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第2章 勧誘

「え…?」


水木からの急な提案に思わず間抜けな返事をしてしまう。


「ホストやで〜。ホ・ス・ト。」

「興味ないです。ホストなんて!」

「せやろな〜、自分さっきホストにボコボコにされてたばっかやもんな〜」


ホストなんて女を酔わせて騙して金をむしり取る。クズがやることだ。さっき殴られたのもその前の行為もそのイメージをより強くするものだった。


「でも、ちゃうねん。」

「違う?」

「自分にやってほしいのはただのホストやないって。Legend Lineってグループは知ってる??」

「はい、聞いたことは…。」


Legend Lineは今や芸能人としてバンバンTVに出てる伝説級のカリスマホスト、一条ハジメが経営するホストクラブだ。動画投稿サイトでもLLの公式チャンネルはホスト密着動画で登録者が100万人を超えるほど人気なコンテンツになっている。


「んで、LLでNo. 1ホストになって欲しいんや。」

「No. 1!?無理ですし、嫌ですよ!!」

「なんで〜、そんな嫌がるん??」

「ホストは女性を騙して稼ぐ仕事じゃないですか!それに、反社と繋がってるでしょ絶対っ!」

「ん〜、まあそういう側面もあるな〜。」

「だからホストなんてやらないです!!!」


頑なに拒否するオレに対して水木は気にもしてない様子で相変わらずヘラヘラしている


「自分、そういえば名前なんやっけ?まだ聞いてへんかったな??」

「え?あ、坂上です。水木さんで合ってますか?」

「あぁ、水木で合ってるで〜。坂上くんか〜」


いまさらだが、目の前の怪しげな男が水木ということを確認する。


「坂上くん、確かにホストは騙して金を稼ぐこともあるかもしれへん。でもな、案外そうでもない客もおるんやで??」

「へ?」

「じゃあ、こうしよう!まず、1週間体験で入店してそれで試してみるのはどうや?その間はこっちが色々と面倒みたる!」

「い、いや…。」

「よし!決まりや!」


水木はヘラヘラとしながら手を合わせ勝手に話を進めると、どこか電話をかけ始めた。


「あ、ハジメくん〜?まいど〜。体入の子見つけたんやけど、面倒見てくれへん??もちろん、今回も逸材そうな子やで〜。」

「ちょっ、ちょっと…!」


どうやら相手はあのカリスマホスト、一条ハジメのようだ。


「うん、今日は木曜日やから準備もあるし来週からやな〜。じゃあ、また連絡するわ〜」


と電話を終える。


「坂上くん!一条くんが面倒みてくれるって!ツイてるで自分!」


オレの肩を叩きながら水木は笑う。


「そういうことやから〜。頼むでぇ〜。」

「えー…」

「もう話通してまったからとりあえず体験だけでも頼むわ〜。人助けや思ってな?」


勝手に話を進めといてずいぶんだと思いつつもさっき助けられた恩もある…。


「まぁ、1週間だけなら…。」

「ほんま!?ありがとぉ〜!」


ここは折れることにした。そんなこんなでオレの体験入店は決まった。

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