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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

二人称小説ウクライナ情勢シリーズ

伯爵令嬢の使い魔べとべとさん! その2! ~現代社会情報通の“うち”は、激しく腹を立てている!~

作者: 栗野庫舞

ジーリエス「今日はどこに行きましょうか?」

べとべとさん「らぶほてる」

ジーリエス「却下です」

べとべとさん「お嬢様が市長になればいいのに」

「うちはとても怒っている!」


 べとべとさんの大声が、あなたの背後から聞こえていた。


 今、リビングのソファーには、ヨーシャク伯爵家の金髪三つ編み美少女、ジーリエス嬢が座っている。


 あなたは、彼女の着ける小さな貝の髪飾りだ。九十九神(つくもがみ)のあなたは、正面の様子を見ることと、周囲の音を聞くことが出来る。


 正面の向こう側にあるテレビでは、ニュースが映っていた。とある都市の市長が、部下の異性とラブホテルへ何度も行っていたにもかかわらず、男女の関係はなかったとの釈明会見が、報じられている。


「べとべとさんが怒るのも当然です。私だって、こんな明らかに疑われることをしていたら、言いわけしても無理があると思いますよ」


 私服姿のジーリエスは、べとべとさんに同調する。


「そうではないべと!」


 しかし背後のべとべとさんが、ジーリエスの言葉を否定した。


「あの侵略国は、卑劣にも隣国に攻め込んで、占領した現地で併合をするための汚い住民投票をおこない、賛成が多数だとでっち上げた!」


 べとべとさんは侵略国を物凄く憎んでいる。侵略を侵略じゃないとする敵の態度が気に入らないらしい。


 他国が占領地で住民投票をおこなうこと自体が悪事だというのは、あなたも納得出来るはずだ。


「こんなどう考えてもおかしい話を、これは現地住民の意志だから正しいなどと擁護する気持ち悪い人間の(くず)どもが、何十体もいたべと! それなのに、この市長が、らぶほてるに行ったのに男女の関係はなかったとする発言を擁護するやつがあまりにも少ない! どうなってるべと!」


「そんなこと私に言われても……」


 ジーリエスは困る。あなたには感触が分からないものの、ソファーの後ろにいるべとべとさんが、ジーリエスの頭部に巨乳を当てている。いつも白い着物を着ている彼女の胸部は、非常に大きいのだ。


「なので、お嬢様。市長の擁護をしてみて」


 困難な役回りをジーリエスは与えられた。


「えっと……本当に男女の関係ではなく、悩みの相談がしたかっただけ、だったんですよ」


 無理があると言いたげな声でジーリエスは擁護する。


「それなら市役所の中で相談すればいいべと!」


 これは正しい。


「そのラブ……ラブするためのホテルが、実は偶然、知り合いの方がオーナーをやっている施設で、税金の無駄遣いを抑えた面会が可能になったとか……」


「それなら会見で真っ先に伝えろとさ!」


「……男女の関係はないにしても、親密な関係になれれば、意思疎通が円滑になって、お仕事もはかどります」


「職員の全員と平等に仲良くなれべと!」


「……すみません。べとべとさん、やっぱりこんな疑わしい話、擁護出来ません……」


「ほらみろ! でも、それでいいべと! 伯爵令嬢のお嬢様も、妖怪であるうちも、擁護出来ない。よって、ほぼ黒なのは侵略国の住民投票と同様、確定。これ以上の詮索は凶悪な妖怪のように怖いので、終わりにする」


 そう言って、べとべとさんはジーリエスの横に回って来て座った。後ろにいたのは、背後に現れる妖怪だからかもしれない。そのお陰で、彼女が怒鳴る際の般若(はんにゃ)のような顔をあなたが目に入れることはなかった。


 長い黒髪を三つ編みにしているべとべとさんは、にぼしの袋を持っていた。好物のそれを食べるのかと思いきや、食べずにテーブルへと置いた。


「誤解がないように、お嬢様に伝える。不倫(ふりん)は殺し合いに発展しないこともあるけど、侵略は必ず殺し合いになる。だから、市長よりも、あの侵略国家のほうがはるかに悪。これは絶対に間違えないでほしい」


「もちろん分かっていますよ」


 日頃からうんざりするほど侵略国の非難を聞かされているのに、きちんとべとべとさんに対応するジーリエスは、優しい。


「それともう一つ。うちとお嬢様は危ない関係ではないので、――こういうことをしても問題ない」


 急にべとべとさんは白い着物の(えり)を両手で開き、大胆に巨乳を(さら)した。


 彼女の白いブラジャーは決してかわいいデザインではなく、飾り()のないものだった。けれども、着物に隠され、胸部の半分ほどを隠しているそれを見られる背徳感には、興奮出来る。あまりにも細く見えるブラ紐にも、同じ感情が芽生える。


 巨乳が大きく揺れた。あなたはずっと、目撃する自由を得ていた。


「らぶほてるでは、こんなことも、おこなわれていたかも」


「ダメですよ、べとべとさん。そういうことをするものじゃありませんっ」


 焦り声だったジーリエスは、べとべとさんの乱れた着物を直す。


「べとっ! さすがはうちのお嬢様! 道徳心がすごい! 侵略者どもとは大違いべと!」


 べとべとさんの左目は黒い前髪で隠れていたが、見えている青い右目は感動の輝きを放っていた。そんな彼女の表情は、あなたから見ても、かわいかった。


 肌と下着と胸部が隠された後、べとべとさんはテーブルにあったお皿へと、にぼしをぶちまける。


 出来上がったにぼしの山は、どんどんと平らになって行った。


                    (終わり)

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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