【2-17】武道大会タッグ登録
アルトリウスの町は、今日も活気に満ちていた。
石畳の通りには露店が並び、行き交う人々の笑い声が空へと弾けている。その中心、ギルド本部兼武道大会の受付棟は、一際大きく、まるで城塞のようにそびえていた。
「うわー……本当に来ちゃいましたね。なんか緊張してきたっス……」
訓練着を少し改まった外出用の軽装に着替えたタクヤが、緊張気味に頭を掻く。
隣を歩くミアリスは、いつもの気品をまといながらも、どこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「ふふ、大丈夫よ。緊張してるの、私も同じだから。でも……」
彼女は少し足を止め、正面を見据えた。
「レン様が、タクヤさんと私の実力を信じて、あえて“二人だけで出てみろ”って言ってくれたんですもの。応えなきゃ、嘘になります」
「ミアリスさん……うっ、なんか心が熱くなってきたっス!」
「でも、気を抜いたら置いていきますからね?」
「うひゃー、さすがお嬢。スパルタっスね!」
そんな他愛のないやり取りを交わしながら、二人は受付棟の扉をくぐった。
中は熱気に包まれていた。予選にエントリーする冒険者たちが並び、それぞれのグループがにぎやかに談笑している。もちろん、基本は四人組。二人で来ている者など、他に誰もいない。
「んだぁ? 二人でエントリーぃ? お前ら、見学と間違えてんじゃねーの?」
筋骨隆々とした男が嘲るように言ってきたが、タクヤはにこやかに笑った。
「いえいえ、俺ら本気で出るっスよ! ……あ、でも俺は見た目以上に打たれ強いんで、そこんとこよろしくっス!」
その軽口に男は一瞬キョトンとしたが、すぐに鼻で笑って去っていった。
ミアリスは苦笑しながらも、受付の女性に歩み寄る。
「インディ・ミアリスと、タクヤでチーム登録をお願いします」
「はい、確認しますね……あ、インディ様ですね。お噂はかねがね。タクヤさんも……えっと、あら、推薦者が……“レン”様?」
受付の女性が驚いたように目を見開く。
「はい。“例のレン”さんですっス」
「……では、お二人のエントリー、確かに承りました。チーム名は?」
「“銀の剣”で」
ミアリスの声は、迷いなく凛としていた。
レンがかつて提案した仮のチーム名だったが、今は彼女にとって意味のある言葉になっていた。
「登録完了です。予選の詳細は追って通達されます。ご健闘を!」
「ありがとうございます」
二人が受付を終えると、外の広場から太鼓のような音が響いてきた。町中で武道大会の開始を知らせる合図だ。
「さぁ……始まりますね」
「ですね……いやー、ワクワクしてきたっス!」
陽射しの下、二人はまっすぐに歩き出す。
誰もが四人で組む中、たった二人で挑む異例の参加者――しかしその実力は、既に本戦出場者に迫っている。
インディ家の誇りを背負い、そして仲間の信頼に応えるために。
“銀の剣”の挑戦が、いま幕を開ける――。




