第9話 夜明け前の剣戟
7~9話同時公開です
どれだけの時間が過ぎたか。ずっと砲と盾を交えていた。こちらを気づかってか、カリスが剣を振るうことはほとんどなかった。
訓練を眺めていたミコトはといえば、とっくにタープの下で眠っている。
草原に身体を放り出し、息を整える。カリスも表情こそ余裕だが、息が上がってる。額の汗をぬぐった。
「……ふう。キミはずいぶん体力があるな」
「ご、ごめん。こんな時間まで付き合わせちゃって」
空は白み始めている。
「私は騎士だ。日ごろから鍛えているから多少平気だが、アルマ君こそ大丈夫なのか?」
「……昔から身体を動かすのは好きだった。それに、スピリトが使えないのもあってせめてってさ」
「それにしても、だ。夕刻から夜明けまで戦うとは尋常ではない。持久力で言えば私の部下たちにも見習わせたいくらいだよ」
剣と盾をしまう。
「鍛えてるからだな!」
「うむ……、それにしても普通じゃない。ソウルが無いことと関係が……?」
「それ、よしてくれよ」
昔からそうだった。
「何かあれば、ソウルが無いから。ずっと言われてたんだ。ごめん、だけどよしてくれ」
「……そうか、そうだな。失礼した」
「それを言ってたヒトももういないのか……」
気まずい沈黙が響いた。
「……出発は少し遅らせよう。短いが、休むといい」
「わかったよ」
あまり時間はないが、それでも俺の体力ならば問題はない。