46話 ぼくを救ってくれたお姫様(by ■■■■/ルーシー)
「………………………………」
ぼくは、物心ついたときからほとんどの人にいじめられてきた。
だから、怖い存在がどこにいるのか、どこを見てるのかが分かる。
そのおかげか、街道や森を通るときにも――うろついてるモンスターを遠くから見つけて遠回りをして。
途中ですれ違いそうだった、見た目は優しそうだけど怖そうな行商人の人とか冒険者の人からも隠れて。
そうしたら――
「……ついたぁ……」
――空までそびえている、石の壁。
町に、着いた。
◇
「お、――の村のやつか」
「この地図に書いてある『よろしく』って字、見覚えあるぞ」
「坊主、苦労したな……これでも食え」
恐る恐るで人の居るところまで行った僕は、長い槍を持ったお兄さんとかおじさんとかに囲まれたけど、思ったよりみんな優しかった。
「町の人は怖いしすぐ騙してくる」って、お母さんが言ってたのに。
「しかし、口減らしか」
「かわいそうになぁ」
「坊主、良いか? 愛想が良けりゃ路地裏の孤児たちの仲間に入れてもらえるだろうが、まずは冒険者ギルドへ向かえ」
「ギルド……?」
「ああ、登録さえすりゃあ、仕事がある。お前さんは農家の出だろ? それに村からここまでモンスターに食われもせずにたどり着けたんだ」
「だな、町で生まれた貧相な孤児たちとは違って体力がある」
「あと、生きてたどり着けた幸運もな」
……よく分からないけど、村とは違って、町では人のお手伝いをするとおこづかいがもらえるらしい。
がんばれば、毎日でもパンが食べられるんだって。
村じゃお手伝いするのが当たり前で、しないと殴られたのに。
……ここなら、毎日殴ってくるお父さんも、いやみを言ってくるお母さんも、いじめてくるお兄ちゃんたちも、いじわるな人たちも居ないんだ。
「……ぼく、がんばる」
そうだ。
ぼくは、産まれるはずがなかったのに産まれてきた。
できそこないでも、産まれてきて――まだ、生きているんだ。
だから、ここでがんばろう。
◇
ぼくはダメみたいだ。
「おうおう、坊主ぅ! なんとか言えよ! ……こ、これ、恐喝ってのになってないよな……?」
「大丈夫だ、お触れの金平糖ワードってのに引っかかってないはずだ」
すごい建物。
ギルドハウス。
ここに来ないと、お仕事がもらえない。
けど、入り口に怖い気配がある。
うろうろ迷ったけども、お腹が空いてくらくらしてるぼくは――お父さんに殴られるよりは怖くないって思い込んで、入ってみた。
けども、やっぱり怖い人たちにいじめられはじめた。
いや、なぜかいちいちひそひそ話してるし、殴ったりしてこなさそうだからお父さんよりは怖くないけども。
「とにかく坊主、俺たちのために働いてくれるよなぁ……?」
「大丈夫だ、ちゃあんと言う通りにしてくれりゃあ、寝床と食いもんはどうにかしてやる」
「いや、けど、こんな子供を食い物にするのはなんだか……」
「ばっか、軌道に乗るまでは面倒も見てやんだよ。初期投資ってやつだ」
「ひゃひゃひゃ」とか「ひゃっはー!」とか、怖い鳴き声の人たち。
……ぼくは運良く町にはたどり着けたけど、もうダメかもしれない。
そう思ってたら、なんだか涙が出そうになって。
――――――そんな、とき。
聞いたこともないような――年に1回のお祭りの日にやってくる吟遊詩人の綺麗なお姉さんみたいな、けれどももうちょっと幼い声が、輝いた。
「……こんな朝っぱらからギルドの入り口でたむろして、また脅して回って。ヒマなんですか?」
「あぁ゛!? ガキが、何を――――――あっ」
「み゜っ」
フードを被った……たぶん、ぼくと同い年くらいの子供。
絶対に怖い人たちよりも年下だしたったひとりなのに、なぜかこの人たちは怯えていて。
そんな彼女は、ぼくに気がつくと――あれは、吹雪が収まった冬の日に見渡す限りに積もった雪が青い空とお日さまに照らされて、とっても綺麗に輝いてた――あの色の髪をした子に、出会った。
「――――――! わぁ……」
輝いている銀色の髪の毛に――吸い込まれそうな、真っ赤な瞳。
――吟遊詩人の人が歌ってた、お姫様の見た目、そのものな子。
お姫様。
ぼくが、どんなに綺麗なんだろうっていつも寝る前に思ってた存在が、ぼくを見てきていた。
けど、ぼくはバカだから。
だから、せっかくお姫様が助けてくれて、案内してくれた先で――お姫様と知り合いらしい綺麗な女の人から言われたことが、さっぱりわからなくって。
そしたら、お姫様が、また――助けてくれて。
けど、そこでぼくに名前が無いって知られて。
――お姫様も、名前すらもらえない、ぼろだし汚いしできそこないなぼくのこと、めんどくさいから嫌がるんじゃないかって思って。
そう、思ったのに。
「――――――ルーシー」
「……え……?」
「――嫌でなければ、ルーシーと名乗りなさい」
名前がないと不便だろうから、って。
「――――――………………………」
――名前。
ルーシー。
ぼくの、ぼくだけの名前。
ぼくの下のお兄ちゃんもそうだったけど、村でもきょうだいがたくさん居るところは下の子たちに名前がなかったり、適当なのしか着けてもらえない。
だから、それが当たり前だった。
――「できそこない」が、ぼくの名前だった。
なのに――素敵な名前を、お姫様が考えてくれて。
それを、こんなぼくに――くれたんだ。
「……なまえ。ルーシー。はじめての……なまえ。はじめての……」
何回も何回も、絶対に忘れないように、かみしめるようにしてしゃべってると――悲しいわけじゃないのに、なぜか涙が止まらなくって。
その涙は、いつもの冷たくて悲しいものじゃなくって。
あったかくて、嬉しすぎてのものだった。
◆◆◆
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