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無魂のスピリター ―魂なき者と終焉の焔―  作者: 御竜キレハシ
第二章:イテルを抜ける紅と影
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第14話 影の剣

「黒甲冑の者たち……か」

 甲冑を鳴らしながら、馬に揺られる。アルマ君とミコト君は置いてきたが、彼らなら訓練でもしているだろうし、心配はいらないだろう。

 当面の問題は。

「……どこの勢力だ?」

 北東のコンダは紛争状態とはいえ、だからこそ地理的に難しいだろう。ダレモは南北に長いファーゲルの南端だ。

 かといって、南東のシーチが攻めてくるだろうか? 彼らは竜神信仰で、国を治める者、いわゆる王にあたる存在も竜が務めている。竜人族ではなく竜そのものだ。

 つまり、わざわざアルマ君を狙う理由がピンとこない。

 となると、国内の勢力を疑う必要も出てくる。しかし、今のところそれらしい話もなく国内自体は安定している。思い当たる点が無いのだ。

 何か、何か理由があるはずだ。アルマ君の特殊性、ソウルが無い存在を必要としている、もしくは利用しようとする理由が。

 丘を越えると人が目に入った。見覚えのある服装が、倒れている。

「モトス先生!」

 馬を急がせる。降りて様子を見ると、幸い息はある。

「か、カリスさんですね?」

「はい! いったい何が……? 一人なのですか?」

 怪我らしきものは見られない。得意ではないが治癒のスピリトを使う。体力の回復程度にはなるだろう。

「失礼、馬術の心得が無かったもので……。黒甲冑の襲撃に会いました」

 話を聞けば、私たちが発った後。調査を終え、帰り支度をしていると奴らが現れたそうだ。

 戦力はそれほどでもなかったそうだが、それでもこちらも調査程度の人員。そもそもアルマ君を迎えに行くだけの任務だった。

 モトス先生も共にスピリトで戦ったが、派遣騎士団は全滅。ひとり、残されたと。

「……ダレモでこの剣が見つかりました。黒甲冑の物でしょう。シーチの竜の紋章が彫られています」

 改める。確かに、見覚えのある紋章だ。

「では奴らは……?」

「シーチとみて間違いないでしょう。これは明確な侵略行為です。戦争が始まるかもしれません……」

 二つ違和感があった。

 一つはモトス先生が無傷であること。

 彼の獲物は剣。得意ではないからあまり前には出ないようにする、とファーゲル市を出立する直前に言っていたが、それでも私の部下たちが全滅してなお無傷でいられるものだろうか?

 もう一つは、このシーチの剣だ。

 私の予備知識では黒い甲冑を用いる国は存在しない。

 つまり、わざわざそれを着るということは身分を隠したかったはず。

 なのに、こんなにわかりやすい証拠を残すだろうか?

「……」

「どうかしましたか?」

 モトス先生は少しふらつきながらも立ち上がる。裾の汚れを払った。

「迎えに来てくださってありがとうございます。命拾いしました」

「え、ええ。では、後ろに乗ってください」

 このモトスという男、何かきな臭い。ファーゲル市まで戻ったら身辺を洗ってみよう。

 それまで、何も起こらなければよいが。

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