミケは彼らに多少の情を感じていた。


なにしろ彼らは、不完全なりに必死なのだ。


毎朝決まった時間に起き上がり、体を大きな布で包んで外へ出ていく。

帰ってくるときはたいてい、ひどく消耗した顔をしている。


それでも、この洞穴を離れない。


彼らなりに縄張りを守っているのだろう。やり方は下手くそだが、

本能の火はまだ消えていない。


雌の成体が、ミケに近づいてきた。


膝の上に手を差し出してくる。


あの仕草の意味は、長年の観察で把握している。


――乗ってもよい。


服従のサインだ。


この個体は、ミケの機嫌をよく読む。なかなか見込みがある。


ミケは品定めするように、たっぷり間を置いてから、膝の上へ飛び乗った。


人間の膝は温かい。


体温の高さだけは認めてやる。暖を取る器官としては、彼らは極めて優秀だ。


「かわいいね」


雌が言った。


ミケは目を細めた。


あの喉音は、おそらく、なだめるときの声だ。子に使う声と同じ音域。

つまり彼女は今、ミケを幼い個体だと思っている。


まったく逆だというのに。


保護しているのはこちらだ。


毎晩、窓の外を見張る。不審な音があれば耳を澄まし、

この住処に危険がないか点検する。


彼らは、それすら気づかない。


自分たちが守られているとも知らず、「かわいいね」などと言っている。


ミケは喉を鳴らした。


怒る気にはなれなかった。


そもそも彼らには、ミケほどの認知能力がないのだ。

仕方のないことである。多くを求めるのは酷というものだ。


そのとき、雄の成体がソファから長い手を伸ばし、

ミケの耳の後ろを深く掻いた。


そこは、決定的なツボだった。


ミケは意に反して、さらに強く喉を鳴らした。


抗えず、目を閉じる。


――まあ、欠点は多々あっても、一緒にいて悪くはない同族だ。


そう結論を寛大に修正しながら、ミケは夜の番を一時休止することにした。



身近な猫のまなざしが少し違って見えたなら嬉しいです。

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