28話 モブ子たちとレッツ初心者パーティー
「わたくしたちですの? もうじきこの町を後にするつもりでしたわ」
「そうなんです……の」
「……ご無理をされなくともよろしいですわ」
「ええ、恩人ですもの」
「そもそも淑女が『僕』と……そういうのもあるのですわね!」
「なぜか言葉にできない気持ちがこみ上げてきますわ!」
「……そうですか」
なんかこの子たちのお嬢様オーラが出るしゃべり方が移りかけてたからか、ぽろっと「僕」って言って一人称がバレた。
こう、ね……「ですわ」って怖いんだよ……気がつくと僕まで使い始めてて、だから演技してたのが剥がれたんだ。
……これ、世界の修正力的なのでメス堕ちスイッチ入ってない?
こわぁ……危うく気がつかないうちにメス堕ちルート入るところだった。
んでどう考えても色々ある僕のことを気にしないでいてくれるらしい彼女たち……ヒロインかな?
ヒロインだったね……3人まとめてのモブ扱いだけども。
たぶん個別エンドがなくって、あったとしても3人セットでだけども。
あと、恩人と言葉づかいのどこがどうやったら接続するのかはさっぱりだけども、3人とも男爵――貧乏すぎて、むしろ完全に平民な女の子たちだった。
領地とかしょぼいとことか名目上の爵位ってやつらしく、やっぱり生活が厳しいとか。
中世って大変だよね。
分かる。
僕も将来、人類圏を裏切るかもしれない辺境伯の次男だからさ。
生きるのには大変に苦労しているよ……転生2日目なのにね。
なんで女装の日々がこんなに濃いんだろうね。
気苦労が多いからかな?
具体的には死とメス堕ちの二者択一っていうね。
「大丈夫ですの! そのおかげで平民よりは高い身分として振る舞えますし、いろいろな制約も、ある程度なら爵位でごり押しできるのですわ!」
「実家にお金も土地もございませんけれども……」
「なんなら縁談もありませんので、冒険者稼業は将来のお婿様捜しでもございますわ! 平民相手だろうと有望株ならなんでも良いのですわ!」
とのことは、7歳女子たちの言(前世換算6歳・年長さん~小1)……いやぁ、世知辛いし、たくましいね。
魔法が使える時点で平民の成人男性並みの戦闘力があるからこそではあっても……いやぁ、僕の前世の7歳児のときとの精神年齢の差よ。
あと、この子たちはサブキャラだからそこまで――ジュリオン様たちメインキャラとは違って、いくらか顔立ちが安心できるところがある。
……うん、エミリーちゃんも脳内でエミリー「ちゃん」って無意識で呼んじゃうくらいにかわいいからね……そうそう、こういうのが良いんだよ、クラスで目立たないけど普通にかわいい女子枠が。
それに比べてのモブ子「ズ」だからね。
目立たないって言っても前世の僕的には――うん、たぶんそれでも階層が違う顔の偏差値ってやつだからね――こういう発想ができる程度には辛かっただろう前世の僕。
大丈夫、今世はジュリオン様だから。
男のままなら女性とお嬢様方に好かれ、女装すると男にも好かれる……おげぇぇぇぇ……び、美形ではあるから……。
しかし。
ごとごとごとと揺れておしりを突き上げてくる木の床に、前から漂ってくる獣臭。
馬車。
ダンジョン直行の、乗り合いの馬車に乗って数十分。
……ああ、こういうとこでも格差。
僕が屋敷から近くまで来たときのお抱えの馬車は乗り心地、すっごく良かったんだって実感する。
やっぱりお金は大事だね。
「……みなさんは、ずいぶん慣れているようです……ねっ」
おしりから突き上げられる衝撃。
あ、舌噛んだ。
もうやだ。
「かわっ……! こほん。ええ、馬車でいくつかの町とダンジョンを巡回しているんですの。同じような依頼は枯渇しますので」
「ぎゃわっ……! ですの。あまり同じ依頼を受けすぎても、その……同格の方々に要らぬやっかみを……」
そして噛んで痛がってる僕に気がつかないフリをしてくれる気遣い。
これが……中世貴族の7歳児だ。
「わたくしたち、戦闘力は正直……ですので採取など、駆け出しにとってはそこそこおいしい依頼を優先していますし」
