第24章 地力
ホスト界のカリスマ、北条麗人を利用しようとしたオレはホストとして圧倒的に格上の麗人に喰われた。自信があっただけにその反動は大きかった。
気持ちは折れてないと言い聞かせつつもどこか心ここに在らずで初回につくも送りは取れず何人か姫は来なくなってしまった。そして、締め日が来た。
結果は言うまでもなく完敗だった。動画の影響で勢いづいた麗人とは全く勝負にならなかった。しかし、麗人との対談の恩恵を少なからず受けていたオレはNo.から外れることはなかった。
それ以上にショックだったのは…
No.1 北条麗人
No.2 西京ユイガ
No.3 南ゆうた
No.4東流星
No.5 天沢ナナ
No.6 七条ナツメ
No.7 YU→
No.8 帯刀ライト
No.9 マルメガネ・カケル
No.10 千草ハグサ
初のNo.5落ちだった。それに、天沢に負けた…。あの天沢に…負けた…。オレが…?
15万差だった。
同期ですぐ売れたオレとは対照的に天沢はずっと掃除組を抜けられないままだった。オレが雇っていた分、他の掃除組ほど金銭的に困っていたわけではないとは言え、自分に投資できるほどの余裕はなかったはずだ。
オレは急いでスマホを確認する。やはり天沢は麗人のチャンネルにいた。と言うより天沢もいたと言ったほうが良いのかもしれない…。
一条ハジメと北条麗人の対談動画には天沢ナナがいた。麗人と一条ハジメの対談の司会進行役を天沢が務める形だった。
動画を見てみるとLLのこれまでとこれからの話と夜の世界ではとても興味深い内容だった。動画の一部で、求人に関する内容があった。その際に、天沢にスポットライトが当たる。
「は〜い、夜の帝王、一条ハジメで〜す! まだ眠れる原石たち、ボクと一緒に夢を見ませんか〜?LLでは伝説のカリスマホスト、一条ハジメやLL不動のNo. 1北条麗人がキミを輝かせます。ボクらが持ってるノウハウ、LL最大の強みであるメディアなど全てキミに授けます。ぜひ、会いに来てください」
社長自ら求人をかけたあと、天沢の紹介が始まる。
「今日のお手伝いに来てくれたボクの可愛い可愛い宝石くん、天沢ナナ王子です〜!」
「はい、天沢ナナです⭐︎ LLに入って社長や代表には凄くお世話になりました♪ 同期には未経験最速1000万overの七条ナツメがいます♫ この天沢ナナが全員引き摺り下ろすから見てろお前ら」
「いいね〜、アツくてギラギラしてなきゃホストじゃないよね〜。ボクのプロデュースで天沢はこれだけ変わった」
LLに入る前と後の写真が表示される。確かにかなり垢抜けている。
「あとは画面の前のキミたちが行動する番だ」
LLのPVが流れて動画は終了する。
「あれ〜?未経験最速1000万overの七条ナツメくん、こんなところで何やってるの〜?」
なかなか帰ることのできなかったオレに一条ハジメが声をかけてきた。
「社長、これ…」
「あぁ〜、SNS戦略の一つで少しずつキャストを紹介していこうと思ってね〜。今回は、かなり上手くいったね〜」
「オレも出してください」
「いや〜、いらないでしょもう。知名度、話題性、ある程度の売り上げは持ってるじゃん〜?バズらせるにはボクと麗人で十分だし、あんまりメリットないんだよね〜」
「いや、それでも…」
「いや、待ってね?逆に、キミに足りてないのは何だと思う〜?それが今月の結果だと思うよ〜」
天沢にあってオレにないもの…。
「あんまりピンときてないね〜?もうちょっと賢いと思ってたのに〜」
「すみません」
「仕方ないから教えてあげる、未来だよ。ホストは結局気持ちだからね。同期のキミがシャンパンを浴びる一方で泥水啜ってきた天沢、普通なら折れて辞めるのが大半の中、あの子はしがみついてきた。自分が売れる未来を見続けたから、お客様に自分の見たい未来を見せられたから、結果が出た。わかる?この世界、安定は後退だよ〜。あ、ちょっとヒントをあげすぎちゃったかも〜。それに、天沢も一本釣りだから本当の勝負はこれからだよ〜。まぁ、頑張ってね♡」
これをすればこうなるだろう、ああなるだろう。気づけば駆け引きはしても賭けはしていなかった。
もっと夢を見なければ。




