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3章 16話 天才と天才3


「お前! あんなのにどうやって剣を当てろって言うんだ!」


あれから何度目になるだろうか、シモンが俺の部屋を訪ねて来た。昨日も文句を言いに来たのに飽きずにまたやってくるとは、相当暇人なんだろうと思う。


「おやおや、貴族様ともあろうものがそんな音を立ててドアを開けて。

 全くはしたない」


性懲りもなくやってきた貴族の子供に、わざと大人のとるような口調をするとシモンは感情が更に高ぶったようでドシンと大きな足音を立てて俺に近づいてくる。そして、俺の机に手を叩きつけるかのごとく右手を大きく掲げた。


「お待ちくださいシモン様。

 流石に、それは無礼にございます」


シモンを止めたのは、水の女神教の神殿騎士。

お守りとして水の女神教からやってきたやつだ。性格は割と大人しめで、シモンに振り回されている。


「そうです、シモン様」


そしてもう一人のお守り役である水の女神教の女性司祭。こちらも神殿騎士と同じく大人しめな人物だ。なぜこのような二人がお守りに選ばれてしまったのか、不憫に思う。


「だが、お前たちが二人がかりでも押し込むどころか

 全く相手にさえならなかったダークエルフだぞ!

 どうやって1本取れって言うのか!」


今回は水の女神教の二人がかりでニルダと戦わせたらしい。自分の力ではなく、他人に木剣を持たせてニルダを攻撃させたことには頭の回転の速さを感じるが、ニルダの実力を見誤るところがまだまだだ。

最初の方は自分で木剣を持って殴りかかっていたから、その頃に比べれば随分と賢くなったもんだと思う。


「そんな簡単に当てられるような人物を指定するわけないだろ。

 ニルダをなめすぎだお前ら」


俺はシモン達を見ずに書類仕事をしながら言う。

上手く行かなかった腹いせに文句を言いにきただけだから、まともに相手をする必要はないからだ。


「くっ……自分だって当てられないくせに」


俺にギリギリ聞こえるくらいの小さな声でつぶやく。

聞こえてることを示すため、それにはちゃんと返事をしてやる。

ついでに、大きくため息もついてやった。


「自分ができないことの理由に他人を持ち出すとは、

 落ちぶれたもんだな。王都一の天才が聞いて呆れるぞ。

 ああ、ちなみに俺はできるからな?」


ちょっと面白くなったので、鼻で笑って煽ってやった。


「じゃあやってみろよ! 目の前で!」


お茶が沸かせそうなほど顔を真っ赤にして、シモンが怒鳴る。


「ああいいぞ。

 ニルダ、ニルダはいるか!」


部屋の外に控えていたニルダを少し大きな声で呼ぶ。


「はい、なんでしょう。ウィリアム司祭」


「今から木剣で軽く殴るから避けるなよ」


「はい、わかりました」


「ああっ、ずるい!

 卑怯だぞ!」


「何が卑怯なんだ?

 他人の力を借りる方が卑怯なんじゃないのか。

 それも"二人も"」


「うぐぐ……」


「やめましょう、シモン様。

 口では間違ってもウィリアム司祭に敵いませんよ……」


「そうです、一度戻って作戦を立て直しましょう。

 私たちも一緒に考えますので」


ほぼ羽交い絞めのような状態でシモンが部屋の外に連れて行かれる。

俺からすれば毎回のことなのだが、ニルダはその光景を初めて見たからか呆然としていた。


「それにしても、良いんでしょうか?

 どんなことをしても当てられない自信があるのですが……」


「ん? そんなことないぞ。

 当てるだけなら、いくらでも方法はある。

 例えば、俺が買収されるとかな」


俺の言葉にニルダが驚いた。


「えっ。そんな方法……いいんですか?

