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婚約者が病弱な従姉妹に構ってばかりなので、黙ってパイを持って2人の前に立った令嬢の話

作者: 山田 勝
掲載日:2025/10/26

「メルダ、従姉妹のベリーが病気になった。今日は1人でパーティーに行ってくれ」


「そ、そんな」


 まただわ。婚約者のマルクソンが従姉妹を優先するわ。

 私の返事を聞かずに金髪をたなびかせて背を向ける。早足だ。彼女の元に行きたいのね。


 1人で寂しくパーティーに出る。


 雀たちが口さがなく噂をする。


「マルクソン様とベリー様、お似合いよね」

「病弱なベリー様の車椅子を押すマルクソン様・・・ああ、尊いわ」

「ベリー様の銀髪も素敵ね。お邪魔虫がいなければいいけど」



 私はうつむいて屋敷に戻る。


 お父様とお母様は。


「メルダ、最近のマルクソン君とデートをしていないではないか?」

「そうよ。絶対にリード家と縁を結ぶのよ」


 私を責める。


「はい、お父様、お母様」


 見かねたメイドのケリーが気晴らしに街につれて行ってくれた。


「お嬢様、評判の占い師にみてもらったら如何ですか?」

「ええ、そうするわ」


 お話を聞いてもらう。


「えー、そうなの。ふ~ん。それは貴女は悪くないわ。薔薇の花を胸に飾りなさい」

「はい!やってみますわ!」


 少し気が楽になったわ。

 薔薇の花を胸元につけてマルクソン様に会いに行った。




「メルダ、従姉妹のベリーが病気になった。今日のデートは延期だ」


「は・・・い」


 いつもと変わらない。

 しかし、チラと薔薇を見たわ。


 それから私は王都の占い師を回るようになった。



「メルダ、従姉妹のベリーを学園につれて行く。今日は1人で行ってくれ」


「メルダ、従姉妹のベリーが散歩をしたいそうだ。今日のデートは延期だ」


「メルダ、従姉妹のベリーが病気になった。1人で挨拶回りをしてくれ」



 変わらないわ。


 王都の占い師を軒並み回ったわ。

 もう、いないのかしら。


「占い師なの~!当たるもドラゴン、当たらぬもドラゴンなの~!」


 幼女!幼女が市場の片隅で占いをしていたわ。


 私はつい前に座ってしまったわ。


「いらっしゃいませなの~!欲し~の。欲し~の。料金欲し~の」


「は、はい、大銅貨2枚ですね」


 まるでお人形さんのように可愛い子。私はお人形さんに悩みを話すように打ち明けたわ。


 すると・・・・


「こうするの。パイを持って2人の前に立つの~!その時、決して話してはいけないの~」


「ええ、そんな馬鹿な」



 しかし、帰ったらパイを焼いていたわ。


「ケリー手伝って」

「はい、お嬢様」


 そして、マルクソン様のリード家に行ったわ。


 お庭でマルクソン様はベリー様の車椅子を押していた。


「・・・何だ。メルダ、どうした?」

「ゴホ、ゴホ、ゴホ!メルダ様、病弱ですので・・そんな生クリームたっぷりのパイは食べられませんわ。気持だけ頂きます」




 ☆3分後


「メルダ!まさか、そのパイをベリーの顔に投げる気じゃないだろうな!おい、何とか言えよ!」

「マルク、怖いわ!」

 あの幼女の言う通り話さなかった。


「メルダ様、お帰り下さい!」


 リード家のメイド達が来たわ。

 それでも無言だわ。

 そもそも私は伯爵家の者よ。命令されるいわれはない。


 ケリーは側で控えているのに。


 私は軽んじられていたのね。


 少し腹が立ったので。

 この場でパイを食べた。


 もちろん、無言だ。


「お嬢様、ナプキンでございます」


 コクと少し頭を下げて一礼したわ・・・・


 お父様、お母様にも情報が行ったのかしら。


 屋敷に戻ったら叱られた。


「マルクソン君を怖がらせたそうだな。淑女教育を受けているのか?」

「ええ、そうよ。しっかりしなさい」



 ☆30分後。


「な、何とか言ってくれ!」

「グスン、グスン、メルダ」



 全く解決していないが、この方法は良い。


