第12章 通知
LLは一条ハジメの知名度もあり、SNSが強い。オレも社長の勧めで七条ナツメ名義でSNSを開設していた。
鳴り止まない通知、一体何が来ていているのだろうか。気になってスマホを手に取りDMを確認する。
「この顔で1000万?」
「あんまホストっぽくねーな、こいつ」
「こんな接客、誰でも出来るじゃん」
「女騙して金稼いで楽しい?」
内容はひどいものだった。それでも良い少なからず好印象なものも来ていた。
「めっちゃイケメン!応援してます!」
「指名したいです!DMからいけますか?」
体感的に誹謗中傷8割指名希望1割その他1割ってところだった。あまりの量のDMはさすがに追いきれないので、誹謗中傷をしてきたアカウントを片っ端からブロックすることにする。
正直、スッキリした。
指名希望にはしっかりと来店予約までこぎつけ、その他には営業の連絡を入れておいた。
これでしばらくお茶をひくことはないかもしれない。
そうこうしている間に、出勤時間になる。少し余裕を持ってLLへと向かう。
またホストを始めたにも関わらず、花がオレを引き止めるので次の家が決まるまで世話になることにした。掃除組でもないホストは寮にもいないので居心地が悪いのもあった。
「おはようございます」
LLにつき、フロア全体に挨拶をすると、掃除組のホストたちから挨拶が返ってくる。オレは2部からの出勤が許可されたが、正直よくわかっていないので1部の時間から出勤し、掃除組と一緒に店内の掃除に取り掛かる。
「ナツメさん、お疲れ様です♪」
「あ、おつかれさま」
オレと同時期に入店した掃除組の天沢ナナが声をかけてきた。
「ナツメさん、めっっっちゃバズってますね♪さすがです⭐︎」
「正直、オレもびっくりしたよ。通知の音で起こされたしね」
「わお、うらやましいかぎりです♪」
天沢とは、同時期に入店したことや天沢の人懐っこい性格もあってかここ数日で随分と仲良くなった。
営業時間になるとオレは来店予約のお客様を待つ。1部に2卓、2部に1卓の予約があった。全部SNSのDMからの指名だ。一条ハジメの影響力を感じる。
「七条ナツメさん、お客様ご来店でーす」
「いらっしゃいませ」
早速、SNSから来店予約のお客様がきた。
「どうも七条ナツメです」
「うわー!動画で見るよりイケメン!あんまりホストって感じがしないね!」
「え?本当?よく言われる。しかも、希少価値あるから姫見る目あるね笑」
オレは水木の研修や体験入店の経験もあり、攻めた接客をするようにしている。相性が良ければ次に繋がるし悪ければそれまでってだけだ。
今日は、初回の指名客しか来ないので比較的駆け引きは発生しない。SNSからの来店予約と飛び込みでの来店を数名接客すると、初回とヘルプに積極的に回った。経験値がない分、場数をこなす。今日は、20万ちょいの売上を立てることができた。
「おつかれさま。やっぱりキミはすごいね」
「麗人さん、おつかれさまです」
営業後、麗人がオレに声をかけてきた。
「ねえ、ナツメくん。ボクと勝負しない?」
「え、勝負ですか?」
「うん、そう。勝負」
「それは…何でですか…?」
「この1年、全力で走り切ってどちらが売上を上げられるか」
「そ、そんなの勝負にならないですよ!」
「ボクじゃ相手にならないって?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!」
「ふふ。そうだよね。あ、今の冗談は社長には内緒ね?ボク代表だから怒られちゃう」
麗人は、品があるのに随分と茶目っけを見せてきた。
「じゃあ、こうしよう。この年の月間No. 1を1度でもボクから奪えればキミの勝ち、これならいけそうでしょ?」
「…」
「その沈黙はYesでいいね?」
オレは言葉を迷う。
「やるからには勝たなきゃ意味がない、ナツメくんキミもそういう人種でしょ?」
オレは、少し気が引けていたが麗人の言葉に火をつけられ勝負に乗ることにした。
「いいね、楽しみだよナツメ」
麗人は嬉しそうな顔する。
「ボクとの勝負には死ぬ気で来てね?それに年末には"Desicive"があるんだから」
そう言うと麗人は去っていった。
"Desicive"
初めて聞く単語だった。しかし、オレは目の前の勝負、それに全力を注ぐと決めた。




