第26夜 誘惑
「はーい、どうも〜。お兄さん、ここら辺どう??」
帰り道、突然声をかけられた。振り返り声の主を確かめてみると、それは砂切メルトだった。地下で一条ハジメが1番敵視していた男だ。
「あれ?おかしいなぁ〜?ここ笑うとこなんだけど笑 初めて会った時と同じように誘ってあげたのに」
おそらく18歳にも満たない少女たちが映ったタブレット端末を片手にメルトはヘラヘラと笑う。
「ねえ、ハッピーかい?いいのあげようか?少し調子悪いのは聞いているしね。何やら水木さんに入れ知恵されてみたいだけど」
「やめてください。オレはLLの人間です。それでは」
夜職のクリーンさを求める一条ハジメが危険視する男だ。歌舞伎町は特に闇が深い分、危険度は計り知れない。
「ひどいな〜、もう。ナツメくんだったよね?初めて会った時も適当にあしらわれちゃって傷つくなぁ。あの時は見え見えの嘘ついて逃げたのに結局ホストやってる笑 何のお笑い?」
「LLにちょっかいかけたいだけなら他当たってくれますか?オレにはやることがあるので」
危険な遊びに誘ってきたと思えば、煽る。そこらへんにいるスカウトのようで地下でのあの振る舞い、掴みどころのない男だ。オレは極力関わりたくない。
「"やること"ねぇ〜?え?それで勝てるの?ははっ、あの麗人くんに。冗談でしょ?まだ博打?あー、ははっ、そんなことしてたら絶対無理無理っ!」
メルトは手を叩き大袈裟に笑う。
「あー、ほんとおもしろっ…!麗人がネットに出てきた以上、君のアドバンテージはなくなったんだよ?先駆者のボーナスはまだあるかもしれないけどそんなの知れてる、ぷっ…ははは。ごめん、待って?はははっ。格が違うじゃん、君と麗人じゃ。正攻法じゃ勝てないよ」
メルトは不敵な笑みを浮かべる。
「この砂切メルトが君に良いコトを教えてあげよう」




