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6.走る凶器

「おい! 鉄の中にいる奴は出てこい!!」


 盗賊達が魔動力機関装甲輸送車(ファランクス)を取り囲み、装甲を棒で叩いて大きな音をたてる。

 今日は荷物だけを運んでいるため、乗っているのはブルースのみ。

 流石のブルースも相手が盗賊や物取りの類だと理解しているので、魔動力機関装甲輸送車(ファランクス)から出るような事は無い。


「聞こえねーのか!? さっさと出て来ねーと力尽くで引きずり出すぞ!!」


 防弾のフロントガラスから外を見ているが、盗賊達も棒で叩く以外にできる事がない様で、一応武器を手にしているが鉄の塊に武器を振るうつもりもないようだ。


「この魔動力機関装甲輸送車(ファランクス)には普通の武器は効かないから、無視して進んでも良いんだけど……僕以外の人が襲われたら困るよね。よし!」


 ドアミラーなどを確認すると、盗賊達はキレイに魔動力機関装甲輸送車(ファランクス)の周囲を囲んでいる。

 ブルースはギアを入れて2WDのスイッチを押し、ハンドルを大きく左に切るとアクセルをべた踏みした。


 後輪だけが高速で回転し、魔動力機関装甲輸送車(ファランクス)は左に進もうとするがハンドルをMAXに切っているため、後輪だけが横滑りを開始、まるで龍のシッポのように車体を振り回すと盗賊達を跳ね飛ばしていった。


 一回転し、道には丸くタイヤの跡と砂ぼこりが舞っていた。

 盗賊達は……悲鳴を上げる間もなく伸びてしまった。


「やったね! 縛り上げて、街の衛兵に突き出してやろう」


 ロープで十人ほどの盗賊を縛り上げ、魔動力機関装甲輸送車(ファランクス)の屋根から吊り下げて移動を再開した。


「ねぇ? ブルースはランクが上がったばっかりなのに、なんでもうレベル10なの?」

「それはそうさ、ランクが上がったらレベルは1だからね、あれだけの距離を移動し、盗賊まで倒せば上がるよ。むしろ相性補正が無いから遅いくらいさ」


 天界でその様子を見ていた二人の神は、ステータスを確認して話をしていた。

 ちなみにステータスは神にしか見えず、人間たちは自分にレベルがある事を知らない。


「戦わなくても上がるの? それってヌルゲーじゃない?」

「車両だからね、車両の本分は移動、しかも輸送車だから荷物を積んで移動したら追加経験値が入るんだ」

「わは、それってさ、もしかして簡単に第三ランク世界の武器まで解放しちゃわない?」


 男神はふと考えこみ、唸るような声と共に口を開く。


「第三ランク世界のファランクスは……マズイな……」

「あら、あなたがマズイって、よっぼどイケナイ武器なのかしら?」

「イケナイというか、ブルース一人で一国の戦力に匹敵してしまうかな」


 女神は目をパチクリし、下界を映す丸いスクリーンを見る。

 ブルースが魔動力機関装甲輸送車(ファランクス)で移動しているのを見ているが、すでにヤバイ程の戦力なんじゃない? と考えている。


「これ以上は何を出しても大差ないんじゃないの?」

「いやいや、魔動力機関(まどうりょくきかん)装甲輸送車(そうこうゆそうしゃ)は戦力的にはあくまでもサポートの立場だからね、直接戦闘に参加しても、今みたいに跳ね飛ばすのが精々さ」


 その跳ね飛ばす威力が大きすぎる気がするが、第三ランク世界は更にヤバイのだろうか。


「まぁ良いんじゃない? どっちにしても私達は見てる事しか出来ないんだもの」

「それはそうだけど、世界のバランスが……」


 男神は煮え切らないようだが、女神は全てを受け入れるつもりのようだ。

 どうやら自分がやった事への覚悟は出来ているようだ。


 ブルースは街に到着し、門番に盗賊達を引き渡した。

 やはりというか、盗賊達は前科がいくつもあるらしく、賞金もかけられていた。


「凄いなブルース! お手柄だぞ!」

 

 門番たちは「これで被害が減る」と喜んでいる。

 荷物を所定の場所に運び、帰りに必要な物を買いそろえ、賞金を手に帰路に就いた。


「へぇ、あの鉄の馬車にはそんな使い道もあるのかい?」

「街の人達は、ブルースの馬車に乗るのが楽しみといっていましたし、それほど安全なら更に嬉しいわね」


 叔父・叔母の家に戻り、今日の出来事を話ていた。

 随分とこの家での生活にも慣れたようで、子供のいない叔父夫婦にとって、離れ離れになっていた子供が帰ってきたような感じだった。


「そうだわブルース、明日時間あるかしら? 町長さんがお願いしたい事があるそうだけど、町長さんに会ってきてくれる?」

「ええ、大丈夫です。明日町長さんの家に行ってみます」


 町長から直接呼ばれるのは珍しい。

 大体は秘書なり代理人が話をするのが常だ。

 翌朝、早速ブルースは町長宅を訪れた。


「おはようございます、ブルースです」


 街でもかなり大きな屋敷だが、木製の両開きの扉が音をたてて開く。


「おはようございますブルース様。町長がお待ちですので、こちらへどうぞ」


 執事らしき白髪の老人に案内され、三階の奥の部屋へと歩いて行く。


「ご主人様、ブルース様をお連れしました」


 「入ってもらえ」扉の中から声がすると、執事は扉を開けて部屋の中へと案内する。

 大きな部屋の中には高級な調度品が置かれ、町長らしき口髭の紳士は書類の手を止めて立ち上がった。


「ようこそ、私が町長のキリアムだ。ブルース君だね? 君にお願いしたい事があって呼んだんだ」


 そう言ってソファーに座る様に促され、町長はブルースの正面に座る。

 そして中央のローテーブルに数枚の紙を並べる。


「君にお願いしたい事というのは、湖に住むレイクモンスターの討伐だ」

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