第33話 三十前でも魔法使い
一億円をもらっても、使い道に困ります。
一般的な方法は投資という事です。
ダールマイアー領、数本の街道が行きかう領地、街道沿いの宿場町はそれなりに潤っているが。
人の往来の恩恵から取り残された農村は廃れるばかり。
困窮した農民の娘が宿場町に行き春をひさぎ、日銭を稼ぐ。
富の不均衡に頭を悩ませていた領主だが、短い時間で解決策を提示してくれた謎の娘ミヤビ。
翌朝、泊りこんだ奴隷商会一行を送り出したダールマイアー伯爵。
「あのミヤビと言う娘、残念でございましたな」
執事が主人に告げる。
「まったくだ、ああ言う娘を抱えておけば汚れ仕事を任せられたのにな」
領主の手元にも兵はある、だが取り締まりに行こうとすると何故か情報が漏れていて空振りばかり、内通者がいるのは分かっているのだが、それを炙りだすのは影響が大きすぎる。
「ですが娼館街は良い方策だと思いますよ、ついでに旧街道も整備すれば旅人の流れも変わるかもしれませんし」
「汚い物はただ禁止するのではなく、まとめて管理すれば良いとは若い娘の発想ではないな。
まぁ良い供託金は確かに預かった、しっかり増やして返してやるぞ」
◇◇
図らずも盗賊村を壊滅させたわたし達だけど、本来の目的はビアンカの妹達を探しだす事。
幸いにも売られずに残っていた2人の妹ステラとルッチーナ。
ステラは11歳で、ルッチーナは9歳、ご主人様のストライクゾーンで、レオポルト様の目つきがロリコンの目よ、ねぇ小さい子だったら誰でも良いの?
お姉さんのステラは青色で事務処理能力が高いわね、妹のルッチーナは赤色で戦闘適正がある子よ。
◇◇
今頃レオポルト様はにやけ顔でステラ達のツルンとしたお腹を見ている事だろう。
ダメダメ、そんな事は考えちゃダメよ、お茶でも飲んで落ちつこう。
「メリッサ、お茶を入れて頂戴」
「かしこまりました、ミヤビ様」
ワゴンに茶器を乗せてやって来たメリッサ。
「ミヤビ様も変わっておりますね、生活魔法でございますよ」
「何回見ても飽きないし、何回見ても謎が深まるのよ」
本当の魔法が目の前で見られるのよ、その興奮はいかほどか。
「まずは洗浄魔法でカップを綺麗にいたします」
淡い光がカップに降り注いだけど、もともとキレイだったカップだから魔法の力は分からないわよね。
「綺麗にしたカップに加温魔法をかけて温めます」
冷たい物の器は冷やし、温かい物の器はあらかじめ温めないとね。
「次にポットに茶葉を入れます」
「2人分お願いね」
「かしこまりました」
茶葉をポットに入れたら、握った両手をポットの上で重ねる。
「右手からは水を出します、左手で温めますね」
何も無い場所からお湯が注がれる、まさに手品だ、白い湯気が上がり鼻腔をくすぐる香りが立ち込める。
手の平が給湯室になるなんて生活魔法は最強ね。
◇
「メリッサの入れる紅茶は良い香り~」
「良い茶葉を使わせて頂いておりますので、そのおかげでしょう」
「きっと、お母様に仕込まれたのね」
奴隷オークションで買った時は母もメイドと言っていたからね、だけど何故か顔を曇らせたメリッサ。
「申し訳ございません、ミヤビ様、その話はウソでございます、わたしの母はメイドではございません、下働きの下女だったそうです……」
メリッサの話によれば、母親は下女として貴族のお屋敷に勤めていたのだけど、当主に孕まされたそうだ。
それもつい手が出た、なんてものではなくて、貴族の血を引く子を産ませる前提で使用人を次から次にてごめにして行く当主。
「どうして貴族の血を引く子が欲しいのかしら?」
「魔法でございますよ、この国では貴族とか王族、身分が高くなればなるほど魔力が多くなります。
反面母親が平民だったわたしは生活魔法止まりです、それでも歳がくればメイドとして売り出す事が出来るので」
何と言うか、自分から種付け馬になってどうするんだ?と言いたくなるわよ。
「ねぇ、それだったら農村とか下町には魔法が使える子はいないの?」
「いるかもしれませんが少ないのではないのではないでしょうか?魔力があるかどうかは神殿に行かないと分かりませんけどね」
「ねぇ、それだったら商会の子を神殿に連れて行って魔力があるかどうかを見てもらえば良いんじゃない。
もし魔力があれば娼婦じゃなくてメイドとして売れるわよ」
買い取った奴隷達の中にも魔法が使える子がいるよね。
「ですが、神殿で魔力を見てもらうには喜捨が必要ですよ、平民は銀貨25枚だそうです」
なんとも微妙な価格設定だ、日本の基準に照らし合わせれば25万円、庶民に払えない額ではないけど、魔力が無かった場合は捨て銭、無駄にして良い額ではない。
「貴族が平民を孕ませれば、多少魔力が有る程度の子が産まれますが、貴族同士で子を成せば強い魔力の子が産まれます。
強い子を産む為に、そして近い者同士で子を成さない為に貴族では早い段階で許嫁を決めるそうですよ」
ここは異世界と分ってはいるけど、血の為だけに結婚をするのはどうなんだろう?
「そうそうミヤビ様、もうすぐレオポルト様の許嫁がこの商会に来られるそうですよ、どんなお方なのでしょうね」
なんとレオポルト様は貴族だそうだ、と言っても爵位は無く商売に専念する貴族、平民達からは搾取する悪徳経営者と嫌われ。
本物の貴族からは金もうけに精を出す堕落した存在とみなされている立場だそうよ。
異世界の定番、貴族の位階が上がれば上がるほど、魔法の力が強くなる。
血を守る為の結婚のおかげです。