 1人でパーティーに行った時も同じように雀たちの前で無言でパイを片手で持った。



「・・聞きました。メルダ様、少し・・・様子がおか・・・キャア!メルダ様!」

「どうされたのですか?私達は何も・・・言っていませんわ」

「・・このドレスにパイを投げるのはお止め下さい」



 少し鬱憤が晴れた。



 また。幼女の元に行った。


「いらっしゃいませなの~」

「よろしくお願いします」


 成果を話した。


 すると、


「次は串焼きなの~、両手に持って、無言の行なの~!」

「はい、分かりましたわ」


「あの店で買うの~!」


「分かりましたわ!」


 串焼きを2本買ったら。

 串焼き屋の前で青年がウロウロしているわ。

 私はジィと観察をした。


 お金がないのかしら。身なりは良いのだけども・・・・


 思わず声をかけた。


「あの、もし、宜しかったら、一本食べませんか?」

「良いのですか?実は・・・・」


 まあ、青年なのに。

 串焼きの買い方も分からない。

 変な方だわ。


「坊ちゃん!」

「ギルリース様!」


 爺やと侍従が迎えに来たわね。

 良い所の令息なのね。


 私は手を振り別れたわ。


 さあ、気を取り直してまた串焼きを買って・・・パーティーに出席をしたわ。


 リード家の前に女騎士がいたわ。

 私にピッタリくっついている。


 私は何も言わずに両手に串焼きを持っているわ。


 皆が遠巻きに見ている。


 一応、マルクソン様のところに行くわ。


「おい、メルダ!今度は串焼きか?その串で刺す気か?ベリーは病弱なのだぞ。おい、近づくな。あっちいけ!」


「・・・・・・」


 マルクソンはうろたえている。薄々分かっている。私はおかしくなったと思われているわね。


「お前が奇行に走るから、私が非難されているのだぞ!ベリーも可哀想だ」


 自分ばっかり。私の心配はしないのね。


「もう良い。メルダを捕らえよ!」


 その時、横から声が聞こえたわ。


「やあ、串焼きの君、皆、今日は私が頼んだのだ」


 ギルリース様?


「殿下!」

「ギルリース殿下!」


 そう言えば、病弱な王子がいるって聞いたことがあるわ。


 彼は笑いながら金髪を揺らしながら、串焼きを手に取った。


「ギルリース殿下!その女はおかしいのです。この前もパイを持って立っていましたわ。私をエスコートして下さいませ」


 ベリーが車椅子から立ち上がったわ・・・・


「君、私はやっと持病を克服したのだ。病弱を装う輩は大嫌いだ!」


 まあ、そうだったの。


「さあ、串焼きの君」

「はい」


 手を取り。エスコートされる。


「メルダ!浮気か?許さない!」


「いいえ。殿下は病み上がり。ですので、私が側で見て差し上げなくては、ですから1人でウロウロして下さいませ」


 その後、正式にマルクソンとは婚約を解消して殿下と婚約を結んだわ。


 殿下があの場所にいたのは、欲しがり占いを受けていたそうよ。


 何でも。


『黒パンを食べるの~、殿下の病気は脚気なの~!西洋では珍しいの!』


 と言っていたそうよ。


 時々、転生者という不思議な知識と力を持っている者がいるという。

 今は殿下と穏やかに暮らしているわ。


 あの幼女は、王家と養子縁組となり。私の義妹になるそうだ。

 今からどうやって可愛がろうかと悩んでいる。


 そういう悩みは大歓迎だわ。



最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
すごく面白かったです!! 占いのパイが謎すぎてどんどん惹きこまれました(*´∀`) ストーリーはサクサク進むし、なによりも読後感がスッキリ爽やか♡ すばらしい作品だと思いました!
ご令嬢「……(どぉんどん、おみまいしていくぞぉ なあ、お前パイ食わねぇか)」
脚気と聞くと森鴎外に殺意が湧くね。 コイツ、思い込みとプライドで3万人殺したドクズだし。 婚約者を放置するクズ男も、娘に寄り添わないクソ両親も痛い目に遭えばいいのに。
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