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【2-16】ミアリスの実力テスト、そして…

インディ家の訓練場は、まるで戦闘の聖域のような空気を纏っていた。


 地面は魔法で強化されており、どれだけ激しく戦っても傷一つつかない。武器や魔法を使っての模擬戦にも耐えられるこの空間は、貴族や一部の上位冒険者しか使えない高級な訓練設備だ。


訓練場に入った瞬間、俺は思わず目を見張った。


「……ミアリス?」


 そこにいたのは、これまでの控えめな戦士の姿とはまるで違っていた。

 タイトなバトルスーツに身を包み、腰には銀色の細剣。以前よりもずっと精悍な雰囲気を纏っていた。


「中位クラス、昇格ちゃんとできたんだな」


 そう問いかけると、ミアリスは少し照れくさそうに微笑んだ。


「はい。レベルが30になったので……。それで、“ソードマン”になりました」


「ソードマン……か。ナイトじゃないんだな?」


 これまでの仲間――タクヤもランデスも、そして俺も、戦士からの昇格は全員ナイトを選んできた。防御や支援に優れる、いわば堅実なルートだ。


「守るのも大事ですけど、私は……前に出て、斬る力が欲しかったんです。誰かの後ろに隠れるんじゃなくて、自分の剣で何かを変えたいって、そう思ったから」


 まっすぐな言葉だった。

 ナイトよりも攻撃に特化した職業――ソードマン。それは前に出る覚悟がなければ選べない。


「なるほどな。じゃあ、それだけの覚悟……ちゃんと確かめさせてもらうよ」


「はいっ! 全力でお願いします、レンさん!」


「準備はいいわね? 本気でいくから」


 ミアリスが言うと、ソードマンらしい軽装のバトルスーツに身を包み、銀色の細剣を構えた。装備しているのは模擬剣だが、その気迫は本物だった。


「うわ~……やっぱり似合うな~! これだけで見惚れちゃうよ」


 ランデスが軽口を叩くが、タクヤがすぐに制した。


「黙れ。集中の邪魔だ」


「相手は誰にする? 俺がやろうか?」


「いや、ここは俺がやる。……ちょうどミアリスのこと、少しだけ気になってたからな」


「後、ナイトのスキルもパーティーの動きを考えるにあたって試したかったしな」


 俺は腰の剣に手をかけた。もちろん殺傷能力のない模擬剣だが、ミアリスの成長を確かめるには、真剣勝負が一番だ。


「じゃあ、始めましょうか。模擬戦、開始!」


 アンドレアムの合図と同時に、ミアリスは地を蹴った。


 ――早い。


 反射的に剣を構える。金属がぶつかる音とともに、俺の腕に重みが走った。


 ミアリスの攻撃は鋭く、そして重い。以前のような迷いや焦りがなく、明確な「意志」が一太刀に込められている。


「っ、レンさん、前よりずっと強くなってます!」


「こっちの台詞だよ!」


 俺は下がりながらパリィの構えを取り、カウンター気味に斬撃を振るう。それをミアリスはインサイドラッシュの機動で切り返し、空中で回転して着地した。


「ちょ、ちょっと! すごくない!? ミアリスちゃん、今の完全にスキル使ってる動きだよね!?」


 ナメタが驚愕の声を上げる。


「いや……マジで成長してるな。あれだけのスピードと精度、並のソードマンじゃ出せねえ」


 タクヤの表情にも驚きが浮かんでいた。


「見違えたな、ミアリス。ほんとに、戦いたかったんだな」


「うん……ずっと皆みたいに、誰かを守れるようになりたかったから」


 その目に宿る決意は、もはや誰かに庇われる側のものではなかった。


「よし……最後までやろう。次の一撃で、勝負だ」


「はいっ!」


 ミアリスの足元に風が集い、わずかに魔力の気配が立ち上る。――スキルの予兆だ。《インサイドラッシュ》を基点とした連撃か、それとも……。


「来るぞ!」


 俺は剣を構え直す。――そして、ほんの一瞬、思考を解放した。


 ユニークスキル:多数脳(マルチプル・ブレイン)


 空気が変わる。


 視界が拡がり、ミアリスの呼吸、重心の揺れ、剣筋の初動、すべてが“手に取るように”わかる。


(――右足が前に。次は縦の突き、その次に左斜めから……)


 俺の身体は、考えるより先に動いていた。


 ガッ!


 激しい斬撃が交錯し――ミアリスの剣が空を切る。


 そして、俺の剣が彼女の肩口にピタリと突きつけられていた。


「……っ!?」


 ミアリスの動きが完全に止まり、目を見開いた。


「俺の勝ちだな」


「……はいっ」


 彼女はわずかに悔しそうに、でもどこか嬉しげに、汗をぬぐって微笑んだ。


「今の……何が起きたんだ……?」


 ナメタがぽつりと呟く。


「いや……わからない。レンさん、今、一瞬……」


 タクヤが言葉を濁す。


 ランデスがぼそりと呟いた。


「一瞬だけ……“未来”を見たみたいな動きだった」


 俺は軽く笑ってごまかした。今のはほんの一瞬、《マルチプル・ブレイン》を使っただけ。俺の脳のひとつが、戦局全体を把握し、もうひとつが動作予測を、もうひとつが完璧なタイミングでの動作指示を送ってくれただけだ。


 本番ならともかく、今はこれくらいでちょうどいい。


「お嬢、よくやった!」


「これは本選が楽しみになってきましたね!」


 アンドレアムとトーマスも拍手を送る。


「タクヤ、予定通り二人でミアリスと武道大会に出な」


「結局二人なんすね...わかりました。ミアリスさん足引っ張らないように頑張ります...」


俺の意図はランデスとナメタにはきっと伝わっているかもれないが、二人で出す理由として平たく言えば、切磋琢磨頑張ってほしいのだ。


「いや~さすがに4人1グループが基本なのに鬼畜じゃない~?」


「いや、ランデス俺は大丈夫だろ、ミアリスのポテンシャルとタクヤのポテンシャルがあればここからまたみっちりやれば俺らには絶対勝てないが、いいとこまで行ける可能性あるぞ」


「本当ですか!?」


ナメタに好意を寄せているミアリスは褒められた事が嬉しいのか、目を輝かせながら少し照れていた。


「本当だよ...この数日でここまで強くなれるなら、今後俺らのパーティーにいれても遜色ないかもしれないな」

「だけど、タクヤ、お前はもう少し頑張れよ逆にミアリスに教わる事の方が後半は多かったんじゃないか?」


「仰る通りっす...精進します...」


こうしてミアリスの実力テストが終わったのであった。

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