第18章 地下
「今日はなんとなんとまさかのダークホース、天沢ナナ王子がやってくれました!総額120万overです!初めてのラストソング!おめでとうございますー!」
天沢との動画はそれなりに再生数が回った。その反響もあり、天沢にも指名が来た。月初や麗人が休みだったこともあり、天沢はラスソンを取ることが出来た。
「お疲れ様です」
「おつかれ〜」
「社長、天沢がラスソン取りました。掃除組にも個人チャンネルを持たせるのに十分な実績だと思います」
「そのことなんだけどね〜、現段階ではまだダメかな。でも待って。ボクも色々考えてね、いずれ許可は出そうと思っているよ。ただ段階を踏んで、ね?」
「わかりました。ありがとうございます」
早めに母数を増やして相乗効果を狙いたかったが、ここは素直に従うことにした。
「あ、ナツメく〜ん今月頑張って規定を超えたら主任に昇格できるから頑張ってね〜」
「わかりました」
「それと、歌舞伎町会議あるって話してたよね?日程が決まって明日!麗人とナツメくん連れていくよ〜」
「明日ですか?了解しました」
「水木さんから何か聞いてる〜?」
「何も聞いてないです」
「ん〜、じゃあ、簡単に!ボクが歌舞伎町をぶっ壊そうとしてるのは知ってる〜?」
「はい」
「そっか〜。それじゃあ、今の歌舞伎町は4つに割って冷戦状態って知ってるね?そのリーダーたちはこんな感じだよ〜。
Jewel Party 丈ヶ崎タツヤ
Bleach Witch 千堂アキラ
Emerald Mirror 落溜ヒカル
Legend Line 一条ハジメ
で、そのリーダー4人でたまに集まって話し合いをするんだ〜。細かい調整だったり、Desiciveの宣戦布告だったり色んなこと話すよ」
「それってオレが行っていいものなんですか?」
「お?察しがいいね〜。大丈夫大丈夫、幹部陣なら2人まで連れてっていいから〜。ただ当然、緘口令は敷かれる。違反したら…言わなくてもわかるね?」
きっとあの治安部隊的なものが動くんだろう。
「てか、オレが行く必要ありますか?」
「いや、ないよ?でも、もう拒否権もないよ〜。だってこの話し合いの存在自体来ないやつに話しちゃダメだもん」
「…なるほど」
「まあ、麗人に勝ちたいなら知っておいた方がいいよ。それにキミはボクに必要なピースになりそうだしね、じゃあまた明日〜」
オレは明日の予定を全てキャンセルする。オレを買っての誘いなのだろう。少し不安もあるが、利用できそうなら利用してやろうと思う。明日に備えて何を用意していいかわからないのでとりあえず早めに寝ることにする。
「おはよう。昨日はよく寝れた?」
「はい。おかげさまで」
オレは麗人と待ち合わせをしてから会場へと向かう。
「ナツメ、言うまでもなくここから先のすべては守秘義務に該当するからね」
オレは麗人に案内されるまま、歌舞伎町にある1番高いビルに入る。奥のエレベーターに乗ると麗人はタッチパネルで何やら操作をする。
ゴゴゴゴゴっ…
エレベーターは動き出し表示のないはずの地下へと向かう。エレベーターには隠しコマンドのようなものがあったのだ。
「今って地下に向かってますか?」
「ふふふ。そうだよ。今から見るのはこの街のもっと深い闇だね」
そういうと、麗人は黙り込んだ。オレも口を閉ざし、このエレベーターが目的のフロアに着くのを待った。
チーン
「麗人〜!ナツメく〜ん!遅いよ〜」
「お待たせしました社長」
一条ハジメが地下でオレたちを待っていた。
「ナツメくんはびっくりしているかな〜?」
地下に着いて目の前に広がっていた光景は街だった。
「ここは一体?」
「LLが管理してるこの街の裏の姿だよ〜。今乗ってきたエレベーターがあったビルもLLの仕切りのところだったでしょ?」
「ここで何やってるんですか?」
「ん〜、本当はヒミツなんだけど特別に教えてあげる。JP、BW、EM、LLには裏の姿があるんだよ〜」
「裏の姿?」
「JPは闘技場、BWは賭場、EMは遊郭を運営してる。そして、LLはエンタメ」
「エンタメ?」
「ボクって芸能人じゃん?だから色んな人脈があるんだ。売れないアイドル、売れない俳優、落ち目のタレント、人気俳優、人気芸人、政治家までね。金はないけど表で働けない人間や遊んでいるのが表にバレちゃいけない人間、そんな人達に仕事を斡旋したり遊び場を提供する。そのついでに各々でコネクションを作ってもらう。それがボクの裏の仕事だよ」
「一条ハジメ社長は歌舞伎町を綺麗にするんじゃなかったんですか?」
「もちろん、そのつもりだよ〜。あ、安心してね?ここは平和だよ。あくまで全て合意のもとでしか成立させないよ。騙したり脅したり誰かが犠牲になって成り立ってた少し前の夜の世界とは全く違うよ。ボクが目指すのは"誰も泣かない"夜の街だよ。ボクが仲介するからみんな安心して働けて遊べる。通称EX、例の歌舞伎町治安部隊みたいなExecutionerの人たちにも少し力を借りてね」
「なるほど」
結局、夜職の人間は夜職の考え方なのだろう。一概に間違っているとは言えないが、決して正しい世界とも言えない。すべて合意?立場が違う人間が入り混じるのに、果たして本当にそう言えるのだろうか。
「ナツメ、ボクも初めは驚いたよ。でも、社長は社長で筋を通しているっていうのはここを少し歩いてみればわかるよ。それに昔は本当にもっと何でもありだったからここはかなり綺麗な場所だよ」
「そう…なんですか」
あまりのことに動揺を隠せなかったが麗人のフォローもあり、ここは納得することにした。
「他のグループは何をやっているんですか?」
「ナツメく〜ん、興味本位で聞いてもいいの?」
「すみません」
「いや、いいよ〜。教えてあげる。ただここみたいに綺麗なもんじゃないよ。本当にぶっ壊したいのはそこだからね。まず、4つのグループは冷戦状態って言ったよね?不可侵で不干渉を貫くって。でも、これはあくまで表の話。JPは闘技場、BWは賭場、EMは遊郭って言ったよね?これって切っても切り離せない関係にあるってわかる?」
「は、はい。なんとなくは…」
「さすがナツメく〜ん。闘技場にしても殴り合いなら勝敗がつくわけでしょ?そこに賭けが発生するのは想像に難くないよね。賭場は高レートのギャンブルが楽しめるんだけど金持ち連中の他にも馬鹿な身の程知らずも来るだ。そして、BWは闇金もあってね。ギャンブル狂いの債務者達ってどうやって返済すると思う?売れるのはカラダだけ。もうわかるよね?上物は遊郭へそれ以外は闘技場へ。もっと使えないのは…まあ、これはまだいいか」
「…」
あまりの衝撃に言葉を失う。
「びっくりした?こんな話されてもあんまり現実味ないよね笑」
「ナツメ、社長はマイルドに言ってくれてるけど実際は見てられないぐらいもっとひどいよ」
「さあ!もう察していると思うけど、歌舞伎町には4つ大きな地下街がある。それはさすがに直接は繋がってないけど中心にすべてに繋がる空間がある。普段は裏稼業の貿易に使われているけど、今日の会議の場所もそこにある。そろそろ行こうか!」




