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3章 20話 闇の女神の啓司4

長らく更新お待たせしました。


闇の女神様がお姿を隠された瞬間、ウィリアム司祭様は急ぎ足で礼拝室を出て行かれました。

ドアの閉まる音で辺りにいた全員が我に返り、騒ぎとなりました。司祭様が出て行かれたのはこうなるとわかっていたからなのか、それとも何か別の目的があったからなのかはわかりません。

騒然となった場を鎮める者がおらず少しの間だけ私も慌てていましたが、自分は助祭になったのだと言うことを改めて思い出し、声を出しました。


「皆さま、本日は私の助祭への儀に参加頂き、

 まことにありがとうございました。

 これからは一層闇の女神様への信仰を強く持ち、

 闇の女神教のために生きていきたいと思います」


「いや、本当にめでたい。

 信徒としてのあるべき姿を思い知らされた気分だよ」


「ええ、全くですわ。

 これからの闇の女神教は安泰ですわね」


「さ、皆さん。

 本日はこの後も村内で催し物がありますからな。

 色々と聞きたいこと、知りたいことがある人も

 多いと思いますが、今日はこのめでたき日を喜び、

 皆でこの喜びを分かち合いましょうではありませんか」


私の言葉に対し、私さえもなぜこの人たちがここにいるのかわからないと言う方々が口添えをしてくれました。

そして闇の女神様が降臨されたと言うことについて問い詰められる可能性があったところを、事前に防いでくれたのだと思われました。

納得のいかない顔でおられた信徒、そして国の中枢から訪れた役人の方、その他大勢の方が礼拝室から出ていかれると、取り残されたのは教会に住むものだけになりました。


「皆さん、礼拝室のカギを閉めて急いで居間に戻ります。

 惚けている暇はありませんよ」


皆に掛けた自分の声がいつもと違う気がしましたが、自分もまだ心を落ち着けていないのだとわかり、急いで居間に戻ることにしました。

戻る短い間に、先ほどまでにあったことを心の中で整理しました。

本日私を助祭に任命する儀がありました。通常の儀では、教皇様から任命を賜ります。助祭の儀であれば、大司教か司教が代理を務めることもありますが闇の女神教ではウィリアム司祭様より高い位の方はおられないので、ウィリアム司祭の任命により私が助祭になるのだと思っていました。

私は跪き目を閉じて司祭からの任命を待っていたのですが、そこで聞こえた声は司祭様のものではなく別の美しい女性の声でしたので驚きました。しかし、私のために行われている儀式だと思い目を開けることはしませんでした。

謎の女性の声が私の任命を告げる言葉が終わると、私の体がじんわりと暖かくなり、一体どのような神の奇跡を使われたのだとつい目を開けてしまいました。

私の目の前におられたのは教会にある像と全く同じ姿の女性、つまり闇の女神様でした。私の任命をしていた声はなんと闇の女神様の声だったのです。他の教会でも、女神様が直接声を掛けることなどほぼ皆無だと聞いていましたので、まさか自分の前に女神様が……と感動のあまりただ呆然とするしかありませんでした。

司祭様と女神様は同じ髪の色、同じ目の色。司祭様は本当に闇の女神様のお力を身に受けておられるのだと確信できました。

そして、闇の女神様はなんと私に微笑みかけてくださいました。その微笑みを保ったまま、溶けるようにして消えて行く女神様。そして先ほどの騒ぎがあり、今です。

心の整理が終わり、居間のテーブルに着くとすでに司祭様以外の皆が椅子に掛けていました。どうやら、私は考えながら歩いていたせいで遅かったようでした。


テーブルにいる皆に目を向けると、皆が私を見る目が違います。私ではない者を見ているかのような目でした。

なぜそのような目を、と思っているとリネットが私に声をかけてきました。


「あの……修道士長……いえ、助祭様で合っていますよね?」


何を馬鹿なことを。と思いました。確かに私は今まで修道士長と呼ばれていましたし、先ほど助祭になったのですから修道士長ではないことは間違いないのですが。


「もちろんですよ。ずっと一緒にいたではありませんか。

 闇の女神様が降臨されて、まだ心が落ち着いてないのでは

 ありませんか?」


「い……いえ、そういうわけでは……。

 あの、助祭様。多分ですが……若返っておられます」


若返る? 私の額には、貧しい状況をなんとかするべく積み重ねた苦労でできた皺が無数にあります。

その皺が今は伸びていると言うことなのでしょうか。それとも、助祭になれた嬉しさで私が笑顔でいるせいか、若く見えると言うことなのでしょうか。


「それはどういう意味ですか?

