3章 22話 王都道中
新年あけましておめでとうございます。
活動報告では挨拶をしませんので、こちらで挨拶さえて頂きます。
今年は、去年以上に多くの話を書けたらなあと思います。
よろしくお願いします。
まさか、こんな形で王都を訪れることになるとはな……。
今俺は馬車に揺られている。出頭要請を受けた俺は、騎士達が準備していた馬車に3人で乗り込んだ。
俺、ノエリア、後アイスを作る時にいつも関係している氷魔術師だ。
あの時、俺はノエリアに冒険者ギルドへ行かせ、すぐに依頼を出させた。依頼の内容は、「司祭の護衛」だ。
冒険者ギルドの俺関係の依頼は、真っ先にとある者に行くようになっている。高ランク冒険者である氷の魔術師にだ。
一番最初にアイスの依頼をしてからと言うもの、あの魔術師は冒険者稼業を半引退し闇の女神教の村に住み着くようになった。
今ではアイス部門において、魔術師の統制と管理をしていると言うよくわからない役職についている。
しかし、普段はこれといってとくにすることもないため、俺が依頼を出すと最優先で受けてくれ続けた結果、俺専用の冒険者のような立ち位置になってしまったのだ。
「で、実は来月は私の番なんですよねぇ」
番とは、アイス委員会で行われているアイスを振る舞う番である。
他の席の者たちは金なり権力なりがあり、新しいレシピや調理法を確立する術があるのだが、この氷の魔術師だけはそんな余裕はないため依頼を受けるついでに聞きに来るのだ。
俺も闇の女神教に味方してくれる者を無下にする気はないし、積極的に協力してくれる者ならなおさらなので喜んで教えている。
「前回は、黒糖のアイスって言うのが出てきたんです。
黒糖は質も値段も下がるって言われているんですが、
あの雑味が絶妙にいい味を出していて良かったんですよね。
あんな……とは言わないですけど、何かありませんか」
アイスに黒糖を使うとは、なかなか思い切ったな……。
なら、あれもいい感じか。
「紅茶のアイスだ」
「へっ?」
「だから、紅茶だ。
方法はなんでもいい。
紅茶を濃厚に出したものを一度乾燥させ、
粉状になった物を入れてもいいし、
なんなら紅茶の葉を乾燥させた物を
粉状になるまですりつぶし、それを
混ぜても良い。
色んなアイスを作った上で、それを上から
掛ける、もしくは混ぜるでも良いし、
色んな楽しみ方ができるぞ」
「それいいですね!
もらいました! もう返しませんからね!」
氷の魔術師は急いでメモを取る。
別にアイスのネタなんて、現代の知識でいくらでもあるから構いやしないんだが……。
「それにしても、今回は未だかつてない出来事だな。
まさか王都に呼ばれることになるとは。
いい加減、何が原因かわかったりしないものか?」
俺の隣で、常に外を見て警戒しているノエリアが言った。
「流石に俺は神じゃないからな。
なんでもかんでもわかるわけじゃないぞ。
しかし、アリスの守護のためにシェリーを
連れて来れなかったのは痛いな。
一応、シモン経由でクラーセン家にも
ヘルプを頼んだから、教会は平気だろう。
ニルダも急ぎ追いかけてきているはずだが、
そうすぐには追いつけない。
何かあったらお前たちが頼りだからな、
頼んだぞ」
「任せろ。姉さんがいない穴は埋めてみせる」
「アイスのためならなんだって頑張ります!」
一人方向がかなり違うやつがいるが、無視することにする。
これ以上は話すこともないため、席に体を預けることにした。
「おい、降りろ!」
大きな声で目を開ける。決して寝ていたわけではない。この声、あの騎士の隊長のものだ。
ついたにしては早い。まさか、ここで俺たちを始末するつもり……? と思ったが、単に休憩らしかった。
普段から態度がやたらと悪いから、こちらが勘違いしやすいのだ。しっかし、態度の割に休憩を定期的にとるあたり、律儀なのだろう。
「飲め」
馬車の後ろに積んであった簡易テーブルに木で作られた器が乗っていた。茶のようなものが入っていて、その温かさから湯気がたっている。
俺はまだこの騎士隊長は信用できない。これが眠り薬入りのものかもしれないと言う恐れがある。
「ウィリアム司祭、こちらを」
後ろから、氷魔術師が俺に水の入ったカップを出してくれた。俺はそちらを飲むことにする。
「ぐぬぬ……大丈夫だ! 何も入ってない!
