第10話 草原の香りと決意
時間は抑えつつ、毎日修練を続ける。
数日。
「あれがイテル村ですね!」
はるか遠くにかすむ山脈まで続く草原の中、テントのようなものがいくつも貼られているのが見えた。
少し離れた場所には羊の群れが散見される。
そして何より、ヒトが大勢行きかっていた。荷物を満載した馬車や商人と思われる人間が何人も見受けられた。
「すげぇ……。あんなにヒトがいる」
「モトス先生と私の部下たちが追いつくまではしばらくあそこに滞在することになる。アルマ君のトレーニングもしっかりできるぞ!」
「カリスも燃えてきてくれたな!」
「アルマは体力バカなので無理はなさらずに……」
「ハハ、ここまで食い下がってくれると私としても教えがいがあるというものさ。こちらとしても身体がなまらなくて助かる。さあ、行こう!」
遠くからも見えていた通り、徐々に人通りが増えはじめる。
「なんだかいい香りがしてきたよ!」
青青しい草原の香りの中に、香ばしい料理の香りが混ざる。
「以前言った通り、ここはチーズが名産だ。出店では焼いた羊肉をチーズにつけて出したりしているからね」
「その肉の匂いってわけだな! 行こうぜミコト!」
「では、私は宿をとっておこう。一通り回ったらそこに来てくれ」
ひとしきり出店を回り、肉汁の滴る焼きたての香りと濃厚なチーズを味わった後、村の中央の広場で休憩する。円を描くようにベンチが並んでいた。
並んで座る。
「はぁ~食った食った」
「美味しかったね!」
「ああ。……ちょっと元気出たかも」
村のことが頭をよぎる。
「アルマは……どこの勢力だと思う? ひょっとしたら国外じゃない可能性もあるから……」
当然、黒甲冑どもの話だ。
「……今考えるのはやめようぜ。学者先生たちが何か掴んでくれるだろうし、俺にできるのはスピリト砲を使いこなすためにカリスに鍛えてもらうだけだ」
「でも、考えることくらい」
「俺らなんかよりアタマのいい人間はいくらでもいる。オトナに任せて、俺らはできることをやるだけさ。宿に行こうぜ! あんまりカリスを待たせるのも悪いしよ!」
「うん……」
俺が言ったのは本音だ。俺たちは所詮ガキ。モトス先生は予想も教えてくれなかったし、ちゃんとした結論を出してくれるだろう。