第25夜 持ち札
「ナツメくん、えらい久しぶりやなぁ?」
「お久しぶりです。水木さん」
麗人に完敗し、天沢にまで負けたオレは水木から呼び出された。
「ハジメくんから聞いたで〜。麗人くんにボコられたんやって(笑)」
「まあ、そうですね…」
「えらい寒なってきたなぁ。季節の変わり目は風邪ひかんよう気ぃつけなかんなぁ」
「もう11月になりますもんね」
「あと2ヶ月しかないけど麗人くん倒せるん?あ、BWの件は助かったでおおきに」
「…何の用ですか?」
なかなか本題に入ろうとしない水木にオレはイライラし出す。
「そんな怒らんといてや〜。少し提案と面白い話があってきたつもりやのに」
「何ですか?」
「ん〜、それより先にナツメくんの持ち札を確認していこか?」
「持ち札ですか?」
「そう。持ち札。ホストとしてキミは記録も打ち立てて想像以上に面白い動きをしてくれてあのLLでNo.常連になった。でも、いま行き止まりやろ?なんか考えてることあるん?」
「もっと配信時間を増やそうかと…」
「やっぱそんなとこやろなぁ。案外、自分あほやな?ハジメくんから言われたやろ?麗人くん、いや、天沢くんとの違いについて。差はホストとしての地力やて。よ〜わからへんやろ?」
「接客力っていうのはわかります…」
「ホストなんて虚しいもんに女の子が何を求めてるか、自分わかってる?」
「承認欲求ですか?」
「せやで。けどそれじゃ足りへん。夢や。簡潔に言えば、ナツメくんが麗人くんに勝ってんのを見たいんや。スポーツや勉強で努力してメダル取りました、東大受かりましたってそんなん時間かかるやん?てか、夜の人間には無理やん?まあ、キミなら行けるかもしれんけどなぁ?」
「…?」
「簡単な話、金使うだけで何かを成し遂げられた気になれる体験したいんや。ホストも何も成してないのに成功者もどきになれるし、女の子もそれに貢献できた。この成功はオレと私で成し遂げたって勘違いできる。大した価値もない男に金使うだけでな。アホな仕事やで。いや、そないなもん仕事ちゃうなぁ?」
オレをホストに誘った水木の言葉に耳を疑った。
「すまん、話が逸れたわ。今話してたのはホスト七条ナツメの持ち札や。動画、配信、投げ銭とかな。このままじゃ間に合わんよ?まだ"坂上優斗"としての持ち札は晒してへんのちゃう?お医者さんなんやってな?親父さん達のことはえらい大変やったな。家無くなって今、だいぶ舐めたとこ住んでるなぁ。そこライン超えたらしばくで?自分」
水木は、ホストになる前にオレにあった事。そして、花のことまで知っているようだった。
「もう察してるやろ?使わへん?その坂上優斗の持ち札。医者に、その悲劇。使えるでかなり。使えるもんは使うんやろ?"自分"も使わな、もう頭打ちやで」
「水木さんの目的を教えてください」
ホストを嫌っているようでオレを煽る矛盾した水木に思わず言葉が出ていた。
「使おうや〜、自分も」
「水木さんの目的を教えてください」
「ん?いや、聞こえてるで?答えんって意味なんわからへん?」
「オレのこと、随分調べたんですね。ホストに嫌悪感示してたオレを半ば無理やり誘ったのにあなたの言葉の端々からホストへの嫌悪を感じる。行動と言動に一貫性がないように思えます」
「案外、自分も頑固やな?答えるまで続ける気やろ?」
「やってみて改めて思いましたけどやっぱり夜職はしょうもない世界です。ただそこに生きる人を杓子定規に否定する気はないです。社長や麗人さん、アキラさんのように価値を感じさせるような、信念を持っているような人間がいることもわかりました。水木さんの目的は何ですか?」
「しつこいなぁ?」
「答えてください」
「まぁ、探しもんや。」
「探しものですか?何を?」
「キミがどれだけ食い下がろうがこれ以上は答える気はないで?キミを夜に引き込んだんはこれでチャラや」
「わかりました。今はそれでいいです。ただオレを利用するならちゃんと使ってください。オレも水木さんの持ち札を覗いて利用するので」
「はっはっは、拾ったんキミで良かったわ。まあ、それは時期が来てその時のキミ次第や。とりあえず、麗人くんに勝ってな?」
「わかりました。オレの持ち札すべて使って麗人さんに勝ちます」
「助かるわ。花のこと、頼むで」
いつも不敵な笑みを浮かべている水木が一瞬真面目な顔つきになってオレに言葉を託すとまた夜の世界へと消えていった。




