3章 15話 天才と天才2
すごい、なんて画期的な勉強法なんだろう。
初級の計算の授業なんでつまらない……そう思いながらも、仕方なく受けた授業だったけど、授業を受けてあまりの面白さに感動した。
この教えてもらった方法なら、誰だって簡単に計算を解くことができる。そう思ったから、先生の話を集中して聞いた。
けど、半刻もすればもう全部わかってしまって途端につまらない授業になった。
一緒に授業を受けている人たちは僕と同じくらいの年の子供だ。彼らにわかりやすく教えている授業なのだから、僕が全部理解してしまうのなんて当たり前のことだ。
僕は王都の学院の学問は全て納めた。同年代の子たちと一緒の授業なんてまともに受けてはいられないんだ。
1つ目の授業が終わって先生に質問した。それでもこの教え方を考え付いた先生なら、もしかして僕のまだ知らない知識を授けてくれるかも……そう思ってのことだったんだけど、残念ながらこの先生はそんなに賢くなかった。
「ええと……ごめんね。
私は初級の授業しか教えてないし、次の中級の授業なら
もっと学ぶことがあると思うわ」
先生はこそこそと逃げて行った。今までの先生と同じ行動だった。
僕が知りたいことは決して誰も教えてくれない。そして逃げ出してしまう。
なんだ、ここも一緒か。そう思ったけど、先生の言う中級の授業を受けてみることにした。
ここでも、予想を裏切られた。
中級の授業も、初等の授業と同じように教えられる側が理解しやすい工夫がされていた。
だから気持ちよく先生の話を聞くことができたのだけど、やっぱり半刻ほどでまた興味を失うことになってしまった。
中級の授業は受けてる生徒の年齢は僕よりいくつか上の人たち。それでも、僕よりいくつか上の年齢の人たちと比べても、僕はもっと高みにいる。
だから同じ授業を受けても僕は満足できない。それに、教え方や学び方はともかく内容はすでに知っているしね。
授業の後、中級の授業の先生にも質問した。
その先生は僕の質問に対し逃げるようなことはしなかったけど、やはり答えに困って初級の先生に誰かを呼びに行かせた。
しばらくしてやってきたのは、子供だった。僕より3~5歳くらい年下の男の子。かなり幼く見える。しかも、なぜか立派なローブを着てる。偉い人のローブを着て悪戯をしたから捕まったのかな。
そんな風に思ってると、
「お前がシモンか」
いきなりその子からお前呼ばわりされた。
僕は仮にも伯爵家の跡取りだ。この子がどんな身分の人間か知らないが、お前呼ばわりされたくはない。
「君は失礼だね。
年上をお前呼ばわりだなんて。
一体どういうしつけをされてきたのかな」
年下の子に対して怒るのは大人げないと思ったから、しかりつけるように言ってやった。
だけど言葉を聞いて、男の子を連れて来た初級の先生が笑った。
なぜ笑ったのかはわからないけど、男の子はため息をついていた。
「お前、何も知らないのか。
俺がウィリアム司祭だ。お前の受け入れ先だよ」
この子がウィリアム司祭?! あれ……そう言えば確か、子供の年齢で司祭になった者がいるって聞いたことがある。
それってこの子だったのか!
「あ……それはごめん……」
あまりにショックで、言葉遣いが変になってしまった。
「ま、いいよ。
で、お前の質問だけどさ。それ知ってどうしたいの?」
「僕の知識が高まるんだよ。
僕の頭がどんどんよくなるんだ」
「ふぅん。
で、その知識、どう役立てるの? 今後の人生に。
お前、何か具体的にやりたいことがあってその知識を
必要としてんの?」
その返しは初めてされた。言われて気づいたけど今まで考えたこともなかった。僕はこの知識を知ってどうしたいんだろう。
「ああなんだ、ただの知識欲か。
お前、思っていた以上にバカだな」
バカなんて初めて言われた。あ、でも勉強バカって言われたことはあったな。あれは悪口だとは思わなかったから流したけど、今回ばかりは納得いかない。正直ムっとする。
僕ははっきり言って天才だ。自分で言ってもいいくらい。
「君は知らないのかな。
僕は王都の学院で、学問を全て納めたんだよ。
その僕がバカだって? 撤回してくれる?」
少しイライラして言ったから、言葉尻が汚くなった気もする。
「だからバカだって言ってんだよ。
いいか、必要以上の学問を収めるのはただの道楽だ。
道楽で勉強したいなら、自分のなすべきことをしてから言え。
お前、欲しがってばかりで何の役にも立ってないだろ。
それどころか、勉強のことで親や国に迷惑かけてんじゃねえか」
言われて、ウッと詰まってしまった。確かに僕は、今は誰の役にも立っていない。それは将来役に立つつもりだったから。だけど、言われるがままなのはイヤだ。理知的ではなく、反射的に言い返してしまう。
「じ……じゃあ! 君にはわかるって言うのかい?
僕の質問の答えが!」
ウィリアム司祭は人のことを散々に言うけど、僕の質問に答えられないからこのようなことを言うのだと思った。
「ああ、知ってるぞ。
お前の質問も、その答えの先にあるものもな」
司祭は自信満々だった。これほど自身満々に言い返してきた人間を僕は知らない。あの学院長でさえこんな言い方はしなかった。だから、もしかしてこいつは本当に知っているのかもしれない。と思った。
「じゃあ教えてよ。教えてくれたら、僕は今後君を敬うよ」
わざと挑発するように言ったが、相手は取り合ってくれなかった。
「それじゃあつまらないな。
俺からの問題を解けたら、いつでも教えてやるよ」
「ウィリアム司祭、あんなこと言って良いんですか?
あの子、本気でやろうとしてますよ」
さっきのやりとりを聞いてリネットが心配してくる。
なお、俺のことを心配してるわけじゃない。シモンのことを心配しているのだ。
なぜなら俺が出したお題は、頭の良いお前が考えうる最良の方法を使って、ニルダに木剣を1回でも当てるにはどうしたらいいか、だ。
どうせ不意打ちとか罠とかそういうくだらないことを考えるに違いない。
思いついたら実戦してみろ。と言ってやった。ニルダに木剣を当てることができたら、正解だ。と。
後でニルダにも伝えるし、当分解くことはできないだろう。
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