60話 4人全員の責任を取ることになった
「はぁー……もうユリア様との夢の日々もおしまいなのですわねー……」
「残念ですわぁ」
「悲しいですわぁ」
「でもルーシー様が居る限り、必ずまた会えますの!」
「はい、間が開きそうなときや緊急時にはギルド経由で連絡しますが、なるべく頻繁に来るつもりです」
石鹸の匂い(2日目から買い足した良い匂いのやつ)が充満する室内。
それプラスで子供特有の匂い……ってのは変態臭いからやめるとして。
ともかく僕は今、壁を目の前に本へ目を通しながら彼女たちへ返事をする。
……モブ子ズ3人とルーシーちゃんがお風呂をしている空間で。
「でも、別にユリア様がそうまでしてこちらを見ないようにする義理はありませんのに」
「わたくしたち、特に気にしませんわ?」
「なにしろ木っ端貴族ですもの、ユリア様のように同性にでさえ肌を見られてはいけないとは言われていませんわ。ね、ルーシー様!」
「そ、そうですね……」
ごめんなさい。
そんなすごそうな理由とかじゃなくって、僕が男だからです。
僕が女装変態男だって知っているからか、結局今日までの毎日のお風呂を気まずそうにしていたルーシーちゃん。
……うん、なにしろやらかしちゃったもんね……裸見ちゃったりお漏らしさせちゃったりだった主犯だから……ごめんね、責任は取るから……。
もちろん、女の子とはいえ相手はたったの7歳そこら。
女の子らしい体つきには――ルーシーちゃんのを見ちゃったから言うしかないけども――全然なってないし、本当、股さえ隠せば僕と一緒に入っても気づかないレベルだろう。
この年ごろの男女ってのは、髪型とか意識以外で見分ける手段はないんだから。
「……ルーシーを預かる手付金は」
「本当に要りませんの。そもそもルーシー様のドロップ運だけで」
「大儲け――ではなくなるにしても」
「この宿屋に泊まり続けるくらいはへっちゃらですし? ね、ルーシー様?」
「あ、は、はい……みなさんに教えてもらったので、どうにかダンジョンでも戦えるようになりましたし……」
この数日間、この子たちはすっごくがんばっていた。
おかげでもはや――まぁ初日からだけど――気心も知れ、先頭の連係もばっちりで、たぶん僕抜きでもポーターが必要なくらいには稼げるようになっているはずだ。
「それもこれも、ユリア様のおかげですの!」
「ユリア様と出会えなければ、そもそもわたくしたち尊厳を踏みにじられて死んでいましたし!」
「その後もルーシー様と引き合わせてくださいましたし!」
「正直、何を言われても全てを捧げたいくらいですの!」
「いえ、それは……」
「分かっておりますわ。ユリア様は高潔なお方ですの」
「それに、わたくしたちよりずっと頭が良いですの!」
「たとえ正体を知らずとも、どんな理不尽な命令でも安心して遂行できるほどですの!」
……胃が痛い。
わずか7歳の肉体だっていうのに、胃がきりきりする。
なんでこの子たちは、こんなに良い子たちなんだ。
こんなに良い子たちが、なんでモブぎりぎりのヒロインなんだ。
それに、
「……ユリアさまもみなさんも、ぼくに『楽しい』を教えてくれました。今、こうしてあったかいお湯で体を洗えているだけでも幸せで……」
「まあ! まあまあまあ!」
「愛いですのういですのー!」
「ユリア様、この子、食べちゃって良いですの良いですの?」
「あはは……猫かわいがりはほどほどに……」
――初対面では孤児と変わらない見た目だったルーシーちゃん。
そんな彼女も、今や折れそうな手脚から、がりがり程度になっていて――3人いわく「この生活なら、あと1ヶ月でおなかにもお肉がつきますわ!」って感じに健康児に。
「けれど、前髪、もう少し切りませんこと?」
「ルーシー様もおかわいいのに」
「わたくしたちのように、盛って盛らないと殿方をくわえ込めませんわ! ところでくわえ込むって、何をかご存じで?」
「くわえっ!? え、えっとぉ……そのぉ……」
3人とルーシーちゃんは飼い主とペットみたいな感じな関係に近いけども、不憫な彼女への母性本能からか、おはようからおやすみまで面倒を見てくれている。
……あのとき僕がルーシーちゃんと出会わなくても、この子たちと会えていたらきっと、似たような形に収束したはずだ。
うん、きっとそうだ。
だから、この女の子の園に女装男という不純物は不要なんだ。
「明日から寂しいですわぁ」
「寂しいですの」
「ユリア様……せめて1回だけでも、一緒にお風呂に」
いや、それはできないんだ。
いやいや、僕は決して7歳児――前世換算で6歳の女の子たちに欲情するような性癖は持ち合わせていない。
それは断固として主張する。
けども、ルーシーちゃんのときみたいに見ちゃうと……ものすごい罪悪感で死にたくなるんだ。
ジュリオン様メンタルはお豆腐メンタル。
前世の僕も似たようなもんだし、ああいう刺激物は――――――
「ねえねえユリ――きゃあっ!?」
「あ、に、逃げてくださいまし!?」
「痛いですの!?」
「ゆ、ユリアさまぁ――!」
急に変わった雰囲気に、僕は思わずで――外し忘れてたムチを手に、警戒態勢。
まさか、そこそこ平穏なこの地区のそこそこ以上に良いお宿なここへ強盗――あるいは幼女のきゃっきゃを聞きつけての変態が――――――
「!?」
ごんっ。
――ばしゃっ。
……からんからん。
「ごめんなさいですのごめんなさいですの!」
「お怪我は!? ……とりあえずないですの」
「でも……ああ! ユリア様に!」
「……あっ」
ぽた、ぽた。
「………………………………」
腰を落としながら振り向いた僕は、盛大にあったかいお湯を浴びた。
なんで?
それは――ひっくり返ったタライ、それに捕まる形ですっ転んでいる4人。
すっぱだかの、女の子たち。
よほど派手にひっくり返ったのか、4人とも、仰向けに脚も閉じずにいろんな態勢になっていて――――――つまり。
「……あぅぅ……」
「あはは……お恥ずかしいところを……」
「といいますかユリア様がびしょ濡れですの!」
「大変! あ、下の階へ湯がこぼれていないか……」
――僕は、また見ちゃったんだ。
それも、今度はルーシーちゃんのに加えて、3人のも……なぜかちょうど僕の方に向けておっぴろげなもんだから、はっきりくっきりと。
「………………………………」
死にたい。
なんで僕ばっかり、こんなことになるんだ。
ラッキースケベ?
「それはまるで主人公くんの特殊スキル」みたいじゃないか。
おかしいじゃん、僕は悪役令息のジュリオン様なのに。
この罪悪感を解消するためには……ルーシーちゃん同様、男として責任を取るしかなく。
精神年齢健全成人男性として、自分から逮捕されるのも厭わないレベルの申し訳なさに……僕は目を閉じることもできず、ただただ目の前の光景を見つめていた。
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