 それに、ウィリアム司祭がそんな方法に応じるんですか?」


「時と場合に寄るけど、全くダメとは思わない。

 それくらい柔軟な考えしないとダメだってことだよ。

 ケースによるけど、もし俺が商人だったら通用するかもだろ?」


ニルダは口を大きく開けて納得の声を出していた。


「確かにそうですね。

 私も1つ勉強になりました」


にっこりと笑ったニルダに俺も微笑みかける。

部屋に軽く笑いが響いた。




シモンに当てられた部屋の中、テーブルを3人で囲んで話し合いが始まっていた。


「ん゛ーっ!

 全く当てられる気がしない!

 世界最強の剣士でも連れてこないとダメかな……」


神殿騎士と言えば、かなりの強さで有名である。その神殿騎士でも攻撃を当てられないのならば、もうかの有名な光の女神教の重装の騎士でも連れてこないとダメじゃないか……そこまで思い詰めていた。


「ウィリアム司祭は、ニルダ殿にお願いして当てようとしてましたよね。

 あれが良いのであれば、もっと他に搦め手があるのではないでしょうか」


「でもあれは、同じ宗教でかつ主従のような関係の

 ウィリアム司祭であるからできること。

 他に、それが叶う人物がいましょうか」


「確かにそれもそうだ。

 いや、困った」


騎士と司祭も一生懸命考えているのだが、なかなか良いアイデアが浮かばない。


「流石に脅してみるのは……悪手だろうなあ……」


「それをやったら我らの命はありませんよ……

 いくらい行き詰ったからと言って、変なことを

 考えないでください」


「冗談だって冗談!

 わかってるよ。ただ、アイデアの1つにでもならないかなと

 思ってだな……」


シモンが黙っている間に騎士と司祭の二人が会話を繰り広げているのだが、役立つような流れにはならない。


「脅しかあ……流石に僕もちょっと脅しはヤダなあ。

 いくらどんな手を使ってもって言っても」


「では、味方を増やすのはどうでしょう。

 あれほど癖の強いウィリアム司祭ですから、闇の女神教の中で

 今回のことくらいは味方になってくれる人が、いるのでは

 ないでしょうか」


「確かに……ウィリアム司祭に振り回されてそうな人と言えば、

 真面目な人かな?

 この教会で真面目な人と言えば……いた!

 あの人だ!」


「彼の人ならば、もしかすると我らの話を聞いてもらえるやも

 しれませんね」


「間違いありません。

 一応、お土産も持参しますか。普段のねぎらいと言って」


「なら……」


三人の話し合いはそこから活発化した。ダメな案も良い案も、全て上げられそこから練りに練って最良の案を作り出し、それを実行すべくある人の部屋に向かって行った。




数日後。


「ウィリアム司祭様、申し訳ありません。

 当てられてしまいました……」


ニルダが昼過ぎに報告に来た。しかしその顔は申し訳なさそうではなく、むしろ当てられたことに嬉々としている。

瞬間、わかった。


「そっか、買収してきたか」


なかなかにいい方法だと思う。


「で、何を対価に売ったんだ?」


「えっと、武器を……」


「武器?」


正直アイスとかの甘い物だと思っていたので、驚いた。


「はい、以前ウィリアム司祭が仰っていた、

 曲刀を条件に出しました。

 現物は今こちらに輸送してもらってる最中みたいです」


そう言えば忘れていた。

いつか購入しようと思っていたのに……しかし、俺が言っている曲刀は日本刀のことだ。ニルダが言っている曲刀は、本当の曲刀だろう。だから今度は忘れずにちゃんと依頼することにしよう、そう思った。

そして、ニルダに当てられたと言うことはシモンは合格だ。

何か勉強を教えないといけないな、何を教えよう……あいつ結構頭良いからな……教えてもすぐ別のこと聞かれそうだよな……。

そう思うと少し頭が痛くなった。


この小説を読んで、面白いと思っていただけた方、ブクマ,評価,感想,レビューをよろしくお願いします。

また、同時連載中の「1から始めるダンジョンマスター」の方もよろしくお願いいたします。

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