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第15章 開設

「七条ナツメ、チャンネルを開設します!!!」


オレは簡単な自己紹介動画を投稿するとともにSNSで告知を行う。


「はじめまして、七条ナツメです!あの一条ハジメ社長のLLでホストをしています!LLのチャンネルでオレのことを知って応援してくださる皆様にもっとオレのことを知ってもらえればと思います。ホストとしての目標としましては"年間売上1億円overの歴代最速記録"を塗り替えたいです!仕事をしている姿、プライベートな姿など様々な一面を動画や配信で発信できたらと思います!!!明日には密着動画も上がります!チャンネル登録お願いします!」


自己紹介動画はシンプルにした。LLの動画でバズったオレへの注目度の高い時期に、自分のコンテンツに誘導することが目的だ。


マルコDにも頼んでいた通り、今日投稿されるLLのチャンネルの動画でも匂わせしてもらった。


"「マルコさん、オレちょっと面白いこと考えているんですけど…」

異例の新人ホスト、七条ナツメが何やら企んでいる。これは一体…?"


いつものホスト密着の動画の最後にオレがマルコDに声をかけた様子が意味深なナレーションとともに映し出された。


明日は店休日、すべての連絡を無視して密着取材の動画が上がるのを待つことにする。せっかく時間が空いたので以前から約束していた花へのお礼をすることにした。


ホストを再開するきっかけになったとも言える「鮨屋 扇」に花と行くのは少し気が引けたが、そこまで良い店を知っているわけではないので「鮨屋 扇」に行くことにした。


「優斗さん?ナツメさん?どっちで呼んだら良いかわからないですね」


花はホスト復帰したオレをいじってきた。


「じゃあ、ナツメで!」

「え〜、そっちですか笑」

「冗談だよ」

「もー!」


オレは花と軽口を叩きながら食事をする。


「優斗さん、本当に良いんですか?こんなお高そうなお店」

「いつもお世話になっているからそのお礼だよ、気にしないで」

「私の方がお世話になっているぐらいですよ…でも、ありがとうございます」


少しして気掛かりだった話題を振る。


「オレがホストになっても平気?」

「それは…」


花は少し口籠る。


「それは…正直、少し嫌です…。でも…私は何か言える立場じゃないです…。優斗さんが決めたことならそれで良いです」

「だよね。答えてくれてありがとう。じゃあ、なおさら出ていくよ。再来月までには決めるから」

「そ、そんな…」


刺激をまた味わいたくて夜の世界に戻ったオレが昼の世界の人間と関わりつづけるのはどちらにとってもリスクでしかない。


「今までありがとう。もう少しだけお世話になります」


これはオレなりのケジメだ。最後に何かプレゼントもしよう。そんな話をしてオレたちは店を出た。


次の日、オレは何食わぬ顔でLLへ出勤する。


「おはようございます」

「「「おはようございます」」」

「ナツメくん、動画観たよん♪」


出勤するとすぐに天沢が声をかけてきた。


「やっぱり悪だくみしてたじゃん⭐︎」

「天沢には、これからそれに関わってもらうから」

「この間の話ってやっぱそれー?」

「正解」

「これなら良いよ⭐︎面白そうだもん♪」


天沢との会話を終え、今日も営業へと臨む。


「七条ナツメ、次2番卓で初回お願いします」


オレは内勤に言われるまま、初回につく。


「うわー!七条ナツメさんだ!動画観ました!」

「えー!ありがとうございます!嬉しい!」

「密着動画観て今日初回指名しようか迷ってとりあえず来たの」

「そうなんだー。じゃあ、飲み直しする?あ、これ今日特別仕様の名刺だよ。LINEのID乗ってるから登録してよ」

「やったー!今日来て良かった!」


密着動画で特別仕様の名刺を配布すると宣伝をしておいた。その効果も少し期待している。


「ねえ、今LINE登録してよー。初回だからこの後もいっぱいイケメン来るけど別格のオレが相手してあげるから」

「じゃあ、するー!」


目の前でLINEを登録するのを確認したところで時間が来た。


正直、今日はオレの日だった。話題性抜群のオレが新しいことを始めた。注目度は上がり、指名だけでなく飲み直し、送りの割合は圧倒的で8割がオレだった。今日のラスソンはおそらくオレだ。


