61話 転生10日目で初めての別離
「ユリア様ぁ……」
「また近い内に来ますから……泣くほどのことですか?」
「泣くほどのことですわ!」
「ですの!」
「ユリア様からは表現できない素晴らしい香りがして……こほん、なぜか隠してしまわれるお美しい銀髪も綺麗な紅いお目々も、あとあと……」
「わ、分かりましたから」
およよよ、と3人揃ってハンカチを目元に。
……あと、匂いってのは臭いじゃないよね?
貴族仕草での「お臭いですわよ」って言い回しじゃないよね?
少なくとも、僕的には……男なのに女の子みたいな匂いがするだけなんだけどなぁ。
ぼんくらぼんぼんでも普通に良いもの食べてきたものとエミリーちゃんの服でバフはかかってる……はずなんだ。
「ユリアさま……」
3人に挟まれて――エミリーちゃんに好きにされる僕がごとくに世話を焼かれたおかげで、前髪を少し短くさせられてぱっちりおめめがかわいいルーシーちゃん。
癖なのか、背は変わらないのにいつもの上目遣いで見上げる形になる彼女。
……ほら、この世界はゲームじゃない。
だって、ゲームに出てくるモブですらなかったはずのこの子でさえ、こんなにかわいくなれる――変わることができるんだからさ。
それはさておき、僕にとっても大切な10日間になった。
まずもってジュリオン様ボディの初期ステータスの高さとLUK値の高さ。
あとは妙にムチがしっくり来る――恐らくは武器の適正値が高いってこと。
正直これだけでも、たった今に実家から追放されたとしても充分暮らしていける確信がある。
ただし――ここはゲームの中じゃないからシステム的な、それこそステータスウィンドウなんて存在しない。
したがって、正確な数値やスキルの詳細は体感でしか分からない。
レベルとスキルは冒険者ギルドの高位のランク審査のとき、あとはゲーム開始後のチュートリアル……と、たぶん学園にあるんだろう設備でいつでも見ることができるはずなんだけども、今の僕はそのどれにもアクセスはできない。
極めて常識的な初心者でありながら情報収集たくましい3人に聞いてみたところのお返事が「上級のランク審査以外にございますの?」「ございませんの」「あ、神々から直接ということもごく稀に……」って感じだったし、レベルに関しては、ランクが何回か上がって受付嬢さんから声をかけられるまでは忘れておこう。
戦闘経験を積んでいけばレベル内でも体感できるレベルの差は出てくるし、そもそもエミリーちゃんによる2年間のブートキャンプ、さらにエロディーさんのおかげでスタートダッシュも決められたんだし、10年後を目安に上げていけば良いもんね。
そうだ、10年もあるんだ。
急ぐ必要はない。
ゆっくりと、けれど確実に死亡フラグとメス堕ちフラグを潰していくんだ。
「けれど、以後も基本はソロで戦われるというのが残念ですわ」
「仕方ありませんことよ、ユリア様ですもの」
「家訓のために、通常は最低でもわたくしたちのように3人以上のところをおひとりで……ソロで攻略されるのですものね」
「でも、さすがはユリア様ということでまぁたぶんきっとなんとかなりますわ! ええ、魔法とかすごいですもの!」
「ム、ムチでびしばしもすごいですし……はぅ」
何この良い子たち……いや本当、僕がジュリオン様とかじゃなくってごく普通のモブとかに転生してたら、あと本物の女の子に転生したりしてたら心おきなく、この子たちとずっとやっていきたかった。
そのくらいには……そう、クラスで目立たず、けれどもクセが特にあるわけでもなく普通に会話が成立し、普通だからこそ特段に男女を意識せずに普通の友人として普通の学校生活を楽しめる――そんな、男子の理想な女子たちなんだ。
まぁそろって「ですわ」「ですの」口調がかぶってるし似たような性格と似たような見た目に似たような名前だし、3人セットで――勝手に1人でぴーちくぱーちくしゃべってるような子だって認識がぴったりなんだけどね。
この子たち、お花摘みまで完璧に同じタイミングだしなぁ……でも毎回「ご一緒されます?」っていうのはちょっとね……ほら、僕、まだ子供のだけど生えてはいるから……。
いやまぁスカートだし、座ってすればバレないだろうけども、とうとうこの数日でバレなかったけども……幼女と言ってもいい女の子たちと並んでするとか、ほぼ確実に僕の性癖が開拓されちゃうだろうし……。
そこを中和してくれるのがルーシーちゃんと、まさに完璧な布陣だ。
またを、被害担当とも言う。
ルーシーちゃんにだけは僕の正体を知られているから、緊急事態には家の名前を出してもらえばギルドとかが連絡をよこしてくれるだろうっていう安心感もある。
そういやルーシーちゃん、結局3人娘にバラさなかったし……口が堅い子なんだね。
この世界はあったかいね。
まぁ主人公くんが居ないと何割かの確率で人類圏が物理的に半壊するし、2割くらいで僕が魔王様になっちゃって滅ぼしちゃうんだけどね。
そうさせないためにも、これから地道に――――
◇
【「主人公」不在の場合は100%の確率で人類は消滅します】
◇
………………………………?
何かが頭にささやい――てきたら怖すぎる。
うん、空耳だろう。
屋外だし、うん、きっとそう。
◆◆◆
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