「ですが最近はようやくに、先のダンジョンを往復できる程度は。罠やアイテムを駆使してなんとか、ですわ!」
「でも魔族に絡まれたのですわぁ……」
「うっかりスラム街に迷い込んだとき以上の恐怖でしたわぁ……」
「あー」
うう、涙ぐましい……強く生きてね。
あとLUK値の低さが悲しいね。
やばい……メインヒロインのどの子よりも普通だからこそいじましい……。
………………………………。
彼女たちモブ子ズの、まるで三つ子のような雰囲気を眺める。
顔も髪色も違うけども、なんか妙にセットになってる女の子。
……名目上で良いなら、結婚相手は誰でも良いはず。
もし結婚とかする年齢――ゲーム的なアレの都合上、エンディングを迎える3年生の終わり、すなわち卒業シーズンになってもしょんぼりしてたらお妾さんとして迎えてあげよう……。
あくまで僕が生きてたらって前提で、かつ、あくまで生活費と名目貴族を援助するだけなら……良い人見つけたら僕が悪役になって破談すれば全部解決だから……大丈夫、ジュリオン様フェイスは悪役顔だから……。
そんなわけで僕たちはこの前来た――ではなく、似たような場所の似たようなダンジョンへとたどり着く。
「人気のダンジョン周辺には市が形成されますの」
「遠方のダンジョンなら定期便の到着先に小規模のものが、ですの」
「割高ではありますけれども、特にわたくしたちのように駆け出しで体力がなかったり、ある程度稼いで出入りする回数で結果的に儲けが出るパーティーなどもございますの」
「ダンジョン前のテントに泊まりますと相対的には儲かりますわ! ……子供や婦女子は控えた方がよろしいと思いますけれど。その、治安的に……」
おー、さすがは叩き上げ。
そうそう、こういうのを聞きたかったんだよ。
……あんのおじいちゃん、どうやら中級者以上のあれこれを教えてくれてたみたいだしなぁ……いや、ないのに比べたら全然だけど……。
「あの、ユリア様……もしよろしければ、もう一度、フードの中を……」
「? 先のダンジョンでは入り口でプレートを見せるだけで良かったはずですが」
「あ、はい、そうなのですけれども……その……」
「こっそり、もう一度拝見したいなぁと……」
「む、無理にとは申しませんわ! でも……」
……男ってばれてる――わけじゃない、よね?
まぁバレてても恩人だからってことで秘密にはしてくれるだろうし、どうせ学園編始まる10年後にはバレるんだし、別にいいか。
――ばさっ。
「ふぅっ」
あー、蒸し暑かった。
普通に過ごしてる分にはなんともないけども、ローブ――あれだ、革と布でできたレインコートだ――ってば風も通らなくって湿度がなぁ。
……夏になる前に、真っ先に新調すべきは通気性の良いローブだな。
髪の毛をばっさり切っちゃえばだいぶ楽なんだろうけども、それやると女装するのにカツラかぶってもっと暑くなりそうだし。
「 」
「……!! ……あ、ありゅがとうございましゅ……♥」
「お気をお確かに! ときめく気持ちは分かりますの!!」
ばさりと戻す。
……やっぱり目立つ?
あと美形過ぎる?
うーん……これ、やっぱ昨日考えたように灰でもかぶった方が良いっぽいね……せめて髪だけでもきらきら光らなければ目立ちはしないはずだし。
けど、やっぱ移動に時間が掛かるな。
あとおしりが痛い。
おしりが痛いって想像するだけでひゅんってなる……だってメス堕ちルートあるもん。
……ゲームではファストトラベルがあったし、移動系の魔法もあるはず。
ギルドとかで聞いて……いや、そんな貴重すぎるのはそうそう教えてもらえないだろうし。
かといってできるかどうかお試しでやって石の中に出現とかしたら終わるし。
……とりあえず、来月に来るはずの家庭教師の先生に託そう。
ジュリオン様のおしりは、とっても大切だから。
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