27話 モブ子ズとわくわく初心者講習
「初等級――Gランクは、かなり幅がありますの。それこそ平民の孤児で、戦闘適性のない方でも可能な内容――その日暮らしのパンとミルクを手に入れる最低限のG-からですわ」
「子供でも、ちょっとがんばれば屋根のある大部屋でなんとか寝泊まり可能ですの。ええ、真面目にやれば」
「その真面目が大変ですの……特に殿方は野宿でも平気な方もいらっしゃるので、1度怠けると……と聞きますわ」
ふむ。
ここもゲームと同じくランクはGからSSS、んで各ランクにも幅があって、ゲームでは表示されてたステータスみたいに「G-」、「G」、「G+」って進んでいくのね。
ああ、ステータス。
あれがあればとても楽なのに。
異世界転生転移者の誰もが憧れる、ステータスがあれば。
「G-でも、明らかな犯罪者などは登録してもらえませんの」
「わたくしたちも最初はG-用の依頼でがんばりましたわ!」
「寝床は馬小屋……それでも外で身の危険がないだけマシなのですわ……」
「町の中での失せ物探しに数時間の店番、荷物持ち、雑草抜き……おこぼれもありますし、顔馴染みもたくさんでいざというときの伝手になりますの!」
「むしろ町中の依頼の方が疲れませんしおいしいのですわよ? ただ稼げませんけど」
「代わりに危険もありませんので、体調の悪いときはありがたいですの!」
「ほんの十数年前、王都で当時のお姫様が考案されたと言われておりまして……」
ああ……本当に最低限の社会保障。
この時代でも、ゲームの運営がそれっぽいワードを1個でもどっかに入れててくれたんだろう、たとえるなら前世であった日雇いの仕事――マイミーみたいなののアナログ版。
まぁ昔の町とかもその日その日の仕事で生きてた人たちがたくさん居て、ここみたいに張り出したりしたのを我先にと争ってたらしく、どんな時代でもそこまで変わらないんだろうけども。
冒険者って……なんだろうね……?
店番が冒険……まぁ冒険で良いか。
けど、それ良いね。
ダンジョン以外でも町中で小遣い稼ぎついででこの世界の常識を知れて、顔馴染みを作れる。
エロディーさんにレベルをもらったし、ダンジョンでの戦闘はほどほどにして子供らしくおつかいに奔走して行こう。
社会保障として本当に優れたやり方。
一体誰が考えたんだろうね?
「こほん。それからG――ランクはともかく、次の等級ぎりぎりの、適性もあってある程度の鍛錬もしてダンジョンでそこそこ慣れているG+の方が受けるべきものまでございますの」
「このあたりから町を出て数時間、あるいは馬車での往復の日々ですわ!」
「その辺りも担当の受付の方に……はい、ユリア様でしたら問題ないかと」
お、僕の想像する冒険者はこのへんからか……うん、確かにピンキリだね。
「……でも。あの魔族……やはり倒した報奨金とランクは受け取るべきかと……だって、快挙どころの話では……」
「もったいないですわ」
「高潔で腹は膨れないのですわ」
「最低限の依頼の最低限のパンは……もそもそぽそぽそでお味の方は悲しいのですわ……」
あ、まずい。
なまじこの子たちが普通に良い子で普通の常識の範疇で考えるからこそ、まずい。
何か対策を……!
「――私は……当主、の予備としてふさわしい実力を、1から着けろと言われまして。そう、家訓で。そのための武者修行なのです」
「で、でも、すでに実力が――」
「初めて外に出たばかりの貴族令――嬢が、いきなり、低位とはいえ魔族を倒した。……仮にギルドに信じてもらえたとしても、実家からは信じてもらえませんし、『ただの偶然で実力ではない』とはねのけられるでしょう」
「……それは……」
「そうですけれど……」
「実際、相手が侮ってくれたから無警戒だったのもありますから。ですので、私にとって実家の方面を考えますと、むしろ厄介なんです」
まぁ実際、あのおじいちゃんとかならボケてるから信じてくれるだろうけども、これが父さんとか兄さんなら「本当に、このわがままボーイが……?」ってなるだろうし、とっさの言い訳ではあるけれども嘘ではない範疇のはず。
「それに、冒険者も兵士もかなりを動員したとのことで、ギルド側の負担も大きいでしょう。私はソロで活動していますので、ダンジョンの稼ぎも独り占めできます。……報酬は、動員された方々へという方が正しいと思います。それで足りなければ……」
んー。
「……どうしてもという方には、お昼をご馳走してもらえたら、それで満足です。ええ、気が済むまで何度でもお付き合いいたしましょう」
「……!」
「ユリア様……!」
「きゅんっ……」
困ったらとりあえず笑って小首をかしげる。
なんでそうしてるかは分からないけど、女の子はかわいいだけで得する生物だから本能的にやってるのかもね。
……いやいや僕は男だ男……まずい、すでにメス堕ちの前兆が脳髄を侵食してきている……!
