23話 モブ子ズが現れた!
「昨日ぶりでございますわ眠いですわ」
「実に12時間ぶりでございますわ疲労と安堵で死にそうですわ」
「この度は命をお救いいただき本当に感謝していますわ眠いですけれども」
「……怒っています?」
「「「怒っておりませんわ♪」」」
おー、ハモってる。
にしてもよく似た顔と髪型と髪色と声だなぁ……さすがは準モブ、サブヒロインズ。
で、聞くところによるとそれぞれシモーネ・レモーヌ・ジュモーネでいずれも男爵ないし一代限りの騎士の娘らしい……いや名前覚えにくいよ!?
もう3人まとめてモブ子ズとかサブヒロインズとかで良いよね……?
だめ……?
とりあえず「モブ子ズ」で。
別にモブじゃないけど、なんかモブっぽい組み合わせだし。
こういう便利な子たちってのは、ニッチな需要があるんだ。
「……こほん、改めまして貴女には感謝しておりますの」
「「おりますの」」
怒りを鎮め、席を立った彼女たちは――1秒のズレもなく、1ミリのずれもなく、綺麗なカーテシーを披露する。
おお、さすがは貴族のお嬢様方。
たとえ下位貴族でも――いや、だからこそ、こういうところは徹底的に教え込まれているんだろう……たったの7歳なのにね。
ていうか改めてこの世界の価値観がバグってる。
下手すると園児から完全に自己責任の世界って……。
貴族ですら多産――たぶん病気とか魔王軍の侵攻でぽこぽこ生まれてぽこぽこ死ぬ世界だからか、長男以外の価値が低いんだろうねぇ……。
だってほら、次男のジュリオン様ですら放置気味だったし。
まぁまだ7歳だってのと――自分から町へ来て冒険者になった僕は、たぶん家の方針で家を出されただろうこの子たちに比べたら、相当にマシではあるけども。
私立小学校のお受験とか、そんな生ぬるいもんじゃないね。
「ええ、わたくしたちでは到底敵わず……今ごろは魔物の苗床となる運命と、この世界そのものを呪っていたでしょう」
重い重い、数えで7歳児が言うセリフじゃない。
「そしていずれ来てくださると期待するしかない猛者により――たとえ救われるも体は子を産めないか、産めてもすでに人類の敵たる魔物にその身を犯された苗床の噂が広まり、嫁のもらい手がなくなり、修道女になるのが最良の未来になっておりましたの」
やめて……そういう話、精神的にはすっごくもろい男は耐性無いの……しかも僕、現代人……。
こういうのって、なまじ自分たちの方が常に危機に晒されてる覚悟があるからか、女性の方が平気な顔でするよねぇ……男には無理だよ。
けども、あー。
この世界、設定的にはえぐいからねぇ……そういう要素があるからこそ薄い本が捗ったらしく、祭典ではやはり盛り上がってたけど。
やはりエロは強し。
ちなみにサークル数は「ジュリオン様≒その他ヒロインたち」と圧倒的だ。
こんな設定がある世界で、最大100人を超えるヒロインたちと重婚ができて。
サブキャラもモブも大量に居てそこそこにストーリーも良い。
ヒロインたちは実に幅広い性癖にクリーンヒットする見た目にそれぞれの重くも歯ごたえのあるストーリーにゲーム性。
……それでも薄い本の市場は、ジュリオン様ただ1人≒ほぼ全てのヒロインたち(モブ子たち含む)。
それはほぼ、女性需要≒男性需要ってことで。
ふふふ……まだ消えてないだろういくつものメス堕ちルートが恐ろしいね。
今から膝が震え、股ぐらがひゅんっとなり、おしりがきゅっとなるね……こわい。
ああそうか、これがこの子たちが感じていた恐怖……なるほど、ちょっと女性の心理が理解できたよ。
前世では少なくとも社会人まで出ても凡人の男としての価値観しかなかったところに、ちょっと強い女性としてのマインドがインストール。
少なくとも13年後までは女装令嬢するからね、今のカーテシーも練習しておこう。
「――そんなわたくしたちを救ってくださいましたのが、ユリア様です」
「この恩義は返しても返しきれず」
「可能であれば、ご実家へも直接にお礼を」
と、ここで初めて声音が普通の女の子に戻る。
「ひとまずは後日実家よりまとまった金品で……ユリア様のご実家からすればはした金でしょうけれども、これがわたくしたちの精いっぱいですわ」
「わたくしたちの命と等価以上のお礼をと、お父様、お母様に頼み込みますわ」
そう言うと深々と頭を下げたままの、下級貴族のサブ・モブヒロインたち。
うん……苗床になると早くて数十日で体力が尽きて死んじゃうっていうからね、体力的にも。
それを思えば、まさにあれはドンピシャだったわけだ。
ましてやこの子たちは子供――いくらレベルと魔力で肉体そのものが強化される世界だとしても。
ちなみにそういうのの定番の苗床は、男女関係ない。
だからジュリオン様がってのも結構あったとか……やめよう、なんだかお腹が痛いし寒気がする。
けども、あれはたまたま運が良かったから。
僕としては、そんなことよりもエロディーさんを倒せたのが嬉しかったから、正直なんにもいらないんだけど……それだと納得しないよねぇ。
あと、エロディーさんっていう「魔王ルートの起爆剤」の存在が確定したことで、この先のいろんな未来がほぼ訪れるし、僕の運命が過酷って確定したのも分かった。
でも、なによりも。
「この世界の価値観的には――さらに貴族的にも、このお礼を受け取らないのは致命的な齟齬」。
繰り返せばいずれ、間違いなくコミュニケーションで致命的なミスが起きる。
そうなんだ、今世の僕は貴族令嬢――ではなく令息。
だから、それに見合った言動を選択しなければ――少なくとも僕の正体を薄々とでも知っている人からは、違和感を持たれる。
違和感を持たれるとどうなる?
ジュリオン様が登場しないで人類が滅ぶルートに入る。
……そう思うと怖すぎてミスひとつすら大反省だなぁ……。
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