16話 ギルドのテンプレは社会人マナーで回避
……いやー、カルチャーギャップならぬワールドギャップを初めて経験したなぁ……。
いやまぁ魔法とかいう攻撃をぶっ放した時点で、魔法とかない前世とはもう切り離して考えられるようにはなってるけども。
しかし……孤児かぁ。
僕の前世の記憶でも、その社会で親の居ない孤児は一定数居た記憶があるから完全なギャップじゃないけどなぁ……。
町の外の街道を移動してると確率で魔物か魔族に襲われるこの時代なら、あと農村なら普通に家の中まで襲ってくる存在が居るこの世界なら、もっともっと数が多いのは当たり前。
しかもこの領は対魔族の最前線――全部撃退できてるとはいえ、やっぱり頻度は多いよね。
そして世界観は中世……うん、そりゃあわらわらと居るよね。
まぁ周りの反応を聞いてる限り、珍しくはないけども野良犬にかまれるよりはずっと諦めのつきやすい災難扱いっぽいし……やってもせいぜいがこそ泥程度なんだろうね。
犯人が大人でない限り、そこまでは警戒しなくていいんだろう。
肉体に危害を加えてくるわけではなく、ただの盗み程度。
きっと孤児たちもそのへんを理解してるんだろう。
……理解してないと速攻排除されるまでがセットで。
衛兵さんたちだって子供を無闇に捕まえたくはないだろうし、子供たちもまた無闇に捕まりたくはない。
そんなわけで、お互いと一般市民たちの妥協点がスリとかなんだろう。
……うん、僕の、もらったばっかのお財布もしっかり隠しとこ。
や、よっぽどの手練相手じゃない限り、このジュリオン様ボディのスペックで盗まれることはないだろうけどさ。
ほら、徘徊爺さんも言ってたじゃん?
「新兵になったばっかの兵士程度には動ける」って……ん?
ちょっと盛っちゃったかな?
まぁここは「自衛はなんとかできる程度の実力」って意識しておこうっと。
◇
「おうおう! 坊主――いや、嬢ちゃんか?」
「………………………………」
「……あ、えっとな、近頃は……なんだっけ?」
「こんぷらだよこんぷら。ほら、あの姫さんが広めたっていうやつ」
「そうだ、金平糖だ! それがあるからせめて男か女かだけ言えや!」
「……お――んな、です」
……なんだこいつら。
「かわっ!? ――コホン、そうか、嬢ちゃんか! ここは冒険者ギルド……嬢ちゃんが好奇心で入って良い場所じゃねぇんだぜ!」
「ひゃっはー! おいたをする子は身ぐるみ――剥いだりはせず……えー、素直に所定の身代金を衛兵立ち会いの下で預かりの上、確かな衛兵たちに護衛させながらお家に返すから素直になりやがれー!」
「これ、守らないヤツら、マジで炭鉱か娼館か突撃兵送りだからな……マジこえぇ」
「子供ですら冒険者登録できるようになったが、逆に言えば1度登録しちまえば、刑罰も大人並みだ……悪いことは言わねぇ」
すわテンプレ、ギルドに入った途端に絡んでくるうだつの上がらないチンピラさんかと思い、実はうきうきしてた僕。
まさにザ・チンピラさんって3人組が入り口入ったとこにたむろしてて、新参者の僕を見つけるやいなやがたがたと立ち上がってメンチを切って――来る前に使い古した紙を引っ張り出して事務的な宣言。
……けど……あの、ねぇ……今世の母さん?
あなた、ほんとやり過ぎじゃないです?
おかげで僕の体験したい異世界テンプレその11がないなったんですけど?
いやまあ、余計な争いを起こして面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁だけどさぁ……。
ちなみに。
道中うんうんうなって考えに考えを重ねた結果――男と疑われないよう、声も頑張ることにした。
さすがにぶりっこは鳥肌が立つし自称成人男性な精神年齢にダメージ入るからやらないけども、あれだ、普通に礼儀正しい女の子ってことで。
うん、そもそも変声期前どころか園児or小1程度の子供だし、ちょっとだけ高くすれば男か女かなんて分かんないし。
無駄な争いは回避するに限る。
そのためには多少の演技は必要。
社会人としての基本的なマナーだよね。
ほら、相手が上司ならどんだけつまんないこと抜かしても笑い転げるとかさ。
そんなわけで、僕はチンピラさんたち――じゃないね、普通に良い装備身につけてるし、首元のプレートってやつもあるし……あと、ギルド内の人たちが普通にしてるから普通の対応なんだろう。
「……ご心配、ありがとうございます」
だから僕も「そういうのも分かっている都会の人間ですよ」アピールを。
あ、けど、長く滞在するならチンピラさんたちもとい優しい人たちにお世話になる可能性もある。
……うん、どうせそのうちバレるしな。
なら。
「……でも私、大丈夫ですから」
「うぉっ!?」
「ぎゃわっ!?」
「……お、おう……邪魔して悪かったな……あ、いや、悪うございました……?」
「普通で良いです。普通の子供冒険者として接してください」
軽くフードを持ち上げて彼らだけにちょっとだけ目元と前髪が見えるようにし――ほぼほぼ怒った顔か無表情しかしてこなかっただろうジュリオン様フェイスを営業スマイルに。
で、思い出したからエミリーちゃんスマイルで小首をかしげ、無害アピール。
ふむ、どうやら僕の前世で獲得した社会人としてのスキルは異世界転生後も保持されてるね。
「ね?」
テンプレ的に突っかかってくれないならもう良いので、お互いに距離置いておきましょう?
そんな気持ちを込める。
実力行使に出てくれたら今の戦闘力とか分かるからありがたいんだけども、それはそれで面倒なことになりそうだしってあいまいな気持ちで。
「 」
「 」
「……ああ、分かった……他のヤツにも言っておく……」
ふぅ。
僕が彼らの横を円滑なコミュニケーションで通り過ぎると、途端に僕への視線の数が激減。
やはり彼らが門番的な存在で、新入りがそこを通過できるかどうかで仲間入りが決まるんだろう。
好意的に解釈するとそうなる感じ。
でも……僕的にはやっぱり「あいたたた」ってなりそうなイキり具合で華麗にのして注目集める、あのテンプレも楽しみだったんだけどなぁ……。
「 」
「……おい、おい! ダメだ、失神してやがる」
「無理もねぇ……なんだあの嬢ちゃん……あの笑顔は反則だろ……」
「将来は魔性か傾国か……おっかねぇ……」
「てか銀の髪か。……他のやつにも手ぇ出すなって知らせとくか……」
「お手つきの平民の子供でも魔力の素質がすごいらしいし、きっとすぐに俺たちなんぞ。……今のうちに媚び売っとくか……」
◆◆◆
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