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第1章 出会い

うなされて飛び起きる。すべてを失ったあの日。燃える家の中、泣き叫ぶ声。

もう何もかもどうでも良かった。

助けを求める手は醜くて、いつでもそちら側へ手招きしている。


新宿駅から少し、夜の灯りが照らす街。

浮世離れしたこの街にオレは逃げ込んでいた。


ドンッ


「痛ってぇな…‼︎」

「………。」

「ぶつかっといて、一言もねぇのかよ」

「………。」

「まあ、いいわ。お兄さん、イチゴでここら辺いけるけどどう??」


スカウト風の男がタブレットでおそらく18歳にも満たないであろう少女達の写真を見せてきた。

明らかにやばいやつだと察した。さすがにリスクは避けたいので軽く流すことにした。


「今日移籍初日なんですよ」

「なんだ〜、どこ入るの?? じゃあ、いずれ利用することあったら言ってよ、回収」


適当な嘘で誤魔化したらスカウト風の男は去っていった。

あまり意味がわからなかったがやり過ごせたならまあ良い。


オレはまた目的地もなくフラフラと歩きだした。何気ない足取りはこの街の奥へ奥へと進んでいくのであった。


「や、やめてください…」

「オラッ、脱げよ‼︎」


突然、今にも泣き出しそうな声と怒号が聞こえてきた。

ふと路地裏に目をやると、端正な顔立ちをした女がスカートを脱がされ、酔っ払ったホスト風の男達に今にも犯されそうになっていた。


助ける義理はない。


そんな言葉が脳裏をよぎる。オレは、何事もなかったようにその場を去ろうとする。


「た、助けて…!」


オレに気付いた女は、必死に振り絞った声で助けを求めてきた。その言葉につい足を止めてしまう。だが、助ける気のなかったオレはただ様子を見ていた。


「何見てんだよ‼︎」


ホスト風の男達の1人がこちらに気づく。その怒号とともにホスト風の男達はこちらに向かって歩き出した。


「何見てんだよお前、早く消えろよ。」


ホスト風の男達はオレを囲み1人が胸ぐらを掴んできた。

その瞬間、犯されそうになっていた女が走り出した。


「お、おい‼︎」

「逃げんな‼︎」

「追えっ‼︎」


走り出した女を追いかけようとしたホスト風の男がオレにぶつかり、転ぶ。そんなことをしている間に女の姿を見失う。


「おい、お前のせいであの女とヤリそこねただろ‼︎」

「どう落とし前つけるんだよお前。」

「なぁ?おい。」


女が逃げたのはオレのせいだとホスト風の男達は責め始めた。


ガッ


突然、1人がオレの右頬を殴る。

それが合図かのように他の男達はオレを殴ら始めた。酒のせいで自制が効かなくなっているのだろう。オレを引き倒しリンチを始めた。

相手は3人、最初は抵抗していたオレもさすがにこの人数相手ではなすすべもなくやられ、もはや抵抗する気もなくなっていた。


もうどうなっても良いや。きっとオレはこのまま殺されるんだろう。


「なぁ、自分らJPとこのやろ?」


ホスト風の男達の手が止まる。振り返ってみるとそこには細目の着物を着た男がいた。


「自分らこないなとこで何してるん?」

「い、いや…あの…」

「聞いてるんやから、はよ説明しいや」


さっきまで威勢の良かったホスト風の男達が細目の男を見るなりすっかり萎縮してシラフに戻っている。


「すみません…。」

「すみませんちゃうねんって、話聞いてた?で、何してたん?」

「………。」

「まあ、もうええわ君で。」

「オ、オレですか…?」

「せやで、自分に決まってるやん。この阿呆どものほかに自分以外誰がおるん?」


オレはここで起きたことを話す。


「なるほどな〜。まぁ、だいたい聞いてた通りやわ。」


聞いていた?事前にこの状況を?


オレから話を聞いた細目の男は少し考える仕草をしてホスト風の男達に声をかける。


「で、自分らもうわかるやろ?自分で何をしてまったか、いや、どこでそないなことしてまったか」

「あ、あの…水木さん‼︎ 」


どうやら細目の男は水木というらしい。


「俺たちつい酔った勢いでやっちゃっただけなんですよ…‼︎ それに、女の方はまだヤってないですし…‼︎」

「まだ?」

「…すみません。」

「別にええよ。僕は何もせえへんし。関係あらへん。」

「水木さん…‼︎」

「いや、だから僕に頼んだって関係あらへんから〜。それに迎えはそろそろやと思うで?」

「そ、そんな…」


そんなやりとりをしていると黒いスーツを着た男達が現れる。


「まいど〜。こいつらやで〜。」


黒いスーツの男達は、ホスト風の男達を押さえつけ車に押し込んですぐにどこかへと車を走らせた。その手際は見惚れるほど慣れたものだった。


「ありがとうございました…。」

「なんで〜?」

「あの…助けていただいたので…。」

「自分、勘違いしんといてや。僕は阿呆に声かけただけやで?僕は何もしてへん。」

「で、でも…」

「自分うるさいな。まあ、ええわ。自分、立てる?」


そういって水木はオレに立たせようと手を差し伸べてきた。


「あれ?自分、ツラええなぁ?」


急な水木の一言にオレは驚く。


「自分、今何しとるん?」

「何って…?」

「仕事や仕事。」

「な、何もしてないです…。」

「ほんまぁ〜?ちょうどええやん。」


水木はにやにやと不敵な笑みを浮かべながら舐め回すようにオレを見る。


「自分、ホスト興味あらへん?」

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