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世界は違へど楽しみたい  作者: 固まった雪玉
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第1話 金髪赤眼の少女

 太い木々が林立する森の中で一人の少女が追われていた。

 追ってきている相手は木の幹よりも太い体を持ち、腹に3本の傷痕がある大蛇だった。


 彼女は全身に擦り傷や打撲を受けており満足に走れる状態ではなかった。だが、大蛇もその巨大な体躯の至る所に切り傷に火傷、矢が刺さっていた。さすがにそれでは速度は落ちそうにないが恐らく矢じりに毒でも塗ってあったのだろう動きは何処と無くぎこちなかった。


 矢を放ったその彼女は大蛇が通りにくい木々の隙間を縫うように跳んで移動している。


「もう少し、もう少しでっ…」


 彼女は大蛇から逃げ切る為に他の階層に移動するための階段を目指していた。


 ここは森に見えて森ではない、“塔”と呼ばれる世界に一つだけ存在する力試しの場所で、その十三階層である。木など流れる小川は本物だが日の光はこのエリアの天井の一部が光っているものだ。つまり森モドキと言えよう。


 各エリアには魔物がいる、勿論塔の外にも魔物はいるが、外の魔物よりも塔の魔物の方が強い。まさしく力試しには持って来いという場所なのだ。


 ここに来る者達は大半が力試しと素材集め目当てで訪れる。ここの魔物は強い分レアな素材が手に入るのからだ。


 彼女は力試し…ではなく、更に強くなるためにこの塔に入ったのだが、如何せん自分より強い敵を標的にしていたので上の階層に行ってしまった結果がこのザマである。


 しかし彼女の実力なら少し格上の相手と戦った所で怪我はするものの逃げなければならない状況になんてならないはずなのだ。


「くっ……!」


 少し開けた場所に出てしまい大蛇のしなる尻尾が顔や胴を掠め、彼女の身に付けている鈴のようなネックレスがリンと鳴る。


 彼女は大蛇の猛攻をすんでのところで躱していた。避ける際に腰に装備している短剣で切りつけていたがほとんど効いていなかった。


「やっぱりっ…これじゃ効かないか…」


 巨体だから刃が奥まで通っていない、どころか鱗に傷がつく程度でしかなく、肉まで届く斬撃が少なくてダメージは少なかった。


 短剣だからではない。勿論短剣では厚い鱗に阻まれて刃が通らないことだってある。しかし、そんなことではない。大蛇がこの階層で出現するはずのない強さをもっており、そこいらの魔物の持つ鱗よりも何倍も強堅な鱗だからだ。


 彼女は腰を少し折り曲げて着地する。ほぼ同時に彼女に向かって振り下ろされる尻尾を、体を捻り横に跳んでギリギリで避ける。


「特殊個体にっ…遭遇するなんてぇっ…私も運が悪い…うわっ!」


 彼女が体を反らせ大蛇の横薙ぎの尻尾を躱わす。そして空を切った大蛇の尻尾がそのままの勢いで、大蛇の周りを一周して二撃目となって放たれる。彼女の体は反ったままだったが、そのまま上に跳躍し大蛇の尻尾を手で突いて大蛇より高い空中に身構える。


「~っ…!、くらえっ!」


 彼女は肩に掛けてあった矢筒から最後の矢を取り出し大蛇に向けて放った。

 矢は大蛇の左目に刺さり、大蛇は大きな声を出してのたうち回った。


「っ!…よし…今だ…!」


 彼女は膝を曲げ地面に着地する。空中に飛ぶ時に手を突いた時もそうだったが少し無茶な行動をすると体が痛む、だが彼女は直ぐに駆け出した。痛みで暴れまわる大蛇を横目に脱兎の如く全速力で走った。


 五分程走っただろうか、視界の悪い森の中で倒れている大木や三メートルくらいの高低差がある崖を壁蹴りで跳んで受け身をとって降りた。

 障害物で足が止まらないように、とにかく無茶な動きをしたせいで体が軋み、息も絶え絶え、体力は既に底を突きかけていた。一回止まってしまえば動けなくなる程に体力は限界を迎えていたが、目的地の階段が見えた。


「やった…間に…合っ…た…」


 彼女は見えた希望の光に向かってガクガクと震える足を動かす。階段前の少し開けた場所まで来るとあまりの緊張感が続いたせいか安心して気を緩めてしまった。


 次の瞬間、彼女の体は空中に舞っていた。大蛇の尻尾が容赦無く彼女の横腹を直撃したのだ。


「かっ…はっ…!」


 そしてそのまま彼女はその場から十メートル以上横に飛ばされてしまった。地面に勢いよくぶつかり手足が投げたされた状態で地面を転がる。


 彼女の体は地面と擦れて擦り傷だらけ、血も滲み出ている。しかも今の一撃で右腕といくつかの肋骨が折れてしまっていた。

 どうやら肺に肋骨が刺さってしまったようで息がまともに出来ずにとても苦しそうだった。ひゅーひゅー、と彼女の口から息が零れる、彼女はもう限界だった。


 だが無情にも大蛇が迫ってくる、勝利が決まったのを見越してか、ゆっくりとした動きで獲物を嘲笑うかのように舌を出して迫ってくる。


 距離が近づく度に恐怖が刻み込まれる。彼女は自らの死がそこまで迫っているのを肌で感じていた。


「負け…ない……絶対に…負けないっ」


 それでもなお最後の力を振り絞り、反撃する為に大蛇から離れようとする。右腕は使えないから左腕だけで地面を這って距離をとり、口で短剣を咥え大蛇を見据えてフラフラになりながらも立ち上がる。


 …がしかし、大蛇が彼女の体に巻きつき締め上げ始めた。


「あ…おあ…あ゛ァ゛ァ゛…」

(死ぬ!こんなところで!死にたくない…嫌だ…誰か助けて…)


 骨は砕け、五臓六腑が今にも口から吐き出そうだ。締め上げられ頭に血が上り、目に力が入る。目は充血し、血の涙が溢れ出る。もう目の前の景色なんてぼやけて映らなくなっていた。


 それでも体から魔力を放出し、周囲を探り勝ち筋を探る。だが意識はもう消えかけていた。

 薄れ行く意識の中で助けを求めるように手を伸ばした。


 すると伸ばした手の先で魔力反応があった。それと同時に彼女の身に付けていた鈴がリンと鳴り、彼女と大蛇を白い光が包み込んだ。


 光が収まるとそこには彼女と大蛇の姿はなかった。

初めての投稿です。

何か至らない点などありましたらコメントでご意見お申し付け下さい。よろしくお願いします。

あらすじはマジで無理でした。

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