1章 17話 幼児期13
15話,16話,17話と3話合わせて少し変な書き方をしてみたつもりです。
そうでもないかな?
俺は目的のダークエルフを見つけられたことに内心喜んでいた。それを表情に出すようなことはしない。しかし、その目的のダークエルフは俺を怒りのこもった目で見つめ、そして矢の先を俺から離さない。一筋縄でいくような相手ではなさそうに見えた。
冒険者が今も体を張って守ってくれているが、あのダークエルフにしてみればそれも意味があるのかもわからない。それほどの腕があると思えた。
「どこの女神を信奉している教会だ!」
ダークエルフは弓を更に引き絞っている。後は矢を持った指を離すだけと言う状態だ。
「闇の女神です!」
リネットが俺を覆うように抱き込み、そしてダークエルフを強く見つめていた。
「嘘をつけ! 私は知っているぞ。
闇の女神教の司祭,助祭はもう10年以上不在のはずだ。」
俺たちが闇の女神の教会であると言うことを信じられないようだ。
外界から閉ざされた状態で今まで生きてきたのであれば、仕方ないのかもしれない。
俺が助祭になったと言う話が広まったのも今年からだ。
「この方を見ればわかるでしょう!
今年新しく助祭になられたんです」
リネットとダークエルフの叫ぶような話し合いは続く。あまりの剣幕に俺の出る幕もなかった。
リネットの俺を抱きしめる腕が強くなり少し苦しい。
途中からは言い合うような形になり、リネットに正論を言われ続けるとダークエルフの声にだんだん力がなくなっていった。
「なぜ……なぜ今になって……
闇の女神は……なぜもっと早くに……!!」
ダークエルフは歯ぎしりの音がこちらに聞こえそうな程歯を噛みしめて苦しそうな顔をしており、その目からは今にも涙がこぼれそうだった。
「あの、良ければ事情を教えて頂けませんか。
私たちはダークエルフの方々がなぜ急に里から
いなくなってしまったのかさえ知らないのです」
「知らないだとっ?!
貴様ら……貴様らがそんなだから我々は……」
先ほどまでの泣きそうな顔はどこへ行ったのかと言うほど、今度は怒りを露わにしてくる。
泣きそうになったり、怒ったり、忙しいやつだと思う。
「撃て」
「へっ?!」
俺の発した言葉に対し、誰もが驚いていた。
ダークエルフの方を向いていたリネットは俺の方を向き直ったほどだ。
当のダークエルフは、目を大きく見開いている。
「撃ちたいんだろ。
さっきからずっと矢を向けている」
「ち……違っ……」
「撃てば楽になる。
ずっとそう思ってたんじゃないのか」
「そんなつもりじゃ……」
「ちょっとウィル君!
何言い出してるの!
ダメに決まってるでしょ!」
「(いいから)」
怒るリネットを咎める。あのダークエルフが本当に闇の教会に恨みを抱いているのであれば、とっくに俺たちは死んでいただろう。だが、彼女はずっと……特に俺がヒールを使ってからは、怒りの目をしていてもとても俺たちを殺そうとはしていないように見えた。
「闇の女神の奇跡を受け入れよ。
今ならまだ間に合う。」
俺の発した言葉を聞いて、ダークエルフは目を見開いたまま涙を流していた。
「助けて……お願い……
もうダメなの……」
ダークエルフは泣き崩れた。
なお、先ほどダークエルフに言った言葉は教会の司祭のメモ帳に書いてあった困った時に言う言葉集の1つだった。