ほら!」
あからさまに毒入りを警戒した俺たちに対し、自分の無実を毒見を持って証明しようする騎士隊長だったが、カップ全ての茶を飲み終わり、更にポットに入っていた茶をカップに注ぎなおし、飲んだところでひざから崩れ落ちた。
死んだわけではない、ただ寝ているようだ。
騎士隊長が崩れ落ちると同時に、舌打ちが聞こえた。
「これをやったのはどいつだ!」
ノエリアが怒りのあまり行動を抑えられず、すでに弓を絞った状態で構えている。
「ケッ。お前らが飲めばよかったのによ。
俺らは隊長みたいに、お前らに優しくしようとなんて
しないからな。覚えておけ」
騎士隊長の後ろに控えていた者の一人がそう言うと、その者を先頭に倒れた騎士隊長に歩み寄りかついでいった。
騎士隊長があのザマでは今日はこれ以上進むのは不可能だろう。
その日はそのまま野宿となった。
「あいつら、見境がなくなってきているな……。
しかし、まさか隊長と隊員で考えが異なって
いるとは。
ウィリアム司祭、どう考える?」
「んー……騎士隊長は強引なやつだが、騎士としての
誇りを大事にしているらしいな。
隊員も、本来なら大事にしているのだろうが、
今こうなった原因のせいで、それさえもする余裕が
なくなってきているのだろう。
それがわからないことにはなんともだな」
「結局、八方ふさがりと言うわけか」
「ああ。明日、おそらく騎士隊長と話す機会が
あるだろうから、その時に聞けるだけ聞いてみよう。
ダメで元々だ」
食べ物も信用がおけないため、ノエリアがなんとか持ってこれた分とアイスが持ってきた分で食事をとることにした。
二人で二日分の量しか用意できなかったため、三人で分けると一日分くらいしか持たないが、何かあった時のため少しだけ食べることにした。
これで、なんとか三日分くらい持たせることができるかもしれない。
そして無駄に起きて空腹を刺激しないようにするため、その日はもう寝ることになった。
ノエリアと氷魔術師が交互に寝ずの番をかってくれるため、俺はゆっくり寝させてもらえることになった。
馬車の中に、ノエリアが持ってきた毛布を敷いて寝る。最初の番は氷魔術師の様で、俺の隣にはノエリアが添い寝のような形で寝ていた。寝息は立てていないため、今はまだ目を瞑っているだけだろう。
すぐには寝付けないため、改めて今回のことを考える。
騎士達の態度は異様だ。なんと言うか、親の仇のような態度のように思える。しかし、俺たちは彼らの親を殺したりはしていない。
では、なぜ彼らは俺たちに恨みのようなものを抱いているのか。どうしても、後一歩踏み込んだところで行き詰ってしまう。
『それはですねぇ、昔のぉ、闇の女神教の信者がぁ、
国の大臣を殺しちゃったからなんですよぉ』
突然頭の中に声がした。この間延びした声は、あいつだ。
(おい、どういうことだ。簡潔に言え)
『えっとぉ、一時期ぃ、犯罪者たちがぁ、
闇の女神教を信奉しててぇ、その時にぃ、
討伐されずに残った犯罪者がぁ、
この国の大臣をぉ、殺害してしまったんですよぉ。
その大臣はぁ、平民上がりの騎士を丁重に扱うぅ、
博愛主義的な考えの持ち主だったのでぇ、
恨みを買っていたんですよぉ」
間延びした声のせいで全く簡潔そうじゃなくなっているが、あいつにしてはしっかり喋った方なので、敢えてそこには触れないでおく。
(なるほど。つまり俺たちは、
大臣殺害の汚名を着せられているわけだ)
『そういうことにぃ、なりますねぇ」
(で、どうしてお前はそんなことを知っているんだ?
力を蓄えているんじゃないのか)
『え、えっとぉ……流石に暇でぇ、
ちょっとだけ遠見をしようかななんてぇ」
(だったら早く言えバカ!
そういう大問題になりそうなことほど、今じゃなくて
もっと前に連絡だろうが!)
「どうかしたのか? ウィリアム司祭」
喋ってはいなかったが、俺が闇の女神と会話したことで神経が逆立ったりしているのがわかってしまったのか、ノエリアが話しかけてきた。
「いや、なんでもない。ちょっと嫌なことを思い出してな」
「フッ……。
お前がそんなことを言い出すとは末期だな」
それだけ言うと、俺に背中を向けた。
(ともかく、真実がわかなければ行動のしようがない。
それに、ここでは何もできん。
いいいか、追加で何かあったら連絡しろよ!
絶対だからな!)
『はいぃ……』
闇の女神のせいで真実に大分近づいた。
つまるところ、彼らは自分たちの敬愛する上司を殺されてしまったのだ。
しかも、闇の女神教と思わしき犯罪者たちの手によって。それを、俺たち闇の女神教の仕業だと思ったのだろう。いや、実際闇の女神教の仕業にさせられそうになっているに違いない。
その大臣を殺しても、闇の女神教に何も旨味がないのだからちょっと考えればわかることなのだと思うが、彼らにこのことを吹き込んだやつがいると思った。
明日は、騎士隊長共々そこに突っ込もう。何も言わないなら、敢えて言わせるように誘導しよう。何せ、事実はすでに知っているからな。
本小説を読んでいただき、ありがとうございます。
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また、同時連載中の「1から始まるダンジョンマスター」の方もよろしくお願いいたします。




