夜の魔物
煙のような雲が夜空を流れて行く。
その向こう。
大きくてまあるい赤い月佇む。
夜を不気味に赤く照らす月。
その下。
見上げる僕が一人。
赤い月を見ると、体内の血液が騒ぐ。
全身が震える。
鼓動が早くなる。
血が、欲しくなる。
美しい女性の美しい血液が欲しくなる。
白く生え揃った歯の一部が、牙に変わる。
全身が血を欲する。
赤い月の夜、僕は化け物に変わる。
女性を誑かし、血を吸い尽くす魔物になる。
今夜も僕は赤い月に抗えず、夜の魔物になる。
美しい血を持つ女性を求め。
赤い月照らす夜の中を彷徨う………
美しい女性へ
僕に貴女の血液を飲ませてください。
なんて……
あなたさまの刹那の時間をくださり、ありがとうございました。