婚約者が病弱な従姉妹に構ってばかりなので、黙ってパイを持って2人の前に立った令嬢の話
「メルダ、従姉妹のベリーが病気になった。今日は1人でパーティーに行ってくれ」
「そ、そんな」
まただわ。婚約者のマルクソンが従姉妹を優先するわ。
私の返事を聞かずに金髪をたなびかせて背を向ける。早足だ。彼女の元に行きたいのね。
1人で寂しくパーティーに出る。
雀たちが口さがなく噂をする。
「マルクソン様とベリー様、お似合いよね」
「病弱なベリー様の車椅子を押すマルクソン様・・・ああ、尊いわ」
「ベリー様の銀髪も素敵ね。お邪魔虫がいなければいいけど」
私はうつむいて屋敷に戻る。
お父様とお母様は。
「メルダ、最近のマルクソン君とデートをしていないではないか?」
「そうよ。絶対にリード家と縁を結ぶのよ」
私を責める。
「はい、お父様、お母様」
見かねたメイドのケリーが気晴らしに街につれて行ってくれた。
「お嬢様、評判の占い師にみてもらったら如何ですか?」
「ええ、そうするわ」
お話を聞いてもらう。
「えー、そうなの。ふ~ん。それは貴女は悪くないわ。薔薇の花を胸に飾りなさい」
「はい!やってみますわ!」
少し気が楽になったわ。
薔薇の花を胸元につけてマルクソン様に会いに行った。
「メルダ、従姉妹のベリーが病気になった。今日のデートは延期だ」
「は・・・い」
いつもと変わらない。
しかし、チラと薔薇を見たわ。
それから私は王都の占い師を回るようになった。
「メルダ、従姉妹のベリーを学園につれて行く。今日は1人で行ってくれ」
「メルダ、従姉妹のベリーが散歩をしたいそうだ。今日のデートは延期だ」
「メルダ、従姉妹のベリーが病気になった。1人で挨拶回りをしてくれ」
変わらないわ。
王都の占い師を軒並み回ったわ。
もう、いないのかしら。
「占い師なの~!当たるもドラゴン、当たらぬもドラゴンなの~!」
幼女!幼女が市場の片隅で占いをしていたわ。
私はつい前に座ってしまったわ。
「いらっしゃいませなの~!欲し~の。欲し~の。料金欲し~の」
「は、はい、大銅貨2枚ですね」
まるでお人形さんのように可愛い子。私はお人形さんに悩みを話すように打ち明けたわ。
すると・・・・
「こうするの。パイを持って2人の前に立つの~!その時、決して話してはいけないの~」
「ええ、そんな馬鹿な」
しかし、帰ったらパイを焼いていたわ。
「ケリー手伝って」
「はい、お嬢様」
そして、マルクソン様のリード家に行ったわ。
お庭でマルクソン様はベリー様の車椅子を押していた。
「・・・何だ。メルダ、どうした?」
「ゴホ、ゴホ、ゴホ!メルダ様、病弱ですので・・そんな生クリームたっぷりのパイは食べられませんわ。気持だけ頂きます」
☆3分後
「メルダ!まさか、そのパイをベリーの顔に投げる気じゃないだろうな!おい、何とか言えよ!」
「マルク、怖いわ!」
あの幼女の言う通り話さなかった。
「メルダ様、お帰り下さい!」
リード家のメイド達が来たわ。
それでも無言だわ。
そもそも私は伯爵家の者よ。命令されるいわれはない。
ケリーは側で控えているのに。
私は軽んじられていたのね。
少し腹が立ったので。
この場でパイを食べた。
もちろん、無言だ。
「お嬢様、ナプキンでございます」
コクと少し頭を下げて一礼したわ・・・・
お父様、お母様にも情報が行ったのかしら。
屋敷に戻ったら叱られた。
「マルクソン君を怖がらせたそうだな。淑女教育を受けているのか?」
「ええ、そうよ。しっかりしなさい」
☆30分後。
「な、何とか言ってくれ!」
「グスン、グスン、メルダ」
全く解決していないが、この方法は良い。
1人でパーティーに行った時も同じように雀たちの前で無言でパイを片手で持った。
「・・聞きました。メルダ様、少し・・・様子がおか・・・キャア!メルダ様!」
「どうされたのですか?私達は何も・・・言っていませんわ」
「・・このドレスにパイを投げるのはお止め下さい」
少し鬱憤が晴れた。
また。幼女の元に行った。
「いらっしゃいませなの~」
「よろしくお願いします」
成果を話した。
すると、
「次は串焼きなの~、両手に持って、無言の行なの~!」
「はい、分かりましたわ」
「あの店で買うの~!」
「分かりましたわ!」
串焼きを2本買ったら。
串焼き屋の前で青年がウロウロしているわ。
私はジィと観察をした。
お金がないのかしら。身なりは良いのだけども・・・・
思わず声をかけた。
「あの、もし、宜しかったら、一本食べませんか?」
「良いのですか?実は・・・・」
まあ、青年なのに。
串焼きの買い方も分からない。
変な方だわ。
「坊ちゃん!」
「ギルリース様!」
爺やと侍従が迎えに来たわね。
良い所の令息なのね。
私は手を振り別れたわ。
さあ、気を取り直してまた串焼きを買って・・・パーティーに出席をしたわ。
リード家の前に女騎士がいたわ。
私にピッタリくっついている。
私は何も言わずに両手に串焼きを持っているわ。
皆が遠巻きに見ている。
一応、マルクソン様のところに行くわ。
「おい、メルダ!今度は串焼きか?その串で刺す気か?ベリーは病弱なのだぞ。おい、近づくな。あっちいけ!」
「・・・・・・」
マルクソンはうろたえている。薄々分かっている。私はおかしくなったと思われているわね。
「お前が奇行に走るから、私が非難されているのだぞ!ベリーも可哀想だ」
自分ばっかり。私の心配はしないのね。
「もう良い。メルダを捕らえよ!」
その時、横から声が聞こえたわ。
「やあ、串焼きの君、皆、今日は私が頼んだのだ」
ギルリース様?
「殿下!」
「ギルリース殿下!」
そう言えば、病弱な王子がいるって聞いたことがあるわ。
彼は笑いながら金髪を揺らしながら、串焼きを手に取った。
「ギルリース殿下!その女はおかしいのです。この前もパイを持って立っていましたわ。私をエスコートして下さいませ」
ベリーが車椅子から立ち上がったわ・・・・
「君、私はやっと持病を克服したのだ。病弱を装う輩は大嫌いだ!」
まあ、そうだったの。
「さあ、串焼きの君」
「はい」
手を取り。エスコートされる。
「メルダ!浮気か?許さない!」
「いいえ。殿下は病み上がり。ですので、私が側で見て差し上げなくては、ですから1人でウロウロして下さいませ」
その後、正式にマルクソンとは婚約を解消して殿下と婚約を結んだわ。
殿下があの場所にいたのは、欲しがり占いを受けていたそうよ。
何でも。
『黒パンを食べるの~、殿下の病気は脚気なの~!西洋では珍しいの!』
と言っていたそうよ。
時々、転生者という不思議な知識と力を持っている者がいるという。
今は殿下と穏やかに暮らしているわ。
あの幼女は、王家と養子縁組となり。私の義妹になるそうだ。
今からどうやって可愛がろうかと悩んでいる。
そういう悩みは大歓迎だわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




