55話 ダンジョンでルーシーちゃんを鍛えよう2
「ですが、あくまで……そう。すべての武器を扱えるというのは、雇われの家庭教師が言っていたこと。ただ僕を褒めるために言っていた可能性もありますし……実際にどうかは試してみないと分かりません」
「……で、ですわね!」
「さ、さすがのユリア様でも……」
「誰にでも苦手なことはありますの! お気になさらないでくださいましユリア様!」
原作のジュリオン様なら、それぞれのルートに入った途端にそれぞれのメインヒロインの攻撃手段のアンチになるようなものを身に付けていた。
そして、少なくとも僕が記憶しているアプデとかを含めた合計のルートが99。
だからたぶん「この世界に存在しているあらゆるもの」に適性があるんじゃないかな。
ほら、エミリーちゃんへの折檻で鍛えてもらってた魔法でさえ、すでに数種類だし。
あ、そういやジュリオン様の記憶の中に居る魔法の家庭教師さんが、それ聞いて打ちのめされたような顔してたのがポップしてきた。
なんかその……ごめんなさい。
才能って、努力した人ほど分かるもんね。
次に教えてもらうときは最大限の敬意とか払うので、どうか復讐とかしないでください……僕も前世ではそっち側だったはずなんです……。
けども、魔法はともかく、武器は分からない。
だいたいヒロインたちのアンチになる攻撃方法=魔法だったし、そもそもジュリオン様ってば基本は魔法攻撃ばっかで動かなかったし。
まぁ主人公くん=ユーザーは、それを見てさらにアンチ属性の魔法とか魔法剣とか使えるんだけどね。
ずるいぞ、主人公くん。
とまぁ、10年後まで会わないだろう相手のことはどうでもいいとして。
「ルーシーと僕の適性を調べるためにも、武器屋に行きましょうか」
◇
ぶんっ。
「剣は……大丈夫そうですね」
「やった……! 剣……!」
王道にして正道の剣。
うんうん、やっぱり剣は良いよね。
「勇ましいですの……!」
「やはり王道は剣……騎士団の皆様のように……!」
◇
ぶぉんっ。
「大剣も……全然重くありませんね」
「ぼ、ぼくがこんなでっかいのを……」
とりあえずで身長ほどもある大剣を肩に担いだり、決めポーズができるのは分かった。
あ、もちろん質量で敵をなぎ払うってのもかっこいいよね。
「さすユリですの!」
「令嬢が大剣を……なぜでしょう、心が妙に……」
◇
ひゅんっ。
「……弓も、問題ありませんね」
「わぁ……これ、使えてたら村でも……いや、どうせ子供だからって……」
弓とか、練習が難しいはずなのに……僕たちは的の中心付近に何本か命中させられた。
これはダンジョンで使えそうだね……どっちかって言うとメインよりはサブウェポンとして。
「……ゆ、弓くらいなら!」
「そうですの! 騎士団でも剣と弓くらいでしたら!」
◇
しゃりんっ。
「槍も、重心が分かりますね。まぁダンジョンでは邪魔なので使いませんが」
「……僕の背よりも長いのに、どうして軽く感じるんだろう……」
槍も良いよね。
ほら、走る馬の上から敵陣へ――って、だからそれはダンジョンじゃお仕事ないって。
これが領主とかなら、軍を率いて魔王軍との戦争で――いや、僕、将来領主になるんだったわ。
………………………………。
……槍と乗馬も、機会を見て練習しないとな。
ほら、革命とか起こりそうなら、なんとか言うこと聞いてくれる兵士率いて討伐しないと僕が殺されちゃうし。
「………………………………」
「だ、大丈夫ですの! 次ですの!」
◇
ずしん。
「大楯も有用そうではありますが……」
「ぼくたちだと、前がなんにも見えませんね……」
でっかい盾。
高さだけで1メートル半ほどで、つまりは僕たちは頭まですっぽりと入り込んでいる。
……これもまた、背が高くてがっしりした男なら使いやすいんだろうけども……単純に、前も横も見えないわこれ。
「あ、でも、重さをかなり無視できるので……こうっ、振り回せば」
「な、なるほど……さすがユリアさま……!」
ぶんぶんっ。
お、これは心強いシールド。
かさばらなくて重くなければ持ち歩きたい感じ。
「……さすユリですわ」
「ですの」
「ですわね」
◇
杖。
「あ、僕、魔法は杖なしで使えますので」
僕は指先から、ひゅぼっとマッチを擦ったときみたいな火をつける。
これだけは、これだけはエミリーちゃんのおかげではっきりとした感覚が――あ、ジュリオン様、エミリーちゃんに心停止させられる前の日にも使ってたんですね……おかげで魔法とかいう力を簡単に使えるみたい。
「ま、まぁ、魔法の才のあるお方なら杖なしも不思議では……」
「え? でも今、詠唱……」
「……て、天才ですのよユリア様は!」
……ぼふっ。
「わっ、わっ! ど、どうしよう……草に火がついちゃった……!」
「あら、落ち着きなさいルーシー。火は水で消せば良いんですよ」
「は、はいっ! おみず、おみずっ……あ、消えたぁ……」
初めて手にした杖で――魔法理論とかも教わることなく、火と水の魔法を使ったルーシーちゃん。
「ルーシーは魔法使いで行った方が良いかもしれませんね」
この子、怖がりだし。
あと単純に、これまでの栄養が悪すぎたのか体力も――や、素手で村から町まで移動して来たからもしかしたらかなりあるかもしれないけども。
魔法使いなら基本は後方だし、冒険者の中では1番安全な職業だって言うし。
この子もまた幸薄い属性だし、可能な限り無事で居られるお仕事に就かせたいもんね。
「……なるほど! ユリア様が見出されただけのことはあるのですわね!」
「!! そうですの! きっとそうですの!」
「あははー、きっと数百年前の『勇者』様みたいに、あの憧れの『お姫様』みたいに才能あるお人なのですわぁー、ユリア様もルーシー様もー」
「それなら気にせずともよろしいですわね!」
「ええ! わたくしたち凡人と、神から愛されし子供……わたくしたちはサポート役なのですわー!」
「勇者の物語でも、付き従う仲間や配下の者が居たんですのー、それになれたら幸せですものー」
「それならわたくしたちが前衛と前衛と中衛でルーシー様は後衛! 完璧ですわー!」
ん?
魔法を初めて使ったからか、ふらふらしてるルーシーちゃんを抱えてたら……なんかモブ子ズが姦しく抱き合って笑ってる。
うん……良いよね、ああいうの。
百合に男が混じっちゃいけないからそっと眺めるに留めるけども……あそこにルーシーちゃんも突っ込めば、また別の色の百合になるかな。
僕?
僕は百合に擬装した薔薇だからダメだって。
あ、薔薇って言ったらおしりがひゅんってしたからやっぱ……見る専ってことで。
◆◆◆
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