二話
――――――ずいぶんと昔の夢を見ていたようだ。
あの頃は自分のこと、狐だと思ってたんだよなぁ……。
昔のことを思い出し、少し悲しげな表情を浮かべる。
「イオ〜?起きた?」
ひょこっと、扉の隙間から顔を出すナオ。
「うん、起きてるよ。おはよう」
「おはよう!もう朝ごはんできてるって!すぐ来てね!」
そう言うと、イオの部屋から出ていった。
「ボクも行こ」
服を着替えて部屋を出る。
リビングに入ると、容姿端麗な男性が振り向き、柔和な笑みを浮かべる。
「おはよう、イオ」
「おはよ、リオウ」
「え〜、リオウだけ?僕は??」
「ナオはさっき言っただろ」
「ん~だめ!自分も!」
「はいはい。おはよう」
「ん!おはよう!!」
日課の挨拶をして床に座る。
コト、とちゃぶ台のようなテーブルに置かれる皿には、たっぷりと肉が入っている。
「「「いただきます」」」
真っ先にパクついたのはナオで、美味しそうに咀嚼する。その様子に苦笑いをしながらも、イオとリオウも食べ始める。
「んっぐ…あ、リオウ、今日って村に行く日だよね?」
「ああ、もうそんなに経っていたか……そうだな…イオ、ナオ、今回は二人で行ってみるかい?」
即座に飛びつくナオ。
「いいの!?やった!!」
「はしゃぎすぎては駄目だよ」
「うん!!」
うなずいたものの、嬉しくてたまらない、と言う風に尻尾をブンブン振りながらキラキラした目でイオとリオウを見る。
そんなナオに対して、イオは浮かばない顔をしていた。
「…イオ、ナオ一人では危ないから一緒に行ってくれないかい?」
「………リオウは……?一緒に行っちゃいけないの…?」
「……二人で、行きなさい」
優しい笑みを浮かべながらイオを見つめてくるリオウ。その表情が、イオにはいつものリオウに見えなかった。何かを、決心したような、そんな表情に見えた。
そんなリオウに、どこか違和感を感じながらも、チラリとナオを見る。
ナオは未だにキラキラした目でこちらを見つめてくる。
「え…っと、……んん……わ、かった……ナオと、一緒、…」
「やったーー!!」
「ただし、一人になってはいけないよ。常に二人で行動しなさい。分かったかい?」
「はーい!」
「うん、それじゃあ準備をしてきなさい」
「うん!いこっ!イオ」
「……うん」
それから数十分後。
「それじゃあ行ってくるね!!」
「行ってきます」
「気をつけて」
背を向けて、走り出そうとしたときリオウに呼び止められる。
「イオ!」
「っ、なに?」
ビックリして肩を揺らす。
「………ナオをよろしく、頼んだよ、イオ」
「?…うん、大丈夫だよ。ちゃんと二人で行動するよ」
「あぁ、気を付けて、行ってくるんだよ」
「……………―――リオ」
「ねぇー!!はやく!先行っちゃうよ!」
「あ……」
「イオ」
リオウの手がふわりと頭に乗る。
「行ってらっしゃい」
「っ………………うん、行ってくるね」
違和感を感じながらも、ナオと一緒にリオウに手を振る。
(いつもと違った……なんで……?)
考えても考えても分からなかった。
「イオ?どうかしたの?」
ナオが不思議そうにこちらを見る。
「……ううん、なんでもない」
ナオには、イオとリオウの会話が聞こえてなかったため、イオの様子に疑問を持つ。
(……どうしたんだろ……)
イオは気づかれていないと思っているが、小さな頃から何をするにも一緒にやってきたナオからすれば、すぐに分かるのだ。それがどれだけ小さな違和感でも。
それでもその事に気づかない振りをする。
だって、イオが気づいて欲しくなさそうにしているのだから。
「…………いこっ!」
「うん、そうだね」
二人で一緒に駆けだした。
「……二人とも、強く、生きるんだよ」
もう遠くへ駆けて行った二人の背中を見つめながら、
「じゃあね、バイバイ。……………愛してるよ。ナオ、イオ」
ふわりと、笑った。
内容分かりにくいかもです。すみません。