52話 ユリア様――絶対に、離しませんわ(by 3人娘)
「……しまったのですわ……!」
「不覚……! まさかたった1日で……!」
「ああ、あの夜ユリア様の優しさに甘えてたらふく食べてしまった己が憎いのですわ!」
泥棒猫!
泥棒猫ですわ!
シーフですわ!
ルーシー様とおっしゃる方が――聞けば恐らくは同い年ということですけれども――ユリア様に、なんと丸1日どころか宿までお世話になったと!
「ええ、入浴まで共にしましたから女子であることは僕が証明します」
「ぴぃっ!?」
ルーシー様は――あれなら恋愛経験などないわたくしたちでも分かりますわ。
とたんに真っ赤な顔になり、汗をかき始め、顔を逸らしつつも必死にユリア様の袖を引いて――ユリア様は気づかれないのか、気づいてもあえて知らんぷりを決めているのか。
ともかくあれは……恋する乙女……もう堕ちている乙女の顔つきですわ……!
しかもなんですの!?
お風呂!?
お風呂ですの!?
ユリア様とのおふろ!?
まさか洗いっこなどという羨ま妬ましいこともされたのですの!?
ずるいですの!
ずるいですの!
わたくしたちは目を見合わせ――互いの気持ちが1発で分かりましたの。
――ですが。
「よろしくお願いしますわ、ルーシー様」
「今後とも、どうぞよろしくお願いしますの」
「ええ……仲良くしてくださると嬉しいですわ」
わたくしたちは、淑女。
たとえ名ばかりの貴族で実質平民だとしても、貴族は貴族。
貴族令嬢。
はしたない真似は晒しませんの。
この言葉づかいも含め、それくらいしかアイデンティティーが無いとも申しますわ!
ルーシー様は――お世辞にも、ぱっとしないお方。
だからこそユリア様が面倒を見られたのかもしれません。
けれど、そんなことをちらりとでも考えたわたくしたちははしたないのですわ!
聞けば貧しい出で、しかもわたくしたちとは違って家族から追い出されたと……!
そんなことを聞けば、お優しいユリア様のこと……面倒を見ないわけにはいかないのが瞬時に分かりましたの!
しょ、しょうがないですわ、嫉妬の心は同情心で塗りつぶしますわ!
「ぶわっ」
「悲しいですの……悲しいですの……」
「分かりましたわ!! わたくしたち、友達ですわ!」
「と、ともだち……えへへ……」
はにかむような口元――しか見えませんけれど、いじらしい仕草。
目元が見えないほどにぼっさぼさですけれども、ふにゃりとしたお口ともぞもぞしているお指が――――――
「なにこのかわいいの」
「ルーシー様と申すそうですわ」
「お持ち帰りしてもいいですの?」
「ええ、良いですよ?」
「「「やりましたわ!!」」」
「え!? ユリアさまぁ!?」
ユリア様……存外におちゃめ心満載なのですわ……!
「この子は身寄りもないも同然。なので……僕たちで、面倒を見ませんか?」
ユリア様は――1日ぶりでも、いえ、だからこそ余計にお美しく、さらにはなぜか少し困った様子が妙に母性を覚えさせるようになっておられていましたわ。
ええ……なぜか、こう、不思議と心惹かれると申しますか……!
「なるほど……そういうことでしたのね」
「ユリア様ですもの!」
「あれこそが、本物の侯しゃ――ごほん、貴族令嬢というものなのですわ!」
なるほど……すべて分かりましたわ!
ユリア様はきっと、デュクロワ家の――隠し子!
それも、かのお姫様――失礼、デュクロワ家の亡きお方、セレスティーヌ様と侯爵様の、秘蔵の子なのですわ!
髪の色、瞳の色からも、その血を受け継いでいるのは確実ですもの!
そうしましたらば、ご自身の出自を明らかにされないのも「できる限り内密に」とギルドでも言われていたのも――こうして哀れなルーシー様やわたくしたちを助けて回るようなことにも納得が行きますの!
ええ、セレスティーヌ様は幼い時分から町へ抜け出し、様々な騒動を起こされたとは、孤児から王室までも有名なお話ですの。
わたくしたちを助けてくださったように魔族の討伐をされ、孤児を助け――きっとまだまだこれから人助けのついでに、確実に騒動を起こしますの!
そもそもそれでしたらすでに――隠し子のはずなのにこうして町へ堂々と出陣なされ、すでに人助けを派手にやらかされているのにも納得しかできませんわ!
隠す気があるのかないのか――いえ、きっとあのお姫様のように、必要であれば躊躇なく晒してでも解決なさるのでしょう!
なにしろ手段を選ばないのが「アクヤクレイジョウ」というものなのだとは有名なことですもの!
「ぞくぞくして参りましたわね……!」
「ええ……!」
「ルーシー様? よろしければ、今夜から同じ宿で宿泊費を節約されませんこと? ――あ、ユリア様ももちろんご一緒していただきますわ? よろしいですわね? お嫌? ――――――――どうして?」
ですから、この縁を手放す理由はございませんの。
たとえウザがられたとしても――嫌われない範囲で、存分にへばりついて回りますの!
だってきっと、わたくしたちの領でも聞きます「灰被りのアクヤクレイジョウ」の歌の――第二バージョンの脇役になれるかもしれませんもの。
――もちろん。
わたくしたちの貞操と淑女としての命、人としての尊厳、そして身体の命を助けてくださったことは――ええ。
わたくしたち3人の一生をかけて、お返し致しますもの。
ずっとずっと――ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとお側に居られないと、叶いませんものね……?
◇
【シモーネ・レモーヌ・ジュモーネ3名に、それぞれ単独でのエンディングが追加されました】
【シモーネ・レモーヌ・ジュモーネの3名による BAD END/No.110以降が追加されました】
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