第3.5章 研修①
「坂上くんこっちやで」
オレは水木に連れられ、あるビルの一室にきた。中には、男が3人いた。どうやらホストのようだ。
「坂上くん、ここでなにする思う?」
「え?練習ですか?」
「せいか〜い。そう、練習や。自分、やっぱ賢いな?それと、少し説明をさせてもらうで。」
「は、はぁ…。」
水木がホスト達に目線を送るとホワイトボードが用意された。水木は、なにやら地図のようなものを書き出した。
「まずは簡単に自分、この街で有名なホスクラってどこ知ってるん??」
「LLですかね。」
「なるほどな〜。一応な、ここ歌舞伎町のホスクラにはおおまかにシマがあんねん。」
「シマですか?」
「そうそう。仕切ってんのが大きく分けて4つ、まず1つ目は坂上くんに行ってもらうLL、2つ目は自分のことしばいてたホストらがいたJPこと Jewel Party、3つ目はBWことBleach Witch、で最後にEMことEmerald Mirrorや。」
「LL、JP、BW、EMですか。」
「まあ、他にも細かいとこはあるんやけど今は気にせんといて〜。」
「はい。あの、そもそもホストのシマってなんですか?」
「ええ質問や。でも、それを説明すんのはちょっと後回しや。まあ、他のとこでは行儀よーせぇってことや。」
「はい。わかりました。」
「じゃあ、さっそく練習入ろか。頼むわ〜。」
水木が声をかけるとホスト達が近づいてきた。
「簡単に紹介するで、今日の先生や。順に佐倉咲、神鳴メイロ、ゆら。みんな売れっ子でベテランやで。でもまあもうみんな引退してるもうてるわ」
「お願いします。」
礼儀正しそうな男が佐倉で、ガタイが良い男が神鳴で、中性的な男がゆらと言うそうだ。
「まず、ヘルプやな。もう任せてええ?」
「大丈夫ですよ水木さん。」
佐倉達が話を引き継ぐ。
「じゃあ、坂上さん。ホストのヘルプってわかりますか?」
「盛り上げ役的な?」
「そうです。担当ホストと姫(客)の卓は行き、飲んだりして盛り上げシャンパンを煽り、担当ホストの売り上げに貢献する役割を持ちます。」
「はい。」
「まず挨拶として片膝をついてご一緒してもいいか許可を得ます。卓についたら適当に話を膨らませ担当ホストを立てつつ姫の機嫌を良くするように頑張ってください。」
「片膝ついてなんですね。」
「禁句として、姫と担当ホストの出会いや姫の職業、年齢は聞いてはいけません。タメ口をきいてはいけません。」
「出会い方もですか?」
「はい、ナンパやマッチングアプリ、ホストということ隠して近づいてって言うことがあるので、そういうのは嫌がられますね。」
「なるほど。」
「年齢はマナーとして、仕事もわかりますね?若い女性が大金を手に出来るのは例外を除けばつまりそういうことですよ。」
「わかりました。」
察するにホストに通う客は夜職が多いのだろう。
「じゃあ、実際にやってみましょう。」
オレは佐倉から会話の盛り上げ方やドリンク作り、所作などヘルプのつき方をマンツーマンで教わった。