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3章 21話 出頭要請


「ウィリアム司祭。

 最近たるみすぎなのではないか」


部屋のソファーで寛いでいると、部屋の入口付近で俺の護衛をしているノエリアからそう言われた。

今日の俺の護衛はノエリアの当番だ。最近は大分平和になってきているので、ニルダとノエリアは俺の護衛を交互にするようになった。

護衛についてない方は非番となり、その非番の日を活用して冒険者稼業をするようになっているので、ニルダは今日は冒険者をやっているのだと思う。


話を戻すが、ノエリアが俺にそのようなことを言い方をしてたのには理由がある。俺が自由を謳歌しているからだ。

今まで闇の女神教には役付の者が俺しかいなかったので、闇の女神教として行う儀式は全て俺が行ってきた。しかし、先日助祭が誕生したことで俺の負担が半分……いや、半分未満になった。

若くなって健康的になった元修道士長がはりきって頑張ってくれているのだ。実際の年齢以上に若く美しく見える元修道士長はとても受けがいいので、本人も喜んでやってくれているだけでなく、村人たちも喜んでいるのだ。

目つきが悪いことで有名な俺なんかが行くよりよっぽど盛り上がる。


「10歳児に毎日こんなことをやらせてる闇の女神教が

 そもそもおかしかったんだ。

 だから、これでいい」


ソファーにどっかりと座って、暇であることを満喫している俺に向かって更にノエリアが追い打ちをしてこようとする。


「その言は間違ってはいない。

 だが皆の代理で言わせてもらおう。

 誰もお前のことを10歳児だと思ってはいないからな。

 アリスだけはお前との会話を拒んでいるから、

 10歳だと思い込んでいてくれてるかもしれんがな」


アリスは俺のことを嫌っているのか、避けている。そのアリス以外は俺を10歳と思っていないと言うのは納得いかないが、今はこの自由をいっぱいに感じることに幸せを見出しているから気にしない。


「まったく。

 ニルダ姉さんもなぜこんなやつを……」


ノエリアが何か言っているけど、知らない。今だけは俺の器は海より広大なのだ。


「ウィリアム司祭はいるか!!」


俺の自由を邪魔するかのように窓がビリビリと震えた。それほどの大きな声だった。

すぐにノエリアに目を向けると、頷いて窓に向かって声の主を確認しに行った。


「……知らないやつだ。

 しかし、立派な鎧を着ている。

 王都の騎士ではないのか」


もし本当に王都の騎士であれば、礼儀を持って接し応接間に通さなければならない。

応接室に連れてくるようにノエリアに伝えると、ノエリアは修道士の一人にそのことを伝えに行った。

しかし……。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、バンッ!!


「貴様がウィリアム司祭か!」


案内しようとする修道士を振り切って大男が部屋に入ってきた。鎧も特注のものだろう、豪華な飾りのようなものが設えてあった。

しかし、いくら王都の騎士だとしても宗教のトップに対してこの扱いは非常によくない。


「いきなり訪ねてきて無礼ですね。

 あなたは誰ですか? もし名乗らないのであれば、

 どこかの野盗が不法侵入してきたと手打ちにしますが」


大男の後ろにも騎士が二人ほど控えていて、俺の発言を受けて剣を抜いた。

その後ろにはノエリアがいて、すでに手首を捻って矢を構えている。ノエリアなら騎士たちが剣で俺を斬りつけるより早くに相手の喉を射抜くだろう。


「よせっ。

 噂通り口のよくまわる小僧だ。

 わしは王都の騎士だ。闇の女神領側の治安部隊の隊長している。

 今日は王都への出頭要請のためにここにきた!

 これがその書類だ!」


後ろに控えていた騎士の一人が剣を下ろし、丸められた書類を持って俺へ向けた。

手に取ると、王家の印が押されている。実際に王家の者が押しているわけではなく、文官あたりが押しているのだろうが。

木槌で蝋を割って書類を開くと確かに中身は出頭の要請書だった。しかし、理由が全く書かれていない。


「理由が書かれていない。理由を聞いても?」


「我々には理由は知らされていない!

 よって答えられん!

 さあ、来るのか来ないのか!」


騎士の隊長ともあろう者が、こんな脳筋でいいのかと思う。


「流石に王家の印の入った要請書に背くわけにはいかないな……

 わかった、行こう。

 だが準備がある。準備が整うまでの間、客間にて待ってて

 いただきたい」


「ダメだ!

 今すぐ来い!」


あまりにも話が通じない脳筋おじさんにため息が出る。


「騎士隊長。いいか、これは出頭『要請』書だ。

 要請であって強制ではない。

 わかるな?

 一日待てとは言わない、二刻ほどだ」


教えてやるように言ってやると、チッと舌打ちをされる。ちょっと態度が悪すぎやしませんかね……。


「仕方ない! だが、待つのは二刻だぞ!

 それ以上は待たんからな!」


そう言うと、客間に案内にする修道士について行った。

先ほどの喧騒から解放された部屋に残されたのは俺とノエリアの二人。


「おい司祭、本当についていくつもりか。

 何かあったらどうするんだ」


「あの書類……間違いなく王国の印だった。

 今回のことを企んだやつが間違いなくいると思われるが、

 出頭要請を無視すれば、次は国家反逆罪になる可能性まで

 ある。あの騎士達の態度を見て、それくらいのことがあっても

 おかしくないと思える。

 流石に従わないといけない」


いくら武に優れたノエリアとて国を相手にすることはできない。

それがわかっているから、致し方ないと言う俺の言葉を聞いて諦めるしかなかった。


「なぜ姉さんがいないときに限ってこんなことに……」


「もしかすると、ニルダの不在を狙われていたのかもしれない。

 騎士との戦闘となれば、お前よりニルダの方が上だしな。

 組みやすい方が護衛している時を狙った可能性は否定できない」


「ウィリアム司祭。せめて、姉さんが戻ってきてからに

 ならないのか?

 私一人ではお前を守り切れる自信がないぞ」


道中、罠を仕掛けられていて盗賊に襲われようものなら、ノエリアだけで俺を守るのは間違いなく無理だろう。

しかも、あの騎士達は守ってくれそうもない。かと言って、ニルダが戻ってくるには2刻どころか4刻あっても足りなさそうだ。


「流石にそこまでは待ってくれなさそうだな。

 ……俺に案がある。

 これを持って冒険者ギルドに行き、依頼を出してくれ。

 最優先と言伝もしてな。

 多ければ、二人くらいは護衛にきてくれるはずだ。

 俺はその間に、皆に伝言を書く」


ノエリアにメモを渡すと、今教会にいない助祭向けに言伝を書き始めることにした。

ノエリアはすぐに部屋から出て冒険者ギルドへ向かった。

二刻はすぐだ。すぐにできるだけやれることをしないと……。

そう思い、筆を走らせた。


本小説を読んでいただきありがとございます。

もし、気に入っていただけましたなら、ブクマ,評価,感想,レビューをよろしくお願いします。

また、同時連載中の「1から始めるダンジョンマスター」の方もよろしくお願いします。

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