49話 しゅらば
「すぅ……すぅ……」
……はぁぁぁぁ……やっちゃったぁ……。
朝。
小鳥がちゅんちゅん楽しそうな朝。
窓を開ければ下に石畳の道が広がるし、空や町の景色も楽しめる良い部屋。
たまたま部屋が空いてたからなのか、こんな子供へサービスしてくれるレベルじゃない素敵な部屋だ。
だからこそ、ここをリピートするって決めてるんだ。
決めてるんだけど……。
「……すぅ……すぅ……」
「…………………………」
寝るときはお互いに気まずいからって別々に寝た――ルーシーくんだった存在がなぜかルーシーちゃんで、しかも女の子、しかも子供はトイレが近いからなのか、それとも宿に着く前からずっとトイレ我慢しててすぐに行きたかったのを僕が邪魔しちゃったせいか。
幼女の前で全裸になって入浴し、そのあとで服を脱がせてびっくりさせた拍子に漏らさせた――しかも至近距離で見て、しかもしかも至近距離で浴びたっていう大犯罪を犯したんだ。
もうだめだ。
僕は犯罪者なんだ。
幼い女の子を無理やり連れ帰って連れ込んで、我慢させて見せつけて目の前で粗相をさせたんだ。
僕の心はすでに法廷の前に立っている。
どうして……?
だって、「ぼく」って言ってたじゃん。
よく見れば孤児でも女の子はスカートなのに、この子はズボンだったじゃん。
僕が――なぜか悪いことをしたくなって女の子っぽくからかったら、男の子らしい感じに真っ赤になってたじゃん。
どう見ても男だったじゃん。
男だったじゃん……!
「……そうか、口元とかをもっと見れば……いや待て」
朝日に照らされる――寝相が悪いからか、前髪が広がっておでこまで出ている、少年だった少女を眺める。
幼い子供。
栄養状態が悪いのか、肌の調子もほっぺの膨らみも唇のかさかさもアレだけど、どんな角度から観察しても……この子、女の子だよね……。
なんで僕、昨日はこの子のこと、男の子だって思ってた?
「………………………………」
思い込みって怖い。
これからは逐一性別を確認――いやいやこんなのはレアケース過ぎる。
とにかく、やっちゃったもんはしょうがない。
物理的にも手を出しようがない年齢で良かったと安心しておこう。
これが、もっと歳を取ってから――お互いに中学生くらいの歳になってたりしてじゃなくて良かったと思うしかない。
いや、それだとさすがに胸とかで分か――あー、完全ぺったんこヒロインとか居る実績がある以上、こういう事故はゼロじゃないか。
けども僕は弱い男なんだ、鍵のかかった同じ部屋でお互い裸な女の子が居たとして、衝動を抑えきれるかっていう自身はなにひとつないんだ。
……よし。
責任は、取ろう。
この子は今日明日くらいに面倒を見た後リリースするんじゃなくって、もう家で、家からの予算を出してもらって、なにかしらの形で雇おう。
とりあえずは冒険者として安定した日銭を――あ、さすがに1日経てば復活してるだろうし、モブ子ズに対価を支払って育ててもらうのもありだな――稼げるようになるまでは育てる。
その後は情報提供という名目にしろ、屋敷でメイドとかしたいって言うんなら使用人としてにしろ、とにかく直接に雇用する。
昨日、安心させるために家名とか言っちゃったし、この子がそれ覚えて「デュクロワ家のぼんくら女装ぼんぼんに裸にされていたずらされたんです……」って言って回られたら、僕の原作開始までに発生しする反乱革命斬首フラグが立ちかねない。
それは困る。
いずれ女装はバレるだろうし、そこからはゴミを見るような目で見られる存在にはなるはずだけど、そうされても問題ない地盤ってのがまだないんだから。
少なくとも養育費程度ではあっても生活の支えを渡し続けているあいだは黙っててくれるだろうし。
この子は良い子だから……や、良い子だからこそうっかり言っちゃいそうなのは不安でしかないけども。
「………………………………」
……にしても。
この子から至近距離であったかいのを浴びせられたとき、頭の中で誰かが何かささやいた気がしたんだけど……うん、きっと気のせいだ。
幼女を怖がらせて漏らさせた驚きと罪悪感のせいなんだ。
なにしろ僕は正真正銘前世一般男性女尊男卑刑法で生きてきた小市民メンタルしか持っていないんだから。
◇
「……あら」
「ほう……」
「ふーん……」
「……というわけでして、こちらのルーシー様と宿を共にしていまして」
「は、はいぃ……」
気まずい朝のことは忘れ、僕たちはモブ子3人組の宿へ。
ルーシーくんを――じゃない、ルーシーちゃんを待たせて部屋を訪ねたときは妙に懐いてくれてたのに、「紹介したい子が居るんだ」って言った瞬間に真顔になってたのが怖かった。
なんでだろう……この子たち、特段人見知りするどころかむしろそういうのは得意そうなのにね。
「……ユリア様手ずから、丸1日どころか……」
「はい。どうせ宿は個室ですので、子供1人には広すぎますし」
「――体は拭き合いっこされたんですの?」
あれ?
なんか寒気がする。
カゼ引いたかな……?
「いえ、桶に湯をもらいまして順番に入浴――」
「え、一緒に入りましたよね?」
「「「………………………………」」」
ちょ、ルーシーちゃん!?
素直過ぎるのはえらいけど良くないって言わなかった!?
「そ、そうですの。で、でも、わたくしたち――」
「――ユリアさま、キズひとつない真っ白なお肌でとても綺麗な体でしたよ」
「「「………………………………」」」
「ルーシー? 少し静かにしましょうか」
「はい! ユリアさま!」
なんかモブ子たちが真顔になって見てきてるからやめよう?
ていうかなんでこの子たち、こんなよく分からない反応になるの?
あとルーシーくんじゃないルーシーちゃんも、さっきまでこの子たちのこと怖がってたくせに、今は堂々とっていうかむしろ勝ち誇った顔してるの?
「……ユリア様?」
「は、はい、何でしょう」
怖い。
「そちらの宿のこと」
「詳しくお聞かせ願えますの?」
なんで急に声低くなってるの君たち……?
「え、でも」
ずいずいずい。
3人娘が取り囲んでくる。
あ、近くで見ると普通にかわいい。
僕は普通なかわいさに弱いんだ。
「ギルドへ伺う前に、そちらの宿の方と少々お話を」
「ええ……大部屋があるか尋ねたいのですの」
「大丈夫ですわ。わたくしたち、根性だけはございますの」
なぜか3人のうち2人に両手を繋がれ、ちからづくで振りほどかないと逃げられなくなり。
1人はルーシーちゃんとすっごく仲良さそうにきゃっきゃしながら宿に連れてかれ。
そして、ちょうど入り口で掃除をしていたおばさんとおじさんに遭遇し。
なぜか意気投合されて、もっと上の階の大部屋へ移動することになり。
なぜか5人で1週間――僕が家に帰るまでの期間、まとめて借りることになった。
……なぁんでぇ……?
◆◆◆
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