3章 18話 闇の女神の啓司2
間が大分空いてしまいました。
決して書くのに飽きたわけじゃないんです。ただ時間がなかっただけ。
なので、今後も書けるときにしっかり書いていきますのでよろしくお願いします。
「これですぅ、これぇ」
闇の女神がアイスを食べながら感動のあまり泣いている。アイス食べたさに、助祭を増やさないか提案してくるなんてどれだけ駄女神なんだろう。
しかし、思い返せば前に闇の女神と会ったのはかなり前だ。その間力を蓄え続けていたのだから、たまには褒美をやらないといけないのではないか、そんな考えが浮かんだのでこうして俺の分を分けてやった。
本当ならこんなやつにくれてやる義理はないのだが、食べられないとわかったら勢いで信徒の前に姿を現しかねない感じがしたので、しぶしぶくれてやった。
「美味しかったぁ」
子供の拳大のアイスを食べ終えて満足そうにしていた。
わざわざ食べ終えるのを待ってから、重要な話を聞き出すことにする。
「で、一人増やさないかとはどういう」
「シェイクって言うのもぉ、食べてみたいなぁあってぇ」
ゴチンッ。
俺の話を遮るだけでなく、更にアイスを要望してきた闇の女神に拳骨をくれてやった。多少俺の手も痛かったが、それ以上に闇の女神は痛そうにしていた。
「痛いぃ、何するんですかぁ」
「何するんだじゃねえ。
一体お前は何しに来たんだ!」
「そうでしたぁ」
ポンと音がでそうな感じで、胸の前で両手を合わせる。どうやら完全に忘れていたようだった。
疲れる……こいつの相手はほんと疲れる……。
呆れている俺を無視して、闇の女神は今回の目的を淡々と告げた。
じっと力を蓄えながら俺たちの活動を見ていたらアイスが美味しそうだった。
けど、自分のせいで俺に迷惑をかけているのだから、欲望に従うわけにはいかないとずっと我慢していたのだけど、教会の人間だけでなく村の人まで食べ始め、とうとうアイスの日なんて言う行事までできてしまった。
闇の女神の村で行われる祭りなのに、自分だけが食べれないなんてずるい! 私も食べる! あ、そうだ。最近力を蓄えてたおかげで、一人くらい助祭を任命しても全く困ることはない。
じゃあ、助祭を増やす目的のついでってことでアイスを食べさせてもらおう!
「バカか!
だったら先に助祭を増やせよ!
そしたら少しは見直してやったのに!」
話を聞いていてさらに呆れてしまったため、もう一度頭に拳骨を落としてやった。
今度は闇の女神は声もあげずに頭を押さえてうずくまっていた。いい気味だ。
「で?
誰を助祭にするつもりなんだ?」
「誰にしましょう?」
涙目のまま俺に尋ね返してくる。ノープランかよ。
あんまりげんこつを落としすぎて、本当にバカになってもらっては困るので拳骨を落とすのはそろそろやめておくことにした。
それに、助祭が増えて助かるのは事実だ。
助祭に任命できそうな人材を頭の中でリストアップする。
まず、リネットだろ…………あれ? ほかにいなくないか? ニルダやノエリアは無理だ。一度闇の女神教と縁を切るような形になっているから、世間体が悪い。
シェリーやフェルメールは他教の信徒だから論外。アリスやシモンは、若すぎるし何より闇の女神教を信奉してるとはとてもじゃないが言えない。二人とも、若さについては俺に言われたくないかもしれないが。
困った。俺の周りには助祭にできそうな人間がリネットしかいない。しかし、本当にリネットを助祭にしていいのか? もっと適切な人間がいるのではなかろうか。
出来れば年配で、ずっと闇の女神教を信奉していて、それでいて真面目で、闇の女神教にいなくてはならない……あれ、いたぞ。
「修道士長だ」
そうだよ。なんで気づかなかったんだ。微妙に近くにいなさすぎて気づくのが遅れた。ほぼ人生を闇の女神に捧げてきたような人間が。むしろ俺なんかより司祭にふさわしい感まである。
