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彼は少し勘違いしている。

「ありがとうございました。後は私が自分でするので大丈夫です」

「そうですか?ありがとうございます」


 SCFYから運動会への参加者は三人だった。

 流次の車ではなく、もう一人の社員前田が運転する車で帰社した。写真撮影も担当した前田からデータを受け取った流次は、もう帰ってもいいよとやんわり伝える。前田は安心したように笑うとそそくさと部屋を後にした。

 

「さあ、私も帰るわね」

「はい。それではまた明日」


 麗子がヒラヒラと手を振ると、流次は引き止めることもせずサラリと別れの挨拶をした。


「冷たいわね。本当に一人でいいの?」

「勿論ですよ。麗子さんがいると時間がかかりそうです」

「どういう意味よ?」

「そういう意味です。写真を加工して今日中に投稿したいので、どうぞお帰りください」

「あ〜、なんかむかつくわ。由衣佳ちゃんに流次くんは本当は鬼畜だって伝えるから」

「鬼畜?どこかですか?変な漫画でも読み過ぎましたか?」

「変な漫画って、君読んだことあるの?」

「ないですけど。そういう女性向けの漫画あるのは知ってますよ。興味ないですけど」

「興味があったらちょっと怖いわ。でも由衣佳ちゃんはきっと君のいう変な漫画が好きだと思うわよ」

「どうしてそう思うんですか?」


 流次は、麗子が確信を持ってそう答えるのが不思議で聞く。


「だって、由衣佳ちゃんが君を見る様子がなんていうか、キラキラしていたのよね」

「キラキラしていた?由衣佳さんが私を見る時?」


(私のこと気になっているのは確かなんだ)


 流次は麗子の言葉の意味をきちんと受け取っていなかった。

 それに気がついていたが、面白そうなので、彼女は訂正しなかった。


「そうそう。由衣佳ちゃんは君に好意をもっているはずよ」

「好意?!」


(やはり。そう思っていたけど、麗子さんから見てもそうなんだ。自信をもってもいいんだ)


「流次くん、頑張りなさいね。応援してるわ」

「あ、ありがとうございます」


 麗子に素直に応援されることなどほとんどない。

 しかし少し浮かれ気味の彼は、麗子が面白がってそんなことを言っていると、気がつくことはなかった。


「じゃあ、帰るわね。また明日」

「はい。また明日」


 麗子を見送り、流次はまずアオトリを確認する。

 マンダリーくんのコメントがすぐ目に入った。


「パン食い競走の写真は載せなかったんだ」


 那加川の写真なんか見てもしかたない。

 流次は顔が隠されているとしても、由衣佳の写真が見たかった。

 麗子に踊らされている流次は、あまり深く考えず、コメントする。


『マンダリーくん、クリームパンの写真は載せないの?可愛かったのに』


 いいねをした後、そうコメントを書く。

 五分ほどして返ってきたコメントは、流次が望むようなものではなく、がっかりした。


『野木沢パンさん、ご提供のクリームパンはとっても美味しかったです。写真は撮るのを忘れてしまいました。気になる方は野木沢パンさんのページへGO』


「まあ、マンダリーくんらしいか。あまり調子に乗るのはよくない」


 少し冷静になった流次はそうぼやくと、スカフィーとして投稿する写真の選定を始めた。






 


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