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スカフィーの中の人

流次りゅうじくん、ちょっとやめてよ」


 新しく投稿したコメントを読んで、怒り狂ったのはSCFYの四条丸しじょうまる麗子れいこだった。


「どうしてですか?ほら、麗子さん、もっとマンダリーくんに積極的に絡んでって言ったじゃないですか?」

「そういう絡みかたじゃなくて、普通にできないの?」

「スカフィーって女王様キャラなんですよねぇ。しかたないですよ。諦めてください。麗子さんのイメージにぴったりじゃないですか」

「なんていうか、褒められているのか、貶されているのかわからないわ」

「褒めているんですよ」


 多鍋たなべ流次りゅうじはニコニコ微笑んでそう答えた。


「ほーんと、頭にくるけど会社のためにぐっと我慢するわ。あーあ、那加川さんにだけでも本当のことを伝えたい。私はスカフィーではありませんって」

「やめてくださいよ。私がスカフィーを運営していることは言わないでください」

「わかってるわよ。でもあまりひどいコメントはやめて頂戴よね」

「わかってますよ」

「あー、怪しい。その返事が」


 麗子は頭を抱えながらも、書類を持ってどこかに行ってしまった。


「……マンダリーくんの中身、女の子だと思ったのになあ」


 一人になった部屋で流次は画面から目を逸らしてぼやく。

 SNSアオトリで企業アカウントを作成することが決まり、アオトリ部門が作られた。部屋も一部屋与えられたが、基本、流次一人で作業をしている。

 一年半前、アオトリの企業アカウントプロジェクトが始まった。そのキャラクター、方向性について話し合われ、流次はITを専攻していたこともあり、アオトリの運営を任されてしまう。

 SMの女王のイメージで、高飛車に可憐にと社長自らから指示され、流次は当時一瞬辞表を出すことも考えたくらいだった。

 業務が減るかもしれない。

 アカウント運営なら別個に部屋を与えられる。女性社員に阿保みたいに絡まれない。そんな希望を持って彼はアオトリ専属になった。

 最初は恥ずかしかったが、徐々に慣れていき、そんな中、マンダリーくんを見つけた。

 揶揄からかってみたら、面白い反応が返ってきたので、流次にとってマンダリーくんとのやりとりは心の癒しでもあった。

 それが、例えSM的なやりとりだったとしても……。


「あの子、可愛かったなあ。マンダリーくんだったらよかったのに」


 流次は合同誕生パーティで出会ったマンダリーの若い女子社員を思い出す。

 マンダリーの中の人、那加川に寄り添ってサポートしていた女の子。


(そういえば、あの子、那加川さんよりマンダリーくんに詳しかったな。……もしかして?)


 流次はふとある可能性を思い立つ。

 彼も中の人の代理を立てているのだ。あちら側も代理の可能性がある。


「確かめてみたい」


 確かめる方法は、直接会うことだった。

 そのために彼はオフ会を再び開くため、計画を練る。那加川を気に入っている麗子を巻き込めば早いうちに実現できそうだった。


(名前は確か、永島えいじま由衣佳(ゆいか)。由衣佳、可愛い名前)

 

 流次は席を立つと、麗子を探すために部屋を出た。

 彼は社内ではほぼ表情を変えない。たまに笑顔を見せることがあっても、胡散臭い笑顔で、社内の皆はそれが偽物であることに気がついている。それでも美形であるので、女子社員にはモテる。そんな彼が柔らかい笑みを浮かべて社内を歩いている。女子社員たちは騒然として流次を目で追っていた。

 しかし、本人はどのようにオフ会を開くか、麗子を説得するか、そのことばかり考えており、まったく気がついてなかった。



 



 

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