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朝の生徒会室。その中で二人の男女がいた。
「聞いてくれ、穂乃華。勇者部が復活するぞ」
「お兄さま、それは本当ですか?」
「ああ、しかも部員の中にフェイ・バーナルがいる」
その名前に愉快さを覚えた男は「くくく」と不敵な笑みを浮かべる。
「まあ、バーナルさんが」
「バーナルのシンパどもめ。何を狂ったか知らんが、勇者部にバーナルを入れるとはな」
「勇者部って、どんなことをする部なんですか?」
「よくは知らないが、生徒会の使いっ走りだと聞いている」
「ですが、ここ十年くらいはずっと休部していたはずですよね?」
「そうだ。来る日も来る日も生徒会に奴隷のように扱われたせいで、部員もどんどん減少していったという経緯があったからな」
「そうだったのですか……」
「つまり、勇者部にバーナルが入るということは、バーナルを奴隷のようにこき使えるということだ!」
「でも、バーナルさんが大人しくお兄さまに従うでしょうか?」
「最初は少しだけ。それから徐々に徐々に仕事量を増やして、それから適度に飴を与えてやるのさ。それで従順な奴隷の完成だ。そして、完全に従順になったあかつきには……」
男は下卑た笑みを浮かべる。
「そこまで深い考えがおありだったのですね。さすがお兄さまです」
「勇者部が復活するということは嫌なことはすべて連中に押しつけられるということだしな。これを機に予算削減を一気に推し進めてやるぞ」
「具体的には」
「ずっと前から暖めていた各部の予算削減を断行するのだよ。もちろん、それをやれば生徒会への批判は避けられない。だから、予算通告のすべてを勇者部にさせるのだ。そうすれば生徒会への批判を逸らせるはずだ」
「さすがお兄さまです。やり口がとっても汚いですわ」
「ボランティアの地味で汚くてきつい清掃活動なんかも生徒会の名前を使ってどんどん請け負うんだ。でも、作業なんかはすべて勇者部に押しつけてやるぞ。そうやって卒業までに学園側のポイントをガンガン稼いでやる!」
「さすがですわ、お兄さま!」
兄を褒める言葉とは裏腹に、少女は勇者部が衰退した理由を何となく理解したのであった。
そして、調子に乗った男の高笑いが止むことはしばらくなかった。