 この場で言う必要がありますか?」


もっと真面目な話をしたかった私は、リネットに辛く言ってしまいました。

先ほどの話であれば後でも構いませんし、今はただ闇の女神様が顕現された状況について話すことの方が重要に感じられて仕方ありません。

しかしリネットは急にきょろきょろと辺りを見渡し、何かを探し始めました。


「リネット」


ダークエルフのノエリアが教会に置いてある数少ない貴重品の鏡を持ってきてリネットに渡すと、なぜか私に向けてくるのです。

しかし、さきほど全員の私を見る目がおかしかったことを思い出し、皆を見渡せば全員が真面目な顔でこちらを見ていました。

なんとなくこの話はここで済まさないといけないと思い、リネットがこちらに向けた鏡を見ると、そこにいたのは闇の女神様に生涯を捧げた私ではありませんでした。

でも見覚えがあります。私の30前くらいの頃に似ていますが、あの頃の私はこれほどキレイではありませんでした。


「今の助祭様のお姿です」


自分の顔を鏡で見ていると言うのに、これが私の顔だと気づけませんでした。

鏡の中の私も、今の私と同じように驚いています。顔に手を当てれば鏡の中も私も一緒に顔に手を当てました。もう間違えようがありません。

なぜこんなことに……思い返すと、不思議な感覚に覆われたのを思い出しました。体がじんわりと暖かくなるような感覚です。最初は助祭になったことで力を得たからなのだと思ったのですが、今は違うと思えます。あの時、女神様が私に何かをされたのだと。

そして改めて感謝を捧げました。女神様は、助祭になってからも長く信仰できるように若返らせてくれたのだと。

どのようにして若返ったのかはわかりませんが、この答えはウィリアム司祭様にあると思いましたので、司祭様と話をしようと思いました。

しかし、司祭様は急ぎ礼拝室を出てからここに来る気配はありません。なんとなく、今は司祭様のお手を煩わせてはいけないのだと思いましたので、その場で皆で話し合いました。

何を話し合ったかと言うと、とりあえず本日は村の催しものを皆で楽しむと言うことです。その際、皆修道服を着て行くのは禁止にしました。修道服を着て行けばどうしても目立ちますし、先ほどのことをまだ気にかけている方に今回のことを聞かれると思いましたから。

そして私も、いつも修道服を着ていましたから修道服を着ていなければ私だとバレないと思いました。しかも、若返ったので判別がつく方もいないと思いました。


それぞれが好きなタイミングで村のお祭りに参加するように伝え一旦解散すると、私も部屋に戻りました。

途中司祭様の部屋の前を通りすぎたのですが、中からは司祭様が部屋で女性に説教をしている声が聞こえてきました。いくら司祭様が男性とは言え部屋に女性を連れ込むにはまだ若すぎるお年です。では何か理由があって部屋に女性と一緒にいるのだと思いましたが、司祭様の声の怒気はかなり強く、このような強い言葉で話さなければならない相手とは一体誰と思い、悪いと思いましたが少しだけ耳を澄ませて聞いてみると、女性の声はなんとあの時の闇の女神様の声に似ていました。

なぜ似ていたと判断したかと言うと、声のりりしさ、口調があの時の闇の女神様と一致しなかったからなのです。

りりしさや口調はともかく、もし司祭様の説教相手があの方だとするとこれ以上私のような者が聞いてはいけない話だと思い、部屋の前を去ることにしました。


その後、どうやら私以外にも同じように話を聞いた者がいたらしく、その後色々な噂が出回ることになったのですが、もし司祭様と話している方が「あの方」だとしてあなたはそのことをどうするつもりなのですか? と私が笑顔で問いかけると、皆が揃って口をつぐんでくれましたのでこの噂はすぐに収まることになりました。

改めて私を含む皆が認識したことは、司祭様は本当に不思議なお方と言うより、もう人間ではないのかもしれないと言うことでした。

実際、あの時私の目に映った女神様と並び立った司祭様は人間でいうところの血縁者としか思えないほどでしたし。

つ、つまり司祭様はもしかして女神様の……。


これ以上の詮索はよくないと思い、このことは考えないことにしました。私が先ほど考えたこともこのままお墓までもっていこうと思います。

とりあえず今は、格別に美味しいアイスを口いっぱいに頬張りながら、このような幸せをもたらしてくれた女神様と司祭様に感謝をするのみです。


本小説を読んでいただきありがとうございます。

気に入っていただけた方がおられましたら、是非ブクマ,評価,レビュー,感想をよろしくお願いします。

また、同時連載中の「1から始まるダンジョンマスター」のほうもよろしくお願いしまs。

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