それはさておき、魔族討伐を内々で処理して欲しいっていうのは事実。
なにしろ大事になってたからね……まぁ動員までした原因は、先に帰っちゃって酒盛りしてた僕なんだけど。
それも込みで、将来にするか分からない「お願い」を聞いてもらうだけにしたんだし。
あんまりせびると「じゃあ僕の捜索に充てた動員分の代金は……」とか言われちゃいそうだし。
なあなあの関係って良いよね。
人間関係において最強だ。
あと、前世学生と社会人的な記憶のどっかから持って来た「飯おごってよ、それでチャラってことで」っての、言ってから良いアイデアだなって。
お昼なら大した金額にもならないし、この子たちと定期的にお昼すれば情報も入ってくるし。
さすがジュリオン様ブレイン、頭の回転がすごく良いね。
「……なるほど、その手が」
「あんなにすごいのに……」
「なんて謙虚なお方……!」
よし、納得してもらえたらしい。
……良かったぁ、この子たちがメインヒロイン、ないしメインキャストたちじゃなくって。
だってメイン張るだけあってみんな……その……個性が大変に豊かで、絶対こういう会話で納得してくれないし、たったの1ワードでスイッチ入っちゃったりするから……。
そういう意味でもエミリーちゃんは癒やしだ。
主人公くんの真横にずっといて、なにがあっても全てを受け入れてくれるからね。
だからこそ――ジュリオン様の事情を知らない初見ユーザーからは、そんなエミリーちゃんをことごとく罵倒して奪い返そうとする彼が悪人にしか映らないんだけども。
まぁそんな彼らもエミリーちゃんルートの派生フラグでメス堕ちするジュリオン様見せられて、もれなく性癖を打ち砕かれるんだけどね。
「……承知しました。ご事情も分かりましたし、今後、恩人のお決めになったことに口出しはいたしません」
ようやくに納得してくれたらしくて、ひと安心。
あ、でも、
「……ああ、あと、あの魔族は……そうです」
普段の戦闘力がどのくらいかまだ分かってないんだから、
「庭師に教わった罠を駆使してるうちに、運良く変な罠に引っかかって爆発四散したので、本当にあの惨状は私の力ではないんです」
とにかくあのサキュバスを貶めておかないと。
「低位で馬鹿な魔族が油断と隙しか無いところに、貴女たちという獲物を見かけてもっと馬鹿になり……攻撃しながら回避したらひっくり返って蠢いていたところを爆発四散したので、ええ」
なんかエロディーさんがとんでもないぽんこつに仕上がってしまった。
まぁいいや。
ちょい嘘だけども、この子たちが実家に帰って話を広めるとマズいって気が付いたから嘘も混ぜておく。
ま、まあ、未来の知識とジュリオン様ボディでのハメ技なんて、あれ1回ぽっきりだし……。
「そ、そうなんですの……」
「まるで夏の終わりの木陰みたいなことに……」
「ユ、ユリア様がそうおっしゃるのでしたら……」
よしよし、こっちも納得してくれた。
僕も、ちょっとは強くてもまだ初心者の域を出ない実力。
こういう認識じゃないと、冒険初心者な今を楽しめないからね。
僕は強くなるのが目標だけども、こうして地道に1歩ずつ進んでいくのが好きなタイプなんだ。
さぁて、次はダンジョンかな?
◆◆◆
「男の娘をもっと見たい」「女装が大好物」「みんなに姫扱いされるジュリオンくんを早く」「おもしろい」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。




