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100.意地と命の天秤

 ブルース達から逃げた宇宙船は、そのまま母星へと戻るのかと思いきや、アリアルファ星系にもう一つある生命体がいる星へと来ていた。

 そこではギリギリ人類と呼べる猿人が生活をしていた。


 ある場所では森の中で、ある場所では山岳で、ある場所では広い平野で、木の枝や洞窟を掘って生活している風景が見える。


「なぜだろうな、コレを見ていると安心する」


「こいつ等がもう少しだけ進化したら、俺達をビビらせる様になるなんて考えられませんよね」


「わからないよ? 実はこいつ等も信じられない程凶暴かも」


 ディディの言葉にため息をつくパイロット達。

 十三人が中型宇宙船のコックピットのシートで好き勝手にくつろいでいたのだが、いやな事を思い出したのか苦い顔をする。


「ディディのバカ野郎! いやな事を思い出させるんじゃない!」


「ええ!? ご、ごめん」


 しかしそろそろ現実逃避も終わらせようと、隊長が重い口を開く。


「まあいいさ。それで今後の予定だが、もう一度あの星に戻り対象の二体を始末する。他の現地調査員の話では仲間がいる気配は無いようだから、何としても始末して母星に帰る」


「でも隊長、映像では見ましたけどね、あのデッカイ鳥、あれはどうするつもりっすか? 始末しなくていいんすか?」


「あれは鳥ではない可能性が出てきた。そもそも宇宙空間で翼を羽ばたかせて飛べるはずがないし、あの移動速度は生物ではありえない。恐らくはあのアンドロイドを制作した者と同一人物が作った機械だと思われる」


 「ああ~」と一同が納得する。

 確かにあんな鳥がいるなどとは考えにくいだろう。

 普通の鳥では無いから存在しているのだが、全く生態系の違う文明ではそんな事を言っても始まらない。


「とにかく、未発達の文明を相手に負けを喫したのだ、任務を完了させるまで母星に戻れるとは思うなよ」


 ・

 ・

 ・

 ・


「姉さん、シアン、食事が出来たよ」


 もう日が沈み、ブルースは夕食の準備を終えたので、二人を部屋に呼びに行った。

 オレンジーナの部屋の扉をノックするが返事がなく、一声かけて扉を開けた。


 中ではシアン、オレンジーナ、シルバーの三人が氷漬けになったローザを囲んでいる。


「シアン、姉さん、食事ができたよ」


 ブルースは声をかけるが反応したのはシルバーだけで、残りの二人はずっと話し合いをしている。


「御二人とも、マスターが食事を用意してくれましたので、休憩を取られてはどうですか?」


「シルバー、もう一度スキャンデータを見せて」


「それとローザの生体反応が消える直前の話を、もう一度聞きたいんだな、ダナ」


 すっかりブルースには理解できない内容になっていた。

 シルバーは少し戸惑うのだが、ブルースが首を縦に振ったのでシアンとオレンジーナに情報を提供する。


 ローザの蘇生が失敗した日、ブルースは怒りのあまり狂ってしまいそうだった。

 しかし蘇生に失敗し、ブルース以上にオレンジーナが取り乱したお陰で、ブルースは冷静さを取り戻した。


 それからはひたすらローザの体を調査し、シアンとシルバーもそれに付き合っている。


「マスター、申し訳ありませんが、二人の食事を部屋に運んでいただけますか? 必ず食べて頂きますので」


「わかったよ」


 オレンジーナの部屋に二人分の食事を運ぶと、ブルースは今に戻ってきた。


「二人は今日も研究漬けですのね」


「うん。本当は僕がもっとしっかりしないとダメなのに、みんなにまかせっきりにしちゃって……」


 イスに座るとエメラルダと二人で静かな食事が始まった。

 最近はずっとエメラルダとの食事が続いており、シアンとオレンジーナの体調が心配ではあるが、シルバーは常に二人の体調も見ているようだ。


「そうはおっしゃられても、今お兄様が出来る事はありませんもの。ローザさんが生き返ったら、二人をねぎらってあげてくださいまし」


「そうだね、僕が出来るのは二人のフォローだね」


「ええ、それにローザさんが生き返るのは、私達の願いでもありますもの」


「ありがとう、エメ」


「お礼なんていりませんわ」


 静かな夜が終わり、翌朝には家に訪問客が現れた。

 ブルースの兄、イエロウビーだ。


「ビー兄さん? 一体どうしたの?」


「話がある」


 挨拶もほどほどに、ブルースはイエロウビーを家に招き入れる。

 イエロウビーは少し居間を見回し、少し残念そうな表情をした。


「あれ? ビー兄さんどうなさったの?」


 エメラルダが珍しい客人に驚いているが、とりあえずお茶を用意して迎え入れる。

 イエロウビーは右手を軽く上げるだけで挨拶を済ませ、イスに座り大きく息を吸って話を始めた。


「新しく遺跡が発見された。調査をして欲しい」


「ビー兄さん? 口数が少なすぎて説明になっていませんわよ?」


「新しい遺跡が見つかったのはいいけどさ、それって国が調査をするモノじゃないの?」


「もうやった」


「そうなんですの?」


 そこから無言になる。

 

 「んもぅ! ビー兄さんは無口にも程がありますわ! それで、遺跡の調査をやったのに、どうしてブルー兄様に調査を依頼しますの!?」


「ブルーが使っている武器と似た絵が描かれていたからだ」

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