「みんな〜、おはよ〜」

「「「おはようございます」」」


社長、一条ハジメが出勤してきた。


「我がLLを愛してくださる素敵な素敵なお姫様方〜、いつもありがとうございます〜」


一条ハジメはフロアに向かって深くお辞儀をする。


「今日はなかなか面白いことになっています〜。なので、ボク、社長が出来ることとして少し花を添えさせていただきます〜」


一条ハジメは、後ろに目を向ける。


「おいで、麗人」


麗人を店内に呼び込む。思わぬサプライズにフロアから黄色い歓声が上がる。


「今日はお休みだったうちのNo. 1を引っ張ってきました〜、ラスソンを飾るのは誰になるかな〜?素敵な素敵なお姫様方、今宵もお楽しみくださいませ〜」


やられた。動画をあげてすぐNo. 1を取り、箔をつけるつもりだった。だから麗人の休みの日に合わせて動いていた。麗人の出勤は想定外だ。


しかし、残り営業時間は1時間と少し間に合わないだろう。今日は120万以上売り上げている。ラスソンはオレだ。


「ななな、なんとこの我らがNo. 1がやってくれました!!!北条麗人王子の素敵な素敵なお姫様から総額!!!300万over高級シャンパンのオーダーをいただきました!ありがとうございます!!!」

「「「ありがとうございます」」」

「お前ら集まってこいやー!」


負けた…。一撃で今日のオレの売り上げの倍を超える300万overのオーダーが麗人に入った。


「うりゃ!そりゃ!ワッショイワッショイ!」

「「「ワッショイワッショイ!」」」


麗人のシャンパンコールが始まる。オレは近くの卓で自分のお客様とそれを聞くことになった。ここまで差があるのか…。


「今日は急に社長に呼ばれて、出勤することになりました。それにもかかわらず、こんな高級なシャンパンをいただけて本当に姫には感謝しかありません。これからも姫にはもっと幸せな時間を提供させていただきます。本当にありがとうございます、ヨイショ」


急な出勤でも高額オーダーをしてくれる客がいる。不動のNo. 1の底はまだ見えなかった。


今日のラスソンは当然、麗人に奪われた。営業終了後、オレは一条ハジメに呼ばれる。


「おつかれ〜、ナツメくん。やってくれたね〜」

「それはこっちのセリフです…」

「まあ、流石に期待しているとは言え新人に調子に乗らせられないよ〜」

「…」

「で、動画の件ね。LLのチャンネルがあることは当然知っているよね?そこで特定のホストばかりをピックアップしないっていうのも知っているよね?」

「はい」

「端的に言うと、あれはダメ。ボク個人としては面白いと思うけど、社長としては個人チャンネルは容認出来ないかな〜。お客様は大前提としてスタッフの個人情報などプライバシーの保護やコンプライアンスの観点から管理が難しいからね〜」

「そういう側面もあると思います。だから慣れているマルコDに依頼しました」

「キミならそこまで考えてのことだと思ってたよ〜。でも、キミの真似をみんなやり出したらどうかな?配慮の足りてない子も出てくるよね?マルコさんにも注意しておくからね」

「すみません、事前に許可を得なかったのはオレの落ち度です。でも、許可はおりないと踏んでマルコDを騙して黙って協力してもらいました。マルコDは悪くないです」

「うーん、やり手だね。結果も出てるから難しいね〜。でも、ボクが社長として言えるのは個人チャンネルはやめてねってだけだね。これは決定事項ね」

「なるほど、わかりました…。それでは失礼します」


一条ハジメの言うことは正しい。間違っていない。真似したホストが知名度欲しさに無茶するかもしれない。この場は、反省したそぶりを見せることにする。


「ナツメ、お疲れ。社長とちゃんと話せた?」


麗人がオレに声をかけてきた。


「今日は短い時間だったけれど、楽しかったよ。ナツメは、面白いことするね」

「はい、そのことでさっき怒られましたけど」

「ふふ」


オレは会社の意向は聞いたが、従うとは言っていない。


「そこで、麗人さんオレと対談動画撮りませんか?」

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