クリスマスパーティ
今日は輝夢の友人宅でクリスマスパーティが開かれている。主催者と馴染みの深い参加者がそれぞれ一人ずつ友人を招待して行われているパーティで、三十畳くらいはありそうな広いリビングに二十人ちかくの人が集まっていた。飾り付けも豪華で、ツリーはもちろん、テーブルにはチキンやサラダといったご馳走が並んでいた。皆それぞれ、食事をしたり写真を撮ったりと、思い思いの時間を過ごしていた。
輝夢は先ほどから友人たちと談笑していて、こう言った場にほとんど来たことがない僕は、一人だと落ち着かなくて、すみっこで彼女の様子を助けを求めるように見ていた。その視線に気づいた彼女が申し訳なさそうに僕に手を振ってきたので、僕は全然気にしないでいいよ、という笑顔を向けたが、たぶんぎこちないものになっていたと思う。
「それじゃあそろそろプレゼント交換にうつりましょうか〜」
中心者の声がして、皆が一斉に待ってましたと言わんばかりに集まってきた。事前に伝えられていた予算をもとに、僕も先週、輝夢と相談しながら一緒に選んで会場の部屋の隅に置いていたものを持ってきた。
集められた二十人分のプレゼントの山を見るのは壮観だった。事前にもらっていた番号入りのカードをもとに抽選が行われたあと、それぞれランダムにプレゼントが渡されていった。プレゼント交換は今日一番の盛り上がりを見せた。
パーティという陽キャな響きに勝手に苦手意識を持っていた僕だったが、いざ参加してみると新しい世界に踏み入れたような気分になって存外楽しかった。宴もたけなわのところで会はお開きとなり、最後に記念撮影をして終了となった。
すっかり夜も更けた街道を輝夢と手を繋いで自宅まで帰りながら、吐く息の白さに深まる冬の気配を感じていた。
「楽しかったね」
輝夢がそう言った。
「うん。パーティってなんかいいね。セレブになった気分だ」
「ふふふ。なにそれ」
今日の会場になった家。輝夢の友達が結婚を機に購入したと言っていたが、立派な家だった。これから輝夢を連れて帰る自宅のアパートの間取りを思い浮かべて、僕はなんだか申し訳ない気分になってしまう。
「僕もいつか、ああいう家に輝夢ちゃんを住まわせてあげるからね」
そう言うと彼女は微笑を浮かべて答えた。
「輝夢は、いまの家でもじゅうぶん満足だけどな」
「え、まじで?」
「うん! りっちゃんと一緒ならどこでもいいの〜」
不意に僕の目に涙が浮かんだ。僕は本当に素晴らしい彼女を持てて幸せだ。
「そういえば、プレゼント何もらったの?」
輝夢に聞かれて、中身を見ていなかったことを思い出し、立ち止まって開けてみるとモアイ像のティッシュケースが出てきた。
「なんだこれ……」
僕がモアイ像を持ったまま呆然として立ち尽くしていると、輝夢が吹き出してしまった。
「やっば! 鼻水出たっ」
モアイ像の鼻にあたる部分からティッシュを抜き取って渡してあげると、彼女はさらに笑い出した。輝夢がもらったハンドクリームに比べると完全にネタを引いてしまったようだが、こうやって彼女が笑ってくれたのならこれ以上のものもないだろう。
玲瓏とした星空が照らし出す夜道を、僕たちは笑い合いながら再び歩き出した。