「修道士長ですかぁ、素晴らしいですねぇ。
彼女はぁ、ずっと闇の女神教を信奉し続けていてぇ、
私のせいで落ちぶれてもぉ、見放すことなくぅ、
ずっとぉずっとぉ、教会を守ってくれていましたよねぇ」
「わかっていたなら、もっと早くに助祭に上げてやれ!」
今日はもうしないと思っていたけど、もう諦めた。
今日一番のゲンコツが闇の女神の頭に落ちた瞬間だった。
「え? 私が助祭にですか?」
「ああ、先ほど闇の女神様から啓司があった。
今まで、闇の女神教によく仕えてくれた。
その信仰が実を結んだ瞬間だな」
俺の部屋を訪ねて来た修道士長に助祭になれることを告げると、最初はポカンとして固まっていたが、少しずつ実感が湧いてきたのか体が震え、目からは一筋の涙が流れ落ちた。
「もう……諦めていました……。
私の信仰は闇の女神様には届かなかったのだと……。
それでも、信仰をやめることなんてできなくて……
あぁぁっ!」
最後まで話すことなく修道士長が崩れ落ちていた。俺は司祭ではあるものの、闇の女神への信仰がほぼないので修道士長の気持ちはあまりわからない。しかし、修道士長の努力が報われたと言うことだけはわかる。
俺は椅子から降りて修道士長の前に立つと、ハンカチを修道士長の目に当てて涙を拭いてやった。その後、修道士長の手に持たせてやる。
修道士長は受け取ったハンカチでまだ溢れてくる涙をぬぐい続けた。俺はそれをじっと待ってやる。
「ウィリアム司祭、本当にありがとうございます」
「いや、俺は何もしてないからな?」
闇の女神に提案している時点で何もしていないわけではないのだが、実質助祭を任命するのは闇の女神であるし、闇の女神が俺に助祭を増やす話をしてこなければ俺からそのことを言うことはなかった。
だから、礼など言われることはない。
「いえ、お礼を言わせてください。
今だからこそ修道士長なんて言う立場にいられる私ですが、
入信当初は本当に役立たずでした。
それでも自分の信仰を投げ出すことなんてできず、
他の人が助祭や司祭になっていくのを見ながら、
ただただ頑張ってました。
闇の女神教が廃れてきて、助祭や司祭になった仲間が
いなくなって、私だけが残って、それでも頑張ってたんです。
もうダメだって、無理だってずっと思ってました。
あなたが来なかったら、私は闇の女神教を見捨てて
いたかもしれなかったんです……」
いつも冷静な修道士長が嗚咽を漏らしながらここまで感情を垂れ流すとは思わなかった。
そして、俺の記憶にある修道士長はとてもつらいことを顔に出さなかった。強い人なのだとずっと思っていた。
しかし違った。本当にぎりぎりのところだったのだ。金の工面も苦労したことだろう。信徒からのクレームも多かっただろう。
頼れる相手もおらず、ずっとみんなの上に立って頑張ってきたのだ。
まだ立ち上がれず泣き続けている修道士長の頭をなでてやった。俺が頭をなでてやったことで更に嗚咽がひどいことになった気もするが、俺はそれでも続けた。
「ウィリアム司祭、恥ずかしいところをお見せしました。
今後、助祭として頑張らせていただきます。
ところで、私が助祭として正式に任命されるのは
いつになりますでしょう?」
立ち直った修道士長は、目のあたりが少し腫れていたもののそれ以外はいつもの調子だった。
「一週間後だ。
盛大に行うぞ」
俺は、闇の女神教は今までの修道士長の信仰に報わないといけない。
だからこそ、その任命式はできるだけ盛大に行わないといけないと思った。
ちゃんと闇の女神にも、しっかり言っておいた。
それから一週間の間、闇の女神教はとても忙しかった。
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また、同時に連載している「1から始めるダンジョンマスター」、そして初めて書いた短編「毒の魔女」の方もよろしくお